【研究紹介】中国市場における日本食受容の変化(産業社会学部 賈斌特任助教)
中国市場における日本食受容の変化
― 食の安全性と消費者意識の視点から ―
中国で人気を集めてきた日本食。その評価はいま、変化しているのでしょうか。
産業社会学部の賈 斌特任助教は、農林経済分野を基盤に、日本食の海外展開や消費者行動に関する研究に取り組んでいます。本研究では、中国市場における日本食の受容の変化に着目し、その背景にある消費者意識の構造を明らかにすることを目指しています。
和食は国際的に高い評価を得ており、中国市場においても「高品質・安全・健康的」というイメージを背景に広く支持されてきました。しかし現在、その受け止め方には変化の兆しが見られます。では、こうした日本食の受容は現在どのように変化しているのでしょうか。
変化する中国市場と日本食のイメージ
近年、和食は国際的な評価の高まりとともに、中国でも「高品質・安全・健康的」といったイメージを背景に広く受け入れられてきました。日本食は都市部を中心に浸透し、人々の食生活の中で一定の存在感を持つようになっています。
しかし現在、中国市場ではその受け止め方に変化が見られます。その背景には、主に次のような要因があります。
・ 国際情勢の影響
東日本大震災後の輸入規制や国際関係の影響により、日本食品の安全性に対する認識が変化し、消費行動にも影響を及ぼしています。
・ 食に対する価値観の変化
「プレクック食品(加工済み食品)」への警戒感の高まりなど、食の加工度や調理方法に対する意識の変化が、日本食の受容にも影響を与えている可能性があります。
これまでの研究は訪日経験など比較的変化の少ない要因に着目してきましたが、こうした社会の変化が日本食の受容に与える影響は十分に検討されてきませんでした。
購買意欲を決める要因を探る
本研究は、中国の消費者が日本食をどのように受け入れているのか、その背景にある仕組みを明らかにすることを目的としています。
特に、次の3つの要因に注目しています。
・日本との接触(旅行や文化体験)
・食習慣や加工食品に対する考え方
・食品の安全性に対する認識
これらがどのように関連し、「日本食を買いたい」という気持ちに影響するのかを、アンケート調査と統計分析(構造方程式モデリング)を用いて、要因間の関係性を定量的に検証します。
調査は日本食文化が浸透している上海市で実施し、現地在住者500人を対象にデータを収集します。
見えない“受容の構造”を解き明かす
本研究の特徴は、日本食の受容を単なる好みではなく、複雑な心理のつながりとし
て捉える点にあります。
例えば、
・日本との接触(旅行や文化体験)
・食習慣や加工食品に対する考え方
・食品の安全性に対する認識
といった関係を、相互に影響し合う構造として分析します。
また、「プレクック食品(調理済み食品)」を避けようとする動きといった、最近の社会の変化も分析に取り入れています。こうした変化を踏まえ、日本食の受け止め方を、これまでよりも現実に近い形で捉えようとしています。
さらに、日本からの発信だけでなく、中国の人々の考え方や行動に注目することで、日本食がどのように受け入れられているのかを内側から理解しようとしています。
この研究は、変化する中国市場の実態をより深く理解することにつながるとともに、日本食を海外に広げていくためのヒントを提供します。さらに、食の安全性に対する信頼がどのように形成されるのかを明らかにすることで、国境を越えた食文化の交流や、持続的なビジネス展開の基盤づくりにも貢献することが期待されます。
研究テーマ(財団助成)
本研究は、江頭ホスピタリティ事業振興財団の助成を受けて実施されています。
研究テーマ: 「中国市場における日本食受容の動態的解明―食の安全性とプレクッ
ク意識に着目して」
賈 斌 JIA BIN
産業社会学部 現代社会学科 特任助教
専門分野
農村社会学、法社会学