先端総合学術研究科の小川さやか教授が、著書『チョンキンマンションのボスは知っている-アングラ経済の人類学』(春秋社、2019年7月)において、第8回河合隼雄学芸賞、第51回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。その栄誉を称え、2020年10月26日、朱雀キャンパスにて受賞報告会が行われました。河合隼雄学芸賞の受賞は本学初、大宅壮一ノンフィクション賞とのダブル受賞となりました。森島朋三理事長、松原洋子副学長が祝意を表すなか、仲谷善雄学長が激励の言葉とともに記念品を授与しました。
「本書では、チョンキンマンションを起点に、香港社会を生きるタンザニア人コミュニティを観察し、彼らの生き方や既存の制度に期待しない人たちがつくる独自のセーフティネットや信用システム、シェアリング経済などを描きました」と説明した小川教授。続けて、小川教授は「日本社会とは異なる価値観で成立しているシステムや人々のたくましい生き方が、とりわけコロナ禍以降、新しい社会のあり方を模索する人たちに示唆や可能性を与えるところが評価されたのではないか」と語りました。松原副学長は「ノンフィクションとしての面白さとともに、消費文化論、経済人類学の確かな理論に裏打ちされた深い洞察が、目利きの審査員にも伝わった」と称賛しました。
続く4名による座談会では、小川教授が「研究者自ら応募できる研究支援が充実している」と立命館大学の支援体制を評価しながら、幅広い若手研究者への支援について要望しました。さらにはコロナ禍以降の大学のあり方や小・中・高校との連携についても議論が及びました。「大学がもっと流動化し、誰もが好きな方法で学べたらいい」と小川教授。「大学は、一芸に秀でた生徒や学生がより面白く学べる枠組みを作る必要があります」と述べた仲谷学長に同意しつつ、森島理事長は小川教授の今後の活躍に期待を込めて「ぜひ従来の『大学の常識』に風穴を開けてください」と期待が述べられました。