石田 優子 授業担当講師(理工学研究科)

文化財を通じて色々な人と繋がることができる

石田 優子 授業担当講師
理工学研究科

1.文化遺産防災学に関わるきっかけ~現在に至るまで。

立命館大学大学院へ

大学卒業後、農学部で農業土木を専攻していた関係からゼネコンに入社し、土木の現場支援業務に携わっていました。結婚、出産、育児等のプライベートな出来事や、バブル崩壊等の社会的背景もあり、その後転職を経て、建設コンサルタント業務を主とした個人事業を展開するのですが、文化財とは縁がなく、様々な仕事を通じて地盤や防災に関する知識や技術、マネジメントのスキル等を少しずつ培っていました。

その頃、立命館大学では21世紀COEプログラムが採択され、文化遺産防災の研究が推進されており、そこで、幸いなことにある先生に声をかけていただき、客員研究員として受け入れていただくことになりました。また、どこかで一回しっかりと学び直したいと考えていたため、もう一度勉強できるのであればと思い、後期課程に入学しました。

「文化遺産防災学教育プログラム」を履修するきっかけ

「プロフェッショナルになる」というのが、子供の頃からの憧れでした。社会人から再び大学に戻って勉強するに当たって、いろんな不安もありましたが、まだ比較的新しく、参入者が少ない「文化遺産防災」という分野では、自分でもできることがあるかもしれないと考えていました。そんな折、文化遺産防災学教育プログラムがあることを知り、受講生を増やしたいと伺って、この分野での専門性を高めると共に、幅広い知識を身に付けるきっかけだと思い、受講することを決めました。

2.「文化遺産防災学教育プログラム」の受講

「文化遺産防災学教育プログラム」の取り組み状況

3年半の在学期間に、講義の受講と30時間の実習を計画的に行いました。レポートや論文は、博士論文の研究テーマが文化遺産防災であるので、そのままプログラムにも通じるものがあったのは良かったと思います。

「文化遺産防災学教育プログラム」の魅力と楽しかったこと

このプログラムの魅力の1つは、分野横断型であり、興味のある文系、理系の両方の科目を受講できることです。私の場合は、防災計画や政策を学んだことが、後に研究を考える上で思考に幅を持たせ、実用を考える面でも生かされました。実習では、歴史都市防災研究所で各国の文化遺産保護の専門家と防災の専門家をお呼びして2~3週間研修する『立命館大学ユネスコ・チェア「文化遺産と危機管理」国際研修』を聴講しました。そこで学んだ防災の手法や、各国の文化財保護の現状と受講者が立てた防災計画は、大変興味深く勉強になったと、今でも思います。ユネスコ・チェアプログラムを聴講することで英語を学習する機会も同時に得ることができました。そのため、海外に目を向けている積極的な学生にはユネスコ・チェアの聴講をおすすめします。

そして、学内者には費用がかからないことも魅力です。実習時間が30時間と比較的多くの時間が必要になりますが、文化遺産防災をテーマに研究している学生にとっては、自分の研究に、プログラムで学んだ多くの知識を生かすことができるのも大きな魅力だと思います。

3.現在のお仕事とプログラムのつながり

現在の研究でも文化財の景観保全を考えたり、文化財を取り巻く組織や人々、法律や政策を考慮したりする上で、プログラムで得た知識が役立っていると感じています。また、学ぶ側から教える側になり、非常勤講師として「文化遺産防災技術論」を担当させて頂いています。学生とともに学び直し、若い世代の意見を聴くことで、どう伝えていかなければならないか、ということを常に考えながら研究しています。

文化財というのはどの世界にもあり、私は授業の最初に学生たちに「行ったこと、見たことのある文化財はなんですか?」と聞きますが、全ての学生が何らかの文化財を見たことがあり、これから見たいと思う文化財があると答えます。文化財は、国や世代を超えて共通のテーマになり得るものであり、文化財を通じて色々な人と繋がることができると思います。

4.受講生へのメッセージ

学生には、社会に出るとなかなか時間が取れないので、是非在学中に受講することをお勧めしたいです。職業や専門が変わるなど、人生はどこでどう変わり、何につながるか分かりませんが、学んだことの全ては、無駄になることがありません。また、社会人には、防災の専門家に是非受講してもらいたいです。文化財を守る上でどうしても技術というものは必要になります。文化財保護の担当者が全ての技術を持っているわけではないため、火災は火災の専門家、耐震は建築の構造の専門家、私のように土砂災害であれば土砂災害の専門知識を有している人が必要になります。その時に、文化遺産を保存するために何をしてはいけないのか、何をすればよいのかという知識が必要です。適切な対策方法を取れるように、各技術の専門家が文化財に関する知識を持つことで、より良い防災対策が講じられるようになると考えています。

インタビュー担当および文責:法学研究科博士課程前期課程二回生 高倉寛人