【開催報告】5月16日(土)立命館土曜講座
「台湾人を『日本人らしく』する『国語』 ─戦前の皇民化文学から 21世紀の百合小説へ─」
講師:愛知県立大学外国語学部 准教授 張 文菁
会場には47名、オンラインでは延べ78名が参加しました。
2026年5月16日の土曜講座では、張文菁准教授を講師に迎え、「台湾人を『日本人らしく』する『国語』 ─戦前の皇民化文学から 21世紀の百合小説へ─」をテーマにご講演いただきました。
■ 台湾の歴史的背景とアイデンティティの形成
講演ではまず、台湾に対する近年の関心の高まりや、日本における台湾イメージについて言及がありました。そのうえで、台湾社会におけるアイデンティティの多様性が取り上げられ、「台湾人」「台湾人かつ中国人」「中国人」といった複数の自己認識が併存している現状が説明されました。
こうした状況の背景には、オランダ・清朝・日本などによる統治を経て、戦後は中華民国の支配に至るという複雑な歴史的経緯があるが、特に日本統治期には、日本語教育の普及やインフラ整備などの近代化が進められた一方、植民地支配に伴う文化的・政治的統制が行われ、台湾人の自己認識に大きな影響を与えたことが示されました。
■ 文学作品による植民地経験の再考
続いて、日本統治期の台湾文学および現代台湾文学が取り上げられ、文学作品を通じてアイデンティティの葛藤や植民地経験がどのように表現されてきたかが解説されました。
当時の作品では、日本人になることをめぐる葛藤や、「血統」「文化」といった観点による自己認識の揺らぎが描かれており、また、植民地支配のもとで被支配者が支配者の価値観を内面化する現象について、文化的ヘゲモニーの概念を用いて説明がなされました。
さらに現代作品では、植民地期の記憶が再解釈され、日本人と台湾人の関係性や「善意」に潜む非対称性が描かれている点について、講演では、こうした文学的表現を通して、台湾の歴史の複雑性と現代における台湾アイデンティティの多層性について理解を深める必要性が示されました。
参加者からは、
「台湾に生きる人々の心のありようについて文学の視点から考えるということをしてこなかったのでとても勉強になりました。」「台湾の日本統治時代の皇民化文学はとても興味深いと思いました。」
といった声が寄せられました。