今年5月にアメリカのコロラド大学で開催された国際会議IEEE Wireless Power Transfer Conference 2015 のStudent Hardware Demo Competition部門で、道関研究室の院生グループが無線給電によるドローンの浮上デモンストレーションで第1位(最優秀賞)を受賞しました。

 

Student Hardware Demo Competition部門とは、IEEEに論文を提出して審査を通った10組ほどのチームが、観衆の前でデモ機を実際に動かし最終審査を受けるという部門です。他のチームは、マイクロ波での電力伝送事例や近接における静電結合の無線電力伝送を用いた模型自動車などを出品していました。

私たちのデモ機は、無線給電によって電池なしで浮上するドローンです。一般的に無線給電には大きなコイルが必要となり、コイルの位置の制約や重量増加があるのでドローンのような小型軽量なものには向いていません。この問題を解決するため、コイルを使わずに「電波」を用いた給電手法を研究し、ドローンを浮上させることに成功しました。

 

ドローンの原型は1年くらいで完成し、さらに浮上に1年ほどかかりました。浮上のためには電力伝送効率の向上、本体の軽量化が必要になります。そのために、回転翼へアンテナを内蔵することを思いつき、最適な形状を考えました。具体的には、アンテナ付きプロペラ、整流回路、駆動モータを一体化して固定ギアのまわりを回転するプロペラ、モータ一体型のロータに取り組みました。いかに効率よく電力を送り、浮上できるかという実験の繰り返しや、ドローンの作成はすべて私たちの手作業で行うのでとても苦労しました。

国際会議のデモの準備は、リーダーの古越が中心となって山口君、社会人博士の西川さんや先生方と何度もミーティングを重ねながら進めました。特に発表直前は就職活動の時期と重なったので、メンバーだけでなく後輩たちが仕上げを補佐し、研究室が一体となって準備を行いました。

  

デモンストレーションではやはり言葉の壁があり、聞かれていることはだいたい理解できるのに説明が上手にできなくてもどかしい思いをしました。そんな中でも自分なりに伝えられたのはいい経験になりました。研究をしている者同士で分かり合える部分もあり、いろいろな国の人にアイデアや技術をすごいと言ってもらえたのは嬉しかったです。

研究には、過程そのものが「研究」で、結果が出ないという場合があります。でも僕たちの研究は「浮上したら成功」というはっきりと目に見える形です。成果が出ないとダメというのは厳しい部分もありますが、「できた」という達成感を味わえることはやりがいがありますね。今後も改良を続け、さらに高く長時間飛ばせるようにしていきたいです。