Research Story 〜つながる研究、つなげる研究〜

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Story #2 細井浩一

企業、京都市と連携し、エリアワンセグの実験を開始。

地上デジタルテレビ、インターネットや携帯電話などのネットワーク、シネコンやカラオケボックスのような空間など、情報を送受信するためのメディアが複合的に発達してきました。それらのメディアを連携、活性化させていく切り札として注目度を増しているのが、テレビ放送用電波の空き部分(ホワイトスペース)を有効活用し、新たなサービスやシステムの制度化、ビジネス展開を促進する諸施策です。その社会的な適用可能性は、地域コミュニティや学校、家庭、交通網など限りなく広がっており、ハード関連マーケットだけでなく、新しく創出されるであろうサービス市場も含めて膨大な経済効果が期待されています。

私は、このホワイトスペースの利活用に重要な役割をはたすメディアとして、早くからエリア限定ワンセグ放送の可能性に着目していました。2007年ごろから実験的な取り組みを開始して、2010年には、京都市、(財)京都高度技術研究所(ASTEM)、(株)京都放送、リアライズ・モバイル・コミュニケーションズ(株)、ソフトバンクテレコム(株)と連携し、ワンセグを活用した大学キャンパスにおける情報配信モデルの実証実験をスタートさせました。出力0.1mWのワンセグ送信機を扱える実験放送局免許を取得し、半径20m程度の範囲に放送することを想定して実験環境を整えた上、2010年11月より立命館大学エリアワンセグ放送局「R-one.TV」を開局し、衣笠キャンパスの食堂内で学生向けのコンテンツ配信実験を実施しました。これは、国内の大学で初めて、本格的な放送番組をスケジュール送信したワンセグ放送実験でした。映像学部生の作品や制作番組を放送して正課活動を支援する他、サークル等の課外活動、大学からの告知や防災関連情報、京都市や京都放送が所蔵する映像コンテンツなども発信し、大学におけるエリアワンセグ利活用の可能性を探りました。この成果が認められ、2011年4月、総務省ホワイトスペース推進会議が決定した「ホワイトスペース特区」(全25案)に採択されたのです。

総務省「ホワイトスペース特区」に採択され、さらなる可能性を探る。

「ホワイトスペース特区」となったことで、さらに大きな送信出力量を確保し、放送範囲を大学周辺にまで拡大できるような免許申請が可能になりました。現在、衣笠キャンパス全域、および近隣地域に放送エリアを広げ、さらなる実証実験を進めていこうとしています。

実験においては、3つのテーマを検証します。一つ目は、大学での活用法です。とりわけ、中規模から多キャンパスを有する大規模な大学におけるさまざまなニーズを解決する新しい情報インフラとしての可能性を模索したいと考えています。複数のキャンパスへの同時配信や相互配信を想定した学生制作コンテンツ、大学事務局からの情報、地域の観光情報や防災情報といったコンテンツの制作を検討中です。二つ目は、次世代防災インフラとしての活用です。大学から地域への防災情報の発信はもとより、災害対応型自動販売機と連動した防災システム研究など、立命館大学のユニークな防災研究の成果と連動させた新しい「大学と地域連動型の防災情報システム」の構築を構想しています。三つ目は、観光情報配信の可能性です。世界遺産を数多く抱える観光地・京都にある大学として、大学のさまざまな研究・教育の成果を前提としつつ、行政と連動した観光情報配信システムを構築しようと考えています。また、緊急時には、これを外国人観光客にも対応した防災情報システムとして活用することも想定しています。こうしてさまざまな企業や行政と協力することで、近い将来、大学の学生や教職員だけでなく、地域の皆さんや観光客が活用できる新しいメディアに育てることを目指しています。

産学官を結ぶ「舞台」を整えることは、大学にしかできない役割。

私は、デジタルコンテンツ産業に関する理論的、実証的研究を行うとともに、現実社会に役立つことを重視し、コンテンツビジネスの創出やプロデュースにも関わってきました。人文社系研究領域の強みは、社会の多様で複雑な課題に総合的にコミットできる点にあります。産・学・官それぞれが持つ力、ニーズと特性を組み合わせて、単独の企業や行政だけでは対応しにくい問題を解決に導く「舞台」を整えることは、大学にしかできない役割だと任じています。

研究においては、まさに今、解決しなければならない社会の問題に挑むところに面白さがあります。社会との接点を意識し、それを自分の課題として実践的に研究していけば、きっと若い皆さんも、社会に貢献する喜びを味わえるに違いありません。

  • 官公庁・地方自治体・企業のみなさまへ

    各企業、国や自治体のニーズや特性に適した関わり方で社会の課題解決やビジネスにアプローチできるよう「舞台」を整えることができます。

  • 若手研究者のみなさまへ

    今、解決しなければならないホットな社会問題に挑むところに面白さがあります。社会との接点を意識し、それを自分の課題として実践的な研究を心がけましょう。


細井浩一

Koichi Hosoi

映像学部 教授

1987年 立命館大学大学院経営学研究科博士課程修了。博士(経営学)。1994年 立命館大学政策科学部助教授、1999年 University of Colorado at Boulder(USA)客員研究員、2001年 立命館大学政策科学部教授、2007年 同映像学部教授、現在に至る。日本経営学会、日本デジタルゲーム学会(会長)、サイエンス映像学会(理事)、日本シミュレーション&ゲーミング学会に所属。

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