TBS「夢の扉+」出演記念企画 特別座談会 #3

未来を担う高校生・大学生へのメッセージ

西浦敬信 先生

渡辺
ここで若い人たち、特に高校生や大学生の皆さんにメッセージをお願いします。
久保
高校生といえば、先日、高校生の7割が理系進学志望という話を聞いて、びっくりしました。率直に嬉しいと思う反面、「自分は理系だ」と言ってあまり分野を絞りすぎずに、広い視野で勉強したほうがいいのではないかなと思いますね。
小西
賛成です。もっと申し上げれば、理系が社会の役に立つためには、文系の皆さんの力が必要です。私の分野でいえば、素晴らしい技術を開発しても、結局、文系の領域である法令やビジネスモデルなどの社会の仕組みをクリアしないとゴール(医療機器の製品化)には至りません。実は、それをスタートにしないと製品を設計してはいけないくらい重要なことです。文系も理系もどちらも持ちつ持たれつの関係で、お互いに理解して協力していくことが、本当に大事になってきていることを実感しています。
西浦
私たちも、文系学部のゼミとの共同研究の中で、文系の学生から想定していなかった技術の使い方やアイデアをもらったことがありました。文系と理系、相互に学び合い刺激し合えることは多いと思っています。若いうちに学部や領域の垣根を超えて積極的に交流することで、社会や技術が抱える問題が見えてくるのではないでしょうか。
久保
私たちの研究は、ビジネスや社会実装の段階に入ってきているのですが、そうなってくると、文系の営業経験のある方やビジネスプランを作ることに長けている方の存在が重要になってきます。理系にはそういう発想やスキルが足りない部分がありますが、これからは技術だけではない総合力のようなものが問われる時代になってくるのではないかと思います。高校生や学部生のうちは、垣根なく、いろんなものを見て、やりたいことや夢を模索することに時間を費やしてほしいと思っています。
研究者として描くこれからの「夢」
渡辺
今回「夢の扉+」にご出演の先生方にお集まりいただきましたが、最後に先生方のこれからの夢をお聞かせいただけますか?
西浦
音でストレスを感じない社会を創り上げていきたいですね。世の中で、音が原因で色んなトラブルが起こっていますが、音で解決できることも多くあると思います。音でストレスを感じない、音が原因でトラブルが起こらない世の中を作り出すことに、これからも挑戦していきます。
小西
小さい機械で大きなことをしたいですね。マクロな(大きな)効果を示していきたいですが、すごいことをするためには、ミクロ(小さい)についてきちんと理解しておかないといけない。二つの視点から生まれる大きいことをしたいですね。その一つが今取り組んでいるライフサイエンス、人体、生命になります。
久保
大それたことかもしれませんが、日本の食料システム、農業システムを変え、社会構造システム全体を化学から有機へ実質的に変えることで、社会に貢献することが夢ですね。個人的な夢は、世界の歯車を一瞬自分の手で動かしたいと思っています。自分の手でちょっとでも動かした実感を得ることが夢であり、最終ゴールですね(笑)。

座談会の様子(左から)西浦先生・小西先生・久保先生・渡辺副総長

「夢の扉+」撮影こぼれ話

西浦先生が開発した「極小領域オーディオスポット」。
片耳あたり3つのスピーカから別々の超音波を耳元を狙って放射することで、音声や音楽などの聞こえる音を耳元だけで再現することができる

小西
今回の番組は30分という限られた時間でしたが、プロセスを大事にしていただたことが非常にありがたかったですね。創り出す、生み出す過程のところを大事にしていただきました。撮影中「先生の夢ってなんですか?」という質問を何度も繰り返し尋ねられました。撮影中そういうことをじっくり考える時間が持てて、貴重な体験でした。
西浦
(放送が)終わった当時はものすごい数の電話やメールを企業や個人の方々からいだき、反響の大きさに驚きました。メールを返すのに1、2週間待っていただいた方もいました。こちらが想定している分野の方だけではなく、実に多方面の方々から連絡をいただいたことです。例えば「『カンカンカン』という電車の踏切の警報機の音をそのエリアだけに閉じ込められないか」「オーディオスポットを補聴器に応用できないか」といった声もいただいて、自分では想像もしていなかった新たな展開がありました。
久保
私はまだ収録が終わっていないので、実際の放送が不安であり楽しみです(笑)。撮影が台風の大雨で中止になったりもしましたが、撮影スタッフの皆さんが本気なのでこちらも自然と本気で取り組んでいます。撮影しているときに蚊がたくさんいたのですが、蚊に刺されながらも動じることなく撮影するカメラマンの姿を見て、「これぞプロ!」と感じました。今回取り上げていただいて、多くの人に知ってもらえるのは本当にありがたいことです。