我々の研究室を目指される方へ
生物有機化学研究室
たみあき ひとし
担当者 民秋 均
<研究分野>
生体機能を分子レベルで解明することを目標としています。現在のところ、主として光合成にターゲットを絞って、天然色素を生体から抽出単離し、これらを有機化学的に修飾することによって、より単純化されたモデル系を構築し、その構造と機能の解明を行っています。また、これらの結果をもとに
・生体系の解明
・新しい反応系の開発
・新素材の創出
などを目指しています。
上記のような研究のためには、有機合成の能力は勿論のこと、あらゆる機器を駆使しての構造解析や物性測定などの実験的手法と、コンピュータを用いたデータの解析や結果の予測などの理論的手法とに優れていることが要求されます。
<研究課題>
・光合成細菌の膜外アンテナ部のモデル合成
光合成の集光型アンテナ部位については、これまで、色素と蛋白との複合体によって構成されていると信じられていました。しかしながら、我々の研究によって緑色嫌気性光合成細菌の膜外アンテナ部(以下クロロゾームと呼ぶ)においては色素のみが自己集合してアンテナ色素を構成し、蛋白は超分子構造の形成において大きな役割を果たしていないことが明らかになりつつあります。そこで、新たに開発された生体系アンテナ色素分子のモデル化合物を用いた人工クロロゾームの構造とエネルギー移動過程の解明を行ない、さらに本モデル系と生体系とを比較することにより、生体系でのクロロゾームの超分子構造並びにエネルギー移動過程を検討しています。本研究が、現在当研究室のメインの研究テーマであり、国内外からその成果が期待されています。
2006年度光化学協会賞受賞も、その一つのあらわれです。
・大環状π電子系における新しい有機反応系の開発
ポルフィリンなどに代表される大環状π電子系化合物においては、ベンゼンなどに代表される芳香族系低分子化合物とは異なる反応性が見れます。これを利用して、多様な新しい有機反応系の開発を目指しています。
・新しいエネルギー・電子移動媒体の創出
色素分子の自己会合体が、優れたエネルギー移動媒体として機能していることは生体系で見い出されています。そこで、モデル化合物の自己会合体を様々な環境下で調製し、そのエネルギー・電子移動媒体としての能力を検討して、生体を越えるような機能の創出を目指しています。
・その他
新しい発想に基づく太陽光電池の開発、金属錯体を用いた生体分子の認識、生体分子の多様性から生命進化の探求、化合物ライブラリー構築を指向した(創薬研究も視野に入れた)コンビナトリアルケミストリー、糖鎖による生体情報伝達に関する研究、ゲノム情報に基づくタンパク質発現とその結晶構造と機能(酵素反応)解析など。
<研究の進め方>
卒研生も一人の研究者の卵として考え、院生の下働き的なことはさせず、一人一人独立のテーマをもって、現代的な有機合成のテクニックを修得しつつ、最新の機器を実際に使って世界最先端の研究をしてもらう予定です。また、英語と有機化学の基礎をしっかり勉強してもらいます。
現在、ドイツ・ウルツブルグ大/マックスプランク生物無機化学研, 米国・ロスウエルパーク癌研, 上海・有機化学研, 京大人環, 阪大理, 名大理・農,
宇都宮大工, 北大低温研, 京府大生命, 近大理工, 関大化生工, 龍谷大理工, 長浜バイオ大, 神奈川大理, 産総研つくば,
旭化成などと共同研究を進めています。他機関でも測定等の研究を随時行なってもらいます。
卒研生は、原則週休2日制で、夏季と冬季に休暇あり。平日の9時が卒業研究の開始時間です。
雑誌会・研究会を毎週各1回予定。適時レポート等を提出してもらいます。
学外から若手の優秀な研究者をお呼びしたセミナー(生物有機化学・草津セミナー)を適宜行ない、異分野も勉強してもらいます(井の中の蛙にならにないように!)。
卒研の研究室決定は君たちの人生にとって大変重要です。良く考えて、興味のある諸君は、是非、民秋ファミリー(2010年度は溝口准教授・山本助教・D3一人・D2一人・D1一人・M2三人・M1四人・四回生と博士研究員数人)の一員になって、(これまでの三年間に比べると)厳しいかもしれないが一年間(出来れば博士前期課程へ進学して三年間以上)『本当の研究』に触れてみて、楽しく頑張ってみませんか? 後悔はさせません! 我々の研究成果が、未知なる自然の解明や科学の発展にとどまらず、人類の直面しているエネルギー・食糧・環境問題の解決の一助になると確信しています。
<<研究成果等>>