「みなさん、お変わりないですか？」とリスナーにむけて語りかけるのは、震災ラジオ番組「アメニモマケズ」を制作する川井菜摘さんだ。「アメニモマケズ」は、京都市のNPO放送局FM797京都三条ラジオカフェで月１回、放送中の15分番組。震災から4年が経過し、被災地では若者不足が心配されているなかで関西の学生と東北をつなげることを目的としている。元々はラジオ研究を行う産業社会学部坂田謙司教授のゼミ番組内のコーナーとして東日本大震災が起きた2011年に誕生した。4年目となる今年、コーナーを更に発展させるため、ゼミ生の川井さんや石原愛美さん、鐘ヶ江 涼さんら3人が自主ゼミ団体を結成し、独自の番組をスタートさせた。



番組開始にあたり、3人は今年8月に岩手県大船渡の夏祭りや盛町七夕祭りの運営ボランティアに参加した。「メディアでは報道されていない、復興していない現状を見ることができました。現地にいかなくてはいけないという想いや、リアルな情報を伝えたいという気持ちが強まりました」と川井さん。番組では被災地の情報だけでなく、被災地で活動する立命館大学のボランティア団体の学生をゲスト招き、ゲストと共に「関西でどんな取り組みができるのか」を考えている。


前年度からプレゼミとして4ヶ月間、ラジオ制作の基本を学んだものの、初めての収録では3人のテンションに差があったり、会話に間があったり散々なものだった。坂田教授からは「何が伝えたいのか分からない」と厳しい言葉も。「ゲストの話を膨らませたり、収録時間のコントロールをしたりと、番組を進めていく大変さを痛感しました」と石原さん。至らないところはプロの番組を聴いて参考にしてきたという。

11月、3人は学園祭で大船渡の秋刀魚を焼いて販売した。番組で販売を知ったリスナーが学園祭に駆けつけてくれた。「私たちの番組をわざわざ選んで聞いてくれる人は少ないかな、と思っていましたが、聞いてくれる人がいて、自分たちの活動の成果を実感することができました」と石原さん。リアルなリスナーを意識し、今のリスナーに興味を持ち続けてもらえるように、意義のある番組をつくっていかなければならないと気持ちが引き締まったという。


番組制作を通じて、口下手だった石原さんは人前で話すことにも躊躇することがなくなり、川井さんは相手の話を聞きだすことを日常生活でも意識できるようになったという。そんな二人はこれからの課題もしっかり認識している。「ラジオの魅力は温かみです。リスナーとの距離が近く、人の心とつながれるのはラジオなのかなと思います。言葉だけで何かを伝える表現の素晴らしさを日々感じています。ラジオを聴かない人々にもラジオの魅力をいかに伝えるかが私たちのこれからの課題です。」




【アメニモマケズ】

放送日：毎月第二土曜日18：10～18：25
放送局：FM　79.7
http://radiocafe.jp/20151003/
※3月までの限定放送。（2016年度は未定）