あいさつの話
校門のところで、児童を「おはようございます」で迎えています。私にとっては、全員の様子を見られる絶好のチャンス。毎日の楽しみとなっています。
私が「おはようございます」というと、「おはようございます」と返してくれる児童もいれば、何も言わずにさささと急いで学校に入ってしまう児童もいます。中には、私よりも先に、しかも見事な姿勢で「おはようございます」と言ってくれる児童もいます。
今日の全校集会では、「あいさつって大事だよ」ということを、私の経験から伝えました。
その経験というのは、外国での話です。大学生の時、初めて一人で飛行機に乗り、1年間の留学のために中国に行きました。1990年のことですので当然インターネットもSNSなく、現地に一人も知り合いがいない状態で到着しました。そこから、友達や生活を助けてくれる人のネットワークと作っていかなければなりません。でも中国語はほとんど話せません。
そこで、私のとった作戦は、とにかく周りの人に元気に挨拶をし続ける、ということでした。すると、人は少しずつ心を開いてくれるようになり、いざというときに助けてもらうこともできました。一人で未知の場所で生活を切り拓く時には、いかに現地の人に協力してもらえるかということが大事ですが、その第一歩として、普段から挨拶をしておく、というのは大変有効な手段だということを、身をもって理解しました。
その後の人生でも、留学や仕事のために、いろいろなところで生活しました。毎回、ひとりぼっちで始まります。日本語も英語も通じないところでは、現地語でのあいさつを駆使して、仲間を作っていきました。それは決して優雅なものではなく、毎回「藁をもすがる」ような思いでのコミュニケーションです。
翻って、自分の言葉が通じる場所、当たり前のように家族がいて、友達がいて、先生がいて、必要な時に必ず誰かが助けてくれるような環境にいると、私たちは、つい、コミュニケーションを甘えてしまうことがあります。そして、あいさつを疎かにしてしまいます。
どんな外国語を勉強する時もあいさつの言葉から始めるように、人と人を繋ぐコミュニケーションの基本はあいさつです。あなたと繋がりたい、あなたに心を開きたい、あなたを大切に思っているというちょっとした意思表明をこんなに簡単にできる方法は他にはありません。お互いの姿を認めて少し言葉を交わすことは、単純に嬉しくて、意味のあることだと思います。
・・・というようなことを、子どもたちに話しました。みんなはどう受け止めてくれたでしょうか。とにかく、私はこれからも子どもたちに挨拶を続けます。
校長 堀江未来