【研究紹介】子どもたちとつくる地域の安全・安心
子どもたちの目で地域の安全・安心を見つめる
― 20年の歴史を持つ「地域の安全安心マップコンテスト」の新たな挑戦 ―
近年、自然災害の頻発や交通事故、不審者による声かけ事案など、子どもたちを取り巻く安全上の課題は多様化しています。こうしたリスクから身を守るためには、大人が対策を講じるだけでなく、子どもたち自身が地域の危険や安全について考え、主体的に行動できる力を育むことが重要です。
「地域の安全安心マップコンテスト実行委員会(歴史都防災研究所)」は、立命館大学文学部の花岡和聖教授・村中亮夫教授・寺床幸雄准教授を中心としたグループです。子どもたちが地域を実際に歩き、調べた内容を地図にまとめる「安全安心マップづくり」を通じて、防災・防犯・交通安全に関する学びを深める活動を続けています。2007年に始まった本活動は、約20年にわたり全国の子どもたちと地域をつなぎ、安全安心について考える機会を提供してきました。
地域を歩き、地域から学ぶ
安全安心マップづくりでは、子どもたちが自宅や学校周辺を実際に歩きながら、災害や犯罪、交通事故につながる危険な場所や、地域を守るための防災・防犯の取り組みを調査します。その成果を地図としてまとめることで、「どこが危険か」を知るだけでなく、「地域ではどのような安全対策が行われているのか」を理解することができます。
花岡教授らは、単に危険箇所を指摘するだけではなく、防災設備や避難場所、地域住民による見守り活動など、安全安心を支える仕組みも地図上で可視化することを重視しています。こうした取り組みを通じて、子どもたちが地域の安全安心活動に関心を持ち、自ら参加するきっかけを生み出すことを目指しています。
地域を歩き、地域から学ぶ
これまでの活動を通じて蓄積された知見を活かし、実行委員会では新たに小学生向けの安全安心マップづくり教材の作成に取り組みます。教材は「防災編」と「防犯・交通安全編」に分けて制作され、まち探検の方法や地域の見方、地図へのまとめ方などをわかりやすく紹介する内容となる予定です。さらに、過去の優秀作品を掲載し、誰でも取り組みやすいよう地図テンプレートや記号シールなども用意します。
今後は、この教材を活用した出前授業を小学校や児童館、地域団体と連携して実施し、安全安心マップづくりの輪をさらに広げていく予定です。京都市内だけでなく市外での活動も計画されており、より多くの子どもたちが地域の安全安心について学び、考える機会となることが期待されています。
地域への愛着と主体性を育む
安全安心マップづくりの特徴は、危険を発見するだけでなく、地域の良い点や地域住民による安全への取り組みにも目を向ける点にあります。地域を歩きながら調査し、仲間と協力して地図を作る経験は、子どもたちが自分たちの暮らす地域への理解を深め、信頼や愛着を育む機会にもなります。
花岡教授らは、こうした活動を通じて、参加した子どもたちが「町の安全安心をより良くするために何ができるか」を考え、学校や地域で安全安心の推進役となることを期待しています。将来的には、一人ひとりの学びが地域全体で安全を大切にする意識や取り組みの広がりにつながることが期待されています。
20年の歩みを次の世代へ
2007年に始まった「地域の安全安心マップコンテスト」は、子どもたちの視点から安全・安心なまちづくりを考える全国的な取り組みとして発展してきました。子どもたちによるマップ制作だけでなく、毎年開催される作品審査や表彰式を通じて、学びの成果を発表し共有する機会を提供し、参加者同士が学び合う場にもなっています。入賞作品は全国の優れた実践事例として紹介され、各地域での安全安心活動のさらなる発展にもつながっています。
今回の「子どもの安全安心の輪を広げるマップづくりの教材作成と出前授業の開催」は、これまでの活動で培われた成果や経験を次世代へ継承し、さらに多くの地域へ広げていくための新たな挑戦です。こうした活動の意義や実現可能性が評価され、公益財団法人セコム科学技術振興財団の令和6年学術集会および科学技術振興事業助成に採択されました。また、公益財団法人JR西日本あんしん社会財団の2026年度活動助成にも採択されています。
また、「地域の安全安心マップコンテスト」では、本年度も全国の小学生を対象に作品募集を行う予定です。子どもたちが地域の安全・安心について主体的に考え、その成果を発信する場として、さらなる広がりが期待されています。
関連情報
みんなでつくる 地域の安全安心マップコンテスト | 立命館大学歴史都市防災研究所
立命館大学歴史都市防災研究所
学術集会および科学技術振興事業助成(令和6年度)|安全安心な科学技術の振興:セコム科学技術振興財団
公益財団法人 JR西日本あんしん社会財団