【研究紹介】京舞から読み解く日本文化の継承(デザイン・アート学部 岡田万里子教授)
京舞から読み解く日本文化の継承
― デザイン・アート学部 岡田万里子教授
京都・祇園で受け継がれてきた京舞井上流。その歴史は約200年に及びます。時代の変化とともに多くの芸能や文化が姿を変えるなか、なぜ京舞は今日まで継承されてきたのでしょうか。
立命館大学デザイン・アート学部の岡田万里子教授は、歌謡の稽古本や日記、人名録、番付、映像資料など膨大な歴史資料を読み解きながら、日本舞踊や芸能文化が受け継がれてきた仕組みを研究しています。
200年続く京舞の歴史を読み解く
岡田教授の専門は演劇学であり、近世から近代にかけての日本舞踊を中心に、能・狂言・歌舞伎・人形浄瑠璃との関係や、舞踊を育んだ芝居・花街文化を研究しています。なかでも京都・祇園で約200年にわたり受け継がれてきた「京舞井上流」を主要な研究対象としてきました。
岡田教授は、歌謡の稽古本や人名録、日記、番付、映像資料など多様な史料を調査し、京舞がどのような人々によって支えられ、どのような仕組みによって継承されてきたのかを探究してきました。芸能そのものだけでなく、それを支える人々や地域社会との関わりに着目することで、日本舞踊研究に新たな視点を提示しています。
研究で用いる歌謡集の一部。
岡田教授はこうした史料を読み解きながら、京舞を支えた芸能文化の実態を明らかにしている。
撮影:[岡田万里子]
研究によって、江戸時代の京都・大阪の芸能文化が非常に多彩なものであったことが明らかになりました。雅楽など今日にも伝わる宮中芸能が行われていたと考えられてきた御所周辺でも、曲馬や講談など庶民の芸能が行われていました。また、現在は京舞井上流の特色と考えられる能の影響を受けた舞が、大阪や名古屋で上演されていたことがわかっています。こうした研究成果から、井上流が、幅広い芸能文化を背景として成立したことが見えてきました。
また、芸妓や舞妓、京舞が今日のように「京都らしさ」や「日本文化」の象徴として認識されるようになった背景についても研究を進めています。現在では伝統文化として親しまれている京舞や花街文化も、社会の変化や人々の営みのなかで受け継がれ、その価値が共有されることで現在の姿へと至りました。岡田教授は歴史資料を読み解きながら、文化がどのように継承され、人々に認識されてきたのか、その過程にも光を当てています。
さらに近年は、身体表現の記録やデジタルアーカイブの構築、海外研究者との共同研究にも取り組むなど、研究の対象を広げています。京舞をはじめとする芸能文化の歴史をひもときながら、日本文化の継承を支えてきた仕組みや人々の営みを探究しています。
上野五月記念日本文化研究奨励賞
こうした研究成果が評価され、岡田教授は公益信託「上野五月記念日本文化研究奨励賞」を受賞しました。
同賞は、日本文化に関する優れた研究を奨励することを目的として設立された研究助成事業です。古典文献や歴史資料に基づく実証的な研究を重視しており、日本文化研究の発展に貢献する研究者を支援しています。
今回の受賞は、京舞井上流をはじめとする日本舞踊研究を通じて、日本文化が継承されてきた過程やその背景を実証的に明らかにしてきた研究成果が評価されたものです。
上野五月記念日本文化研究奨励賞の研究奨励金贈呈書 撮影:[岡田万里子]
岡田万里子教授コメント
上野五月日本文化研究奨励賞は、これまで資料に基づいた堅実な研究に授与されてきた賞で、その受賞者の末席に連ねていただきましたことを、心より光栄に存じております。歴代の受賞者の方々は、資料を丹念に読み、多角的な視点から分析を重ね、慎重に証拠を積み上げて議論を構築されてきました。その研究姿勢に学びながら、今後もこの賞に恥じぬよう、着実に研究を重ねて参りたいと存じます。
岡田 万里子(おかだ まりこ)
立命館大学デザイン・アート学部教授。専門は演劇学。近世から近代にかけての日本舞踊を中心に、能・狂言・歌舞伎・人形浄瑠璃との関係や、舞踊を育んだ芝居・花街文化について研究している。とりわけ京都・祇園で伝承される京舞井上流の研究で知られ、身体表現の歴史や文化継承の仕組みを実証的に解明し、著書『京舞井上流の誕生』により、第35回サントリー学芸賞、第46回河竹賞奨励賞、第9回林屋辰三郎藝能史研究奨励賞を受賞。近年はデジタルアーカイブの構築や国際共同研究にも取り組んでいる。
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Faculty | その感性を、世界に解き放つ。デザイン・アート学部、大学院デザイン・アート学研究科 | 立命館大学
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