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以下は、2007年度〜2011年度におこなっていた研究テーマです。もちろん、これからも継続しておこなっていきます。

 

2011年度 卒業論文・修士論文 研究テーマ

 

2011年度には、以下のような研究テーマで卒業論文、修士論文の作成をおこないました。

研究テーマ(1)【簡易ドライビングシミュレータを用いた左折事故防止対策に関する影響分析】

 交通安全対策の効果や道路案内標識の有効性を検討する道具として、ドライバーの運転行動を分析するためのドライビングシミュレータ(DS)が開発されています。本研究では、市販のゲーム用機器を用いた簡易DSを用いて、信号交差点における左折時の横断者巻込み事故の防止対策に関する影響分析をおこないました。具体的には、路面標示や隅切り形状の異なる仮想交差点を通行する車両の走行軌跡や走行速度を比較し、路面標示や交差点のコンパクト化による被験者の運転行動への影響を分析し、交通安全対策としての効果の検討をおこないました。また、これらの交通安全対策の検討に対する簡易DSの適用性についても検討をおこないました。

研究テーマ(2)【幹線道路横断時における自転車利用者の経路選択行動の分析】

 近年の自転車通行環境の整備においては、車道上に自転車専用通行帯を設置するケースも多く見受けられます。また、自転車道への一方通行規制の導入など、自転車の左側通行を促進する施策もおこなわれています。しかしながら、これらの施策を導入した場合に自転車が左側通行を遵守するためには、車道横断や迂回が発生することになり、適切な横断条件が確保されなければ導入が困難であると考えられます。本研究では、道路条件、交通条件に適した自転車通行環境の整備方法を検討するため、自転車にとって横断が可能な自動車交通量の限界値を見極めることを目的として、仮想的な幹線道路の横断状況を想定したアンケート調査にもとづき、非集計行動モデルを構築することによって自転車利用者の経路選択行動の分析をおこないました。

研究テーマ(3)【地震災害に対する文化遺産防災の社会的着目度に関する時系列的変化の分析】

 歴史都市の防災計画において文化遺産防災を明確に位置付けるためには、災害時においても文化遺産を守ることに対する市民のコンセンサスが重要になります。そのためには、文化遺産防災の必要性を客観的、定量的に示すことが必要であると考えられます。本研究では、地震災害に対する新聞報道を対象に、文化遺産の防災や被災に関する新聞報道の時系列的変化の分析をおこない、文化遺産防災に対する社会的な着目度についての考察をおこないました。これにより、地震発生後の時間的変化にともなう記事内容の変化の傾向を知ることができました。

研究テーマ(4)【鉄道端末交通としての利用を考慮した自転車利用の有効な距離帯に関する地域比較分析】

 近年、都市交通手段としての自転車が見直されてきており、環境負荷の低減のため、自動車から自転車への交通手段転換の促進が期待されています。一般に、都市内においては5km程度以内の距離帯であれば自転車の所要時間がもっとも短いとされており、自転車利用の促進が期待される距離帯であるとされています。しかしながら、これは大都市の都心部を想定した各交通手段のサービス水準にもとづいたものであり、地方都市や郊外地域においては各交通手段のサービス水準が異なることから、有効な距離帯は異なると思われます。また、現実の自転車交通が鉄道などの公共交通機関の端末交通として多く利用されていることを考えると、自転車を端末交通として利用する場合の有効な距離帯を算定し、公共交通機関との連携の促進を図ることも必要であると考えられます。本研究では、公共交通機関を含めた各交通手段のサービス水準が異なる滋賀県内の3地域を対象に、鉄道端末交通としての利用を考慮した、地方都市や郊外地域の実状に応じた自転車利用促進のための有効な距離帯の算定と比較をおこないました。

研究テーマ(5)【交差点流入部の二輪車による自動車の発進遅れに対する影響の分析】

 信号交差点において信号が赤から青に切り替わるときの自動車の発進遅れは、交差点流入部における二輪車や原付の滞留状況によって影響を受けます。本研究では、BKC周辺の複数の交差点において二輪車や原付の滞留状況と自動車の発進遅れの計測をおこない、二輪車や原付の滞留状況による自動車の発進遅れへの影響の分析をおこないました。また、交差点流入部の車線数による発進遅れへの影響の比較もおこないました。

研究テーマ(6)【国道1号・巨椋IC交差点における自動車走行挙動の分析と交通安全対策の検討】

 交通事故の多くは、交通事故多発地点と呼ばれる特定の地点で集中して発生しています。このような地点では、通行する歩行者、自転車、自動車の挙動分析をおこない、交通事故の発生要因の抽出とそれにもとづく適切な交通安全対策の検討をおこなう必要があります。本研究では、左折時事故・追突事故の多発交差点である国道1号・巨椋IC交差点(京都府久世郡久御山町)を対象として、交差点を通行する自動車の走行挙動分析をおこない、交通安全対策についての検討をおこないました。

研究テーマ(7)【南草津地区における地域住民の交通手段選択行動に基づくLRT導入の検討】

 近年、地球温暖化問題に対する関心が高まっていますが、現状では温室効果ガス排出量の多くを運輸・交通によるものが占めています。運輸・交通における温室効果ガス排出量を削減するためには、自動車交通に依存しないまちづくりが必要ですが、地方都市では多くの人が日常生活に自家用車を利用しており、郊外型ショッピングセンターの増加など、自動車交通を前提とした都市が形成されています。本研究では、大都市郊外の住宅地である滋賀県草津市南草津地区を対象に、地区内にLRTを導入することを想定した交通手段選択行動の分析をおこない、これにもとづいた鉄道端末交通としてのLRTの利用者数の推計と、LRTの収支分析をおこないました。

研究テーマ(8)【交通事故多発交差点における停止線位置の改良による交通安全対策の検討】

 交通事故の多くは、交通事故多発地点と呼ばれる特定の地点で集中して発生しています。このような地点では、通行する歩行者、自転車、自動車の挙動分析をおこない、交通事故の発生要因の抽出とそれにもとづく適切な交通安全対策の検討をおこなう必要があります。本研究では、鋭角交差点のため停止線間距離が長く、信号切り替わり時における無理な交差点進入が多い国道1号・国道小柿交差点(滋賀県栗東市)と、同様に鋭角交差点でありながら停止線間距離が短い国道307号・京田辺市役所東交差点(京都府京田辺市)を対象に、停止線位置の違いによる信号切り替わり時の自動車走行挙動の比較をおこない、交通安全対策についての検討をおこないました。

研究テーマ(9)【南田山交差点を対象としたシミュレーション分析に基づく交差点改良案の検討】

 滋賀県南部では市街地内を国道1号・国道8号・国道161号といった国土幹線道路が横断しているため、これらの幹線道路と交差する交差点では交通渋滞が多く発生しています。国道1号と県道43号が交差する南田山交差点(滋賀県草津市)もその1つで、交差点に起因する県道の交通渋滞とともに、交通渋滞を避けて周辺の住宅地内に進入する通過交通の発生が問題となっています。本研究では、南田山交差点を対象とした実測調査にもとづくシミュレーション分析をおこない、仮想的な交差点改良案の検討をおこないました。

研究テーマ(10)【道路勾配と交通容量を考慮した歴史都市における観光客の避難経路に関する検討】

 京都市のような多数の観光客が訪れる歴史都市、観光都市では、観光客はその土地の土地勘がないことから、大規模な地震災害等が発生した場合にも道に迷ってしまい避難経路から逸脱してしまうなど、迅速に避難することができない可能性があります。そのため歴史都市、観光都市の避難計画の検討においては、市民だけでなく観光客の避難も考慮に入れた対策が必要となります。本研究では、京都市東山区を対象に、観光スポットから避難場所までの避難経路について、道路勾配による歩行速度への影響を考慮した抽出をおこないました。また、道路幅員にもとづく避難経路の交通容量についても検討し、迅速な避難のための観光客の避難経路の検討をおこないました。

研究テーマ(11)【自転車の左側通行規制による交通事故遭遇確率のシミュレーション分析】

 近年の自転車通行環境の整備においては、車道上に自転車専用通行帯を設置するケースも多く見受けられます。また、自転車道への一方通行規制の導入など、自転車の左側通行を促進する施策もおこなわれています。しかしながら、現状では車道走行が危険と思われる区間も多く存在しており、また左側通行規制をおこなうことで交差点の横断回数が増加することによる交通事故の増加も懸念されます。本研究では、交差点類型別の交通事故遭遇確率を設定し、出発地・目的地間の交通事故遭遇確率のシミュレーションをおこなうことにより、自転車の左側通行規制を実施した場合における出発地・目的地間の交通事故遭遇確率の変化を比較しました。これにより、自転車の左側通行規制の有効性の検証や、道路条件、交通条件に適した自転車通行環境の整備方法の検討をおこないました。

研究テーマ(12)【簡易ドライビングシミュレータを用いた車道上における自転車通行空間整備の影響分析】

 交通安全対策の効果や道路案内標識の有効性を検討する道具として、ドライバーの運転行動を分析するためのドライビングシミュレータ(DS)が開発されています。本研究では、市販のゲーム用機器を用いた簡易DSを用いて、車道上に自転車通行空間を整備した場合における自動車走行挙動への影響の分析をおこないました。自転車通行空間の整備方法や自動車交通量の大小による被験者の運転行動への影響を分析することにより、道路条件、交通条件に適した自転車通行環境の整備方法の検討をおこないました。これらを通じて、自転車通行空間整備の検討に対する簡易DSの適用性についても検討をおこないました。

研究テーマ(13)【通学時における自転車利用者の行動分析と自転車通行環境の整備案の検討】

 滋賀県草津市南草津地区では、立命館大学びわこ・くさつキャンパスを初めとする多数の教育機関や企業が立地しており、多くの通勤・通学者が自転車を利用しています。しかしながら、地区内の主要道路における自転車通行空間は十分なものではなく、多くの自転車が住宅地内の細街路に流入しているのが現状です。本研究では、ICタグによる計測データを用いた地区内の自転車通勤・通学者の経路選択行動の調査をおこなうとともに、アンケート調査にもとづく通学時における自転車利用者の経路選択行動の分析をおこない、これらにもとづく自転車通行環境の整備案の検討をおこないました。これらにより、今後の自転車交通に対する安全性の向上と、近年、各地でおこなわれている自転車通行環境の整備に対する有用な知見を得ることができました。

研究テーマ(14)【歴史都市における観光客の災害時避難計画に関する研究】

 本研究では、代表的な歴史都市かつ観光都市である京都市東山区を対象として、観光客に対するアンケート調査をおこない、調査結果にもとづく観光客の行動分析を通じて、大規模災害時における観光客の避難誘導に関する課題の抽出と提案をおこないました。京都市東山区を訪れる観光客の周遊行動の状況を明らかにするとともに、災害時に想定される観光客の滞留状況を推定することにより、避難場所の配置や容量、観光スポットから避難場所までの避難誘導に関する課題の抽出と提案をおこないました。これらにより、多数の観光客が訪れる歴史都市、観光都市において、今後の防災計画を策定する上での有用な知見を得ることができました。

研究テーマ(15)【Indonesia国Sleman Urban Areaにおける中学生の通学行動の分析】

 本研究では、Indonesia国Sleman Urban Areaを対象に、中学生の通学行動の分析と、学区制の導入による通学距離、通学交通手段の変化の可能性について検討をおこないました。対象地区では送迎を含めた中学生の通学に関して多くの交通問題が発生していますが、本研究ではアンケート調査にもとづき、通学距離と通学時間、通学交通手段との関係について分析をおこないました。これらにより、今後の交通問題の解決に向けて有用な知見を得ることができました。

 

2010年度 卒業論文・修士論文 研究テーマ

 

2010年度には、以下のような研究テーマで卒業論文、修士論文の作成をおこないました。

研究テーマ(1)【南草津地区におけるLRT導入を想定した地域住民の交通手段選択行動の分析】

 近年、地球温暖化問題に対する関心が高まっていますが、現状では温室効果ガス排出量の多くを運輸・交通によるものが占めています。運輸・交通における温室効果ガス排出量を削減するためには、自動車交通に依存しないまちづくりが必要ですが、地方都市では多くの人が日常生活に自家用車を利用しており、郊外型ショッピングセンターの増加など、自動車交通を前提とした都市が形成されています。本研究では、大都市郊外の住宅地である滋賀県草津市南草津地区を対象に、地区内にLRTを導入することを想定して、地域住民を対象としたアンケート調査にもとづき、地方都市における地域住民の日常的な交通行動における交通手段選択行動の分析をおこないました。

研究テーマ(2)【簡易ドライビングシミュレータを用いた自動車運転行動に対する横断歩行者の影響分析】

 交通安全対策の効果や道路案内標識の有効性を検討する道具として、ドライバーの運転行動を分析するためのドライビングシミュレータ(DS)が開発されています。本研究では、市販のゲーム用機器を用いた簡易DSを用いて、歩行者横断時における自動車走行挙動の分析をおこないました。簡易DS上における歩行者の視認性や、歩行者の横断行動による被験者の運転行動への影響を分析することにより、歩行者・自動車の交通事故の安全対策の検討に対する簡易DSの適用性について検討をおこないました。また、注意喚起のための仮想的な標識、標示などによる被験者の運転行動への影響を分析し、交通安全対策としての効果の検討をおこないました。

研究テーマ(3)【南草津地区における通勤・通学自転車と通学児童の錯綜状況の分析】

 滋賀県草津市南草津地区では、立命館大学びわこ・くさつキャンパスを初めとする多数の教育機関や企業が立地しており、多くの通勤・通学者が自転車を利用しています。しかしながら、地区内の主要道路における自転車通行空間は十分なものではなく、多くの自転車が住宅地内の細街路に流入しているのが現状です。本研究では、2009年度におこなわれた社会実験による計測結果をもとに、通勤・通学自転車と通学児童の錯綜状況の分析をおこないました。これにより、通勤・通学自転車と通学児童の錯綜を防止するための通勤・通学経路の検討と、その課題点の抽出をおこないました。

研究テーマ(4)【新聞記事と学術論文に基づく文化遺産防災の社会的着目度に関する考察】

 歴史都市の防災計画において文化遺産防災を明確に位置付けるためには、災害時においても文化遺産を守ることに対する市民のコンセンサスが重要になります。そのためには、文化遺産防災の必要性を客観的、定量的に示すことが必要であると考えられます。本研究では、地震、火災、水害、土砂災害といった異なる災害について、文化遺産の防災や被災に関する新聞報道の分析をおこない、文化遺産防災に対する社会的な着目度についての考察をおこないました。また、文化遺産や歴史都市の防災に関する学術論文についても同様に分析をおこない、文化遺産防災に対する学術研究面からの着目度についての考察をおこないました。

研究テーマ(5)【自動車交通によるCO2削減のための買い物行動における交通手段選択行動の分析】

 近年、地球温暖化問題に対する関心が高まっていますが、現状では温室効果ガス排出量の多くを運輸・交通によるものが占めています。運輸・交通における温室効果ガス排出量を削減するためには、自動車交通に依存しないまちづくりが必要ですが、地方都市では多くの人が日常生活に自家用車を利用しており、郊外型ショッピングセンターの増加など、自動車交通を前提とした都市が形成されています。本研究では、大都市郊外の住宅地である滋賀県草津市南草津地区を対象に、地域住民の日常的な買い物行動についてのアンケート調査をおこない、地方都市での買い物行動における交通手段選択行動に関する分析をおこないました。

研究テーマ(6)【リバーシブルレーンの終端部における交通挙動分析と交通安全対策の検討】

 時間帯によって往復の交通量に大きな差があるような道路では、道路幅員を有効に利用して各方向の交通需要を処理するために、リバーシブルレーンが設置されることがあります。滋賀県内でも、大津市内の国道161号(現道)に設置されています。本研究では、リバーシブルレーンの終端部に位置し、交通事故多発交差点でもある大津港口交差点を対象に、リバーシブルレーンから交差点に進入する自動車の走行挙動分析をおこない、交通安全対策についての検討をおこないました。

研究テーマ(7)【歩行者・自転車の横断事故多発交差点における交通安全対策の検討】

 交通事故の多くは、交通事故多発地点と呼ばれる特定の地点で集中して発生しています。このような地点では、通行する歩行者、自転車、自動車の挙動分析をおこない、交通事故の発生要因の抽出とそれにもとづく適切な交通安全対策の検討をおこなう必要があります。本研究では、歩行者・自転車の横断事故多発交差点である国道1号・国道小柿交差点(滋賀県栗東市)を対象として、交差点を通行する歩行者、自転車、自動車の挙動分析をおこない、交通安全対策についての検討をおこないました。

研究テーマ(8)【環境対応車普及促進税制による自動車購買意欲への影響の分析】

 近年、環境対応車普及促進税制(エコカー減税)が導入され、環境対応車(エコカー)の普及促進がおこなわれています。本研究では、エコカー減税の導入による市民の自動車購買意欲への影響について、アンケート調査にもとづき分析をおこないました。具体的には、エコカー減税導入後の自動車購入の有無や、その際の車種の選択、エコカー購入時の車種選択の理由などについての意識調査をおこない、市民の自動車購買意欲に対するエコカー減税導入の影響について検討をおこないました。

研究テーマ(9)【南草津地区におけるLRT導入を想定した学生の交通手段選択行動の分析】

 滋賀県草津市南草津地区では、立命館大学びわこ・くさつキャンパスを初めとする多数の教育機関や企業が立地しており、多くの通勤・通学者がバスや自転車を利用しています。しかしながら、地区内の主要道路は朝夕のピーク時における混雑が激しく、バスは定時性が十分に保てないのが現状です。また、主要道路における自転車通行空間は十分なものではなく、多くの自転車が住宅地内の細街路に流入しているため、地区内の歩行者や通学児童との錯綜が発生しています。本研究では、通学手段として地区内にLRTを導入することを想定して、学生を対象としたアンケート調査にもとづき、学生の通学行動における交通手段選択行動の分析をおこないました。

研究テーマ(10)【歴史都市における観光客の避難のための避難誘導経路の特性に関する分析】

 文化遺産を数多く有する歴史都市は、多数の観光客を迎える観光都市でもあります。このため歴史都市の防災計画においては、一般的な都市防災に加え、主要な観光スポットとなる文化遺産やその周辺地域における観光客の適切な避難誘導を考える必要があります。本研究では、観光客の避難を想定した避難誘導経路に関する分析として、京都市上京区、東山区を対象に、観光スポットとなっている文化遺産所在地から最寄りの広域避難場所に向かう避難誘導経路の抽出をおこないました。また、抽出された経路について、避難場所までの距離を考慮した到達可能率と、経路中に含まれる右左折回数の2つの評価指標を用いて、その実用性の評価をおこないました。

研究テーマ(11)【地方都市における自転車利用促進のための有効な距離帯に関する地域比較分析】

 近年、都市交通手段としての自転車が見直されてきており、環境負荷の低減のため、自動車から自転車への交通手段転換の促進が期待されています。一般に、都市内においては5km程度以内の距離帯であれば自転車の所要時間がもっとも短いとされており、自転車利用の促進が期待される距離帯であるとされています。しかしながら、これは大都市の都心部を想定した各交通手段のサービス水準にもとづいたものであり、地方都市や郊外地域においては各交通手段のサービス水準が異なることから、有効な距離帯は異なると思われます。本研究では、京都市中京区、京都府向日市、滋賀県草津市の3地域における各交通手段のサービス水準にもとづき、地方都市の実状に応じた自転車利用促進のための有効な距離帯の算定と比較をおこないました。またこれにもとづき、自転車通行空間の整備による有効な距離帯の変化の可能性についても検討をおこないました。

研究テーマ(12)【簡易ドライビングシミュレータを用いた車道上における自転車通行空間整備の影響分析】

 交通安全対策の効果や道路案内標識の有効性を検討する道具として、ドライバーの運転行動を分析するためのドライビングシミュレータ(DS)が開発されています。本研究では、市販のゲーム用機器を用いた簡易DSを用いて、車道上に自転車通行空間を整備した場合における自動車走行挙動への影響の分析をおこないました。簡易DS上における自転車通行空間の視認性や、自転車通行空間の整備方法による被験者の運転行動への影響を分析することにより、自転車通行空間整備の検討に対する簡易DSの適用性について検討をおこないました。

研究テーマ(13)【交通行動分析に基づく観光客の災害時避難に関する研究】

 本研究では、代表的な歴史都市かつ観光都市である京都市東山区を対象として、観光客に対するアンケート調査をおこない、調査結果にもとづく観光客の行動分析を通じて、大規模災害時における観光客の避難誘導に関する課題の抽出と提案をおこないました。京都市東山区を訪れる観光客の周遊行動の状況を明らかにするとともに、災害時に想定される観光客の滞留状況を推定することにより、避難場所の配置や容量、観光スポットから避難場所までの避難誘導に関する課題の抽出と提案をおこないました。これらにより、多数の観光客が訪れる歴史都市、観光都市において、今後の防災計画を策定する上での有用な知見を得ることができました。

研究テーマ(14)【CVMを用いた文化遺産防災政策導入の必要性の評価に関する研究】

 本研究では、CVM(仮想市場評価法)を用いて、歴史都市における文化遺産防災に対する市民の支払意思額を計測し、これにもとづいて文化遺産防災に対する社会的な便益の推定をおこないました。また、支払意思額について地域比較をおこなうことにより、文化遺産防災に対する市民意識の地域比較や、新聞報道における文化遺産防災に対する着目度との比較をおこないました。これらを通じて、歴史都市において文化遺産防災を公共政策としておこなうことに対する意義を定量的に評価することにより、今後の歴史都市において文化遺産防災を含めた防災計画を策定する上での有用な知見が得られました。

 

2009年度 卒業論文・修士論文 研究テーマ

 

2009年度には、以下のような研究テーマで卒業論文、修士論文の作成をおこないました。

研究テーマ(1)【道路幅員構成の変更による二輪車の走行挙動の変化に関する分析】

 長距離交通と短距離交通とが混在した道路では、大型車、普通車、二輪車などのさまざまな車両が混在して走行しています。このような道路では、渋滞時には路肩を二輪車がすり抜けて走行する一方、非渋滞時には原付などの低速の二輪車を普通車や大型車が追い越して走行しており、これらに起因する多くの交通事故が発生しています。本研究では、近年、路肩幅員の縮小がおこなわれた滋賀県大津市内の国道1号を対象に、二輪車の走行挙動の調査をおこないました。これにより、路肩幅員縮小前の二輪車の走行挙動との比較をおこない、道路幅員構成の変更による二輪車の走行挙動の変化について分析しました。

研究テーマ(2)【自動車交通によるCO2削減のための買い物行動の分析】

 近年、地球温暖化問題に対する関心が高まっていますが、現状では温室効果ガス排出量の多くを運輸・交通によるものが占めています。運輸・交通における温室効果ガス排出量を削減するためには、自動車交通に依存しないまちづくりが必要ですが、地方都市では多くの人が日常生活に自家用車を利用しており、郊外型ショッピングセンターの増加など、自動車交通を前提とした都市が形成されています。本研究では、草津市民を対象に買い物行動についてのアンケート調査をおこない、日常的な買い物行動における目的地選択、交通手段選択に関する分析をおこないました。これらをもとに、郊外型ショッピングセンターの増加がCO2排出量に及ぼす影響について検討をおこないました。

研究テーマ(3)【大都市郊外における二輪車の保有・利用行動に関する分析】

 二輪車の保有・利用状況は地域により異なっています。これは、二輪車が歩行者・自転車と自動車との間に位置する交通手段であり、地域の公共交通の整備状況、道路の混雑状況などによって自転車や自動車の代替交通手段となっているためです。本研究では、関東、関西の大都市郊外における二輪車の保有・利用状況を把握することを目的に、東京都杉並区、京都府向日市を対象としてアンケート調査をおこない、二輪車の保有・利用状況についての分析をおこないました。

研究テーマ(4)【自転車歩行者道における通行区分の表示方法と利用者の遵守率との関連分析】

 歩道上で自転車・歩行者を物理的に分離するためには広幅員の歩道が必要であり、現実的にそのような幅員を確保できる道路は少ないことから、物理的分離以外にも路面標示や標識の設置などによる通行位置の指定、誘導がおこなわれています。しかしながら、自転車・歩行者を適切に誘導するにはどのような路面標示や標識の設置が適切であるのかは不明確な状況であり、各地でさまざまな方法が試行錯誤されているのが現状です。本研究では、自転車通行可の歩道上における自転車・歩行者の通行位置を調査し、物理的分離や路面標示・標識の設置状況、自転車・歩行者の交通量による、自転車・歩行者の通行位置の遵守率の比較をおこないました。

研究テーマ(5)【渋滞時・非渋滞時における信号切り替わり時の自動車走行挙動の分析】

 平面交差点の信号制御では、現示が切り替わる際に交差点内に残る車両を一掃するため、クリアランス時間(黄時間+全赤時間)が設定されます。これらは交差点の形状や車両の走行速度などに応じて設定されますが、逆にこの存在を見越して交差点に無理な進入をする車両も多く存在し、危険な状態となっています。本研究では、信号サイクル長の長い幹線道路の信号交差点を対象に、渋滞時・非渋滞時による、信号切り替わり時における「フライング」や「無理な進入」などの自動車走行挙動の違いを比較しました。これにより、渋滞時・非渋滞時の違いや信号待ち時間の違いによる、信号切り替わり時の自動車走行挙動への影響について分析しました。

研究テーマ(6)【簡易ドライビングシミュレータを用いた歩行者横断時の自動車走行挙動の分析】

 交通安全対策の効果や道路案内標識の有効性を検討する道具として、ドライバーの運転行動を分析するためのドライビングシミュレータ(DS)が開発されています。本研究では、市販のゲーム用機器を用いた簡易DSを対象に、歩行者横断時の自動車走行挙動の分析をおこないました。簡易DS上における歩行者の視認性や、歩行者の横断行動による被験者の運転行動への影響を分析することにより、歩行者・自動車の交通事故の安全対策の検討に対する簡易DSの適用性について検討をおこないました。

研究テーマ(7)【南草津地区における社会実験に基づく自転車利用者の経路選択行動の分析】

 滋賀県草津市南草津地区では、立命館大学びわこ・くさつキャンパスを初めとする多数の教育機関や企業が立地しており、多くの通勤・通学者が自転車を利用しています。しかしながら、地区内の主要道路における自転車通行空間は十分なものではなく、多くの自転車が住宅地内の細街路に流入しているのが現状です。本研究では、通勤・通学に利用されている自転車にICタグを取り付け、地区内に設置したアンテナにより計測される情報をもとに、地区内の自転車通勤・通学者の経路選択行動の推計をおこないました。これにより、地区内の自転車通勤・通学に関する課題点を把握するとともに、ICタグによる計測データを用いた自転車利用者の経路選択行動分析の可能性を検討しました。

研究テーマ(8)【観光客の利用交通手段を考慮した文化遺産の観光資源としての評価】

 文化遺産を数多く有する歴史都市においては、一般的な都市防災に加えて文化遺産を災害から守るという視点が必要になります。しかしながら、災害時において守るべきものには市民の生命や財産、社会基盤や産業基盤などさまざまなものがあり、防災計画においては限りある資源をさまざまなものの防災に向けていかなければなりません。防災計画全般の中での文化遺産防災の位置付けを明確にするためには、災害時においても文化遺産を守ることに対する市民のコンセンサスが重要です。そのためには、文化遺産防災の必要性について市民がどのように捉えているか、市民の意識や行動の面からできるだけ客観的、定量的に捉えていく必要があります。本研究では、文化遺産防災の必要性を客観的、定量的に試算することを目的に、京都市東山区の文化遺産を対象に、観光客の利用交通手段を考慮した観光資源としての評価をおこないました。

研究テーマ(9)【歴史都市における災害時の効果的な避難誘導経路の抽出方法に関する検討】

 文化遺産を数多く有する歴史都市は、多くの観光客を迎える観光都市でもあります。そのため、歴史都市の防災においては、一般的な都市防災に加えて観光客の適切な避難誘導を考える必要があります。本研究では、代表的な歴史都市として京都市を取り上げ、その中でも多くの観光客が訪れる東山区を対象に、文化遺産所在地から避難場所までの適切な誘導方法について検討をおこないました。具体的には、文化遺産所在地から避難場所までの想定される避難経路と、歴史都市の道路ネットワーク特性との関連について検討をおこない、地理不案内な観光客に対する避難誘導経路の設定方法について検討をおこないました。

研究テーマ(10)【文字の複雑さを考慮した簡易ドライビングシミュレータにおける道路案内標識の視認性に関する検討】

 交通安全対策の効果や道路案内標識の有効性を検討する道具として、ドライバーの運転行動を分析するためのドライビングシミュレータ(DS)が開発されています。本研究では、市販のゲーム用機器を用いた簡易DSを対象に、道路案内標識の有効性を検討することを目的として、道路案内標識の視認性の検討をおこないました。とくに、道路案内標識に表示される文字の複雑さによって必要となる視認距離が異なることから、簡易DS上における文字の複雑さを考慮した道路案内標識の適切な拡大率の検討をおこないました。

研究テーマ(11)【都心部の都市再生へ向けた連鎖型再開発事業手法に関する研究】

 本研究では、大都市都心部における都市再生を目的とした連鎖型再開発事業の方法を提案し、その実現性をおもに制度面から検討しました。具体的には、現行の土地区画整理事業と市街地再開発事業との組み合わせによって継続的な市街地再開発の実施を可能とする方法を提案しました。これにより、今後の大都市都心部における集約型都市構造と都市再生の実現に寄与することができる有用な知見を得ることができました。

研究テーマ(12)【単路部における横断行動の危険性に関する研究】

 本研究では、一般道路の単路部における歩行者の横断行動の危険性を、実測調査にもとづき定量的に評価しました。具体的には、歩行者の横断行動および自動車の走行挙動を実測調査にもとづき解析し、解析結果にもとづく実証的かつ定量的な評価方法の構築をおこないました。これにより、今後の交通安全対策やドライバー・歩行者の安全教育に寄与することができる有用な知見を得ることができました。

研究テーマ(13)【インドネシア国Bali島Kuta地区における公共交通ネットワークの計画に関する検討】

 本研究では、インドネシア国Bali島Kuta地区を対象に、公共交通ネットワークの計画をおこないました。対象地区ではモータリゼーションの進展にともなってさまざまな交通問題が発生しており、具体的な交通政策の検討が必要とされています。本研究では、交通需要調査と観光客の意向調査にもとづいた公共交通ネットワークの提案をおこない、今後の公共交通計画の策定において有用な知見を得ることができました。

 

2008年度 卒業論文・修士論文 研究テーマ

 

2008年度には、以下のような研究テーマで卒業論文、修士論文の作成をおこないました。

研究テーマ(1)【京都市東山区を訪れる観光客の交通行動分析】

 文化遺産や歴史的な町並みを数多く有する歴史都市は、それらを観光資源とした観光都市でもあります。そのため、歴史都市において防災計画を考える上では、観光客の存在を考慮した防災計画を策定する必要があります。本研究では、代表的な歴史都市、観光都市である京都市の東山区を対象に、観光客の交通行動に関するアンケート調査をおこない、その実態を把握しました。また、今後の歴史都市、観光都市における防災計画のための、観光客の交通行動調査方法について検討をおこないました。

研究テーマ(2)【淀屋橋交差点における歩車分離式信号の交差点処理能力に関する研究】

 近年、平面交差点における横断歩行者や自転車の安全性を向上するため、歩車分離式信号の導入が進められています。本研究では、大阪市都心部にある淀屋橋交差点を対象に、自動車交通量、歩行者交通量の実測調査をおこない、歩車分離式信号を導入した場合における交通処理能力の検討をおこないました。複数の制御方式の比較をおこなった結果、歩行者交通量の多い淀屋橋交差点においては歩行者専用現示方式の導入が有効であることがわかりました。

研究テーマ(3)【信号切り替わり時の自動車走行挙動と信号制御・見通しとの関連分析】

 平面交差点の信号制御では、現示が切り替わる際に交差点内に残る車両を一掃するため、クリアランス時間(黄時間+全赤時間)が設定されます。これらは交差点の形状や車両の走行速度などに応じて設定されますが、逆にこの存在を見越して交差点に無理な進入をする車両も多く存在し、危険な状態となっています。本研究では、信号サイクル長や右折専用現示の有無といった信号制御の違いや、交差点の見通し距離の違いによる、信号切り替わり時における「フライング」や「無理な進入」などの自動車走行挙動の違いを比較しました。これにより、信号切り替わり時のフライングに対しては見通し距離が、無理な進入に対しては信号サイクル長や右折専用現示の有無が影響を及ぼしていることがわかりました。

研究テーマ(4)【観光マップを用いた歴史都市の市街地における観光客の避難誘導に関する研究】

 文化遺産や歴史的な町並みを数多く有する歴史都市は、それらを観光資源とした観光都市でもあります。そのため、歴史都市において防災計画を考える上では、観光客の存在を考慮した防災計画を策定する必要があります。このとき、観光客の多くは都市内の地理に不案内であることや、歴史都市の市街地には幅員の小さい道路や袋小路といったわかりにくい道路が多くあることを想定する必要があります。本研究では、地理不案内な観光客の避難誘導を想定し、多数の観光客が手にしやすい観光マップを用いた避難場所への経路誘導の調査をおこないました。これにより、観光マップに掲載すべき避難誘導のための情報について考察をおこないました。

研究テーマ(5)【簡易ドライビングシミュレータの速度再現性向上方策に関する検討】

 交通安全対策の効果や道路案内標識の有効性を検討する道具として、ドライバーの運転行動を分析するためのドライビングシミュレータ(DS)が開発されています。本研究では、市販のゲーム用機器を用いた簡易DSを対象に、ドライバーの運転行動の再現性向上方策について検討しました。具体的には、街路樹や標識、路面標示の有無や形状、対向車両の車頭間隔や走行速度の違いによる被験者の走行速度への影響を比較し、現地での走行挙動との比較をおこなうことにより、簡易DSにおける走行速度の再現性について検討をおこないました。

研究テーマ(6)【旅行費用法を用いた観光資源としての文化遺産の評価】

 歴史都市の防災計画において文化遺産防災を明確に位置付けるためには、災害時においても文化遺産を守ることに対する市民のコンセンサスが重要になります。そのためには、文化遺産防災の必要性を客観的、定量的に示すことが必要であると考えられます。本研究では、多くの歴史都市が観光都市でもあることから、観光資源としての文化遺産の価値に着目し、京都市東山区を対象に、旅行費用法を用いて観光資源としての文化遺産の評価をおこないました。

研究テーマ(7)【新聞記事に基づく文化遺産防災に対する社会的着目度の地域比較】

 歴史都市の防災計画において文化遺産防災を明確に位置付けるためには、災害時においても文化遺産を守ることに対する市民のコンセンサスが重要になります。そのためには、文化遺産防災の必要性を客観的、定量的に示すことが必要であると考えられます。本研究では、文化遺産の防災や被災に関する新聞報道の分析をおこない、文化遺産防災に対する社会的な着目度についての考察をおこないました。このとき、全国紙、ブロック紙、地方紙といった異なる販売領域をもった新聞の傾向を比較することにより、文化遺産防災に対する社会的な着目度の地域比較をおこないました。

研究テーマ(8)【自転車利用者の経路選択特性の分析】

 立命館大学BKCでは、多くの学生が自転車や二輪車で通学しています。このためBKC周辺では、通学時間帯に大量の自転車や二輪車が集中し、交通渋滞、交通事故なども発生しています。本研究では、BKC周辺での学生の自転車利用の実態調査をおこなうとともに、自転車利用者の経路選択特性の分析をおこないました。結果として、経路の車道幅員、右左折回数、信号交差点の数などが、BKC周辺での自転車利用者の経路選択の要因となっていることがわかりました。

研究テーマ(9)【環境対策導入が交通手段分担とCO2排出量に及ぼす影響の分析】

 近年、地球温暖化問題に対する関心が高まっていますが、現状では温室効果ガス排出量の多くを運輸・交通によるものが占めています。運輸・交通における温室効果ガス排出量を削減するためには、自動車交通に依存せず、鉄道などの公共交通の利用を促進する必要があります。本研究では、都市間交通を対象とした交通手段分担モデルを構築することにより、炭素税などの環境対策の導入が交通手段分担とCO2排出量に及ぼす影響について検討をおこないました。

研究テーマ(10)【夜間における二輪車の路肩走行挙動と路肩幅員との関連分析】

 長距離交通と短距離交通とが混在した道路では、大型車、普通車、二輪車などのさまざまな車両が混在して走行しています。このような道路では、渋滞時には路肩を二輪車がすり抜けて走行する一方、非渋滞時には原付などの低速の二輪車を普通車や大型車が追い越して走行しており、これらに起因する多くの交通事故が発生しています。本研究では、路肩幅員が異なる往復2車線道路を対象に、夜間における二輪車の路肩走行挙動の調査をおこない、路肩幅員の大小による二輪車の走行挙動への影響を分析しました。また、これまでの研究で得られた昼間時における走行挙動との比較をおこない、時間帯の違いによる二輪車の走行挙動の違いを分析しました。

研究テーマ(11)【文化遺産防災のための道路モニタリングシステムの効果的な整備に関する研究】

 歴史都市においては、幅員の小さい道路や袋小路など、災害時には道路ネットワークの機能が失われやすい地域が多くあります。そのような地域において文化遺産防災を考える上では、監視カメラによって道路の被災状況を的確に把握し、緊急車両を適切に誘導するための道路モニタリングシステムが有効であると考えられます。本研究では、代表的な歴史都市である京都市の中心部を対象として、文化遺産防災のための道路モニタリングシステムの整備効果について検討をおこないました。道路モニタリングシステムの整備においては、対象となる文化遺産の分布や道路ネットワークの特性にもとづき、効果的な監視カメラの配置計画をおこなうことによって、少数の監視カメラで高い整備効果を得られることがわかりました。

研究テーマ(12)【簡易ドライビングシミュレータにおける道路案内標識の視認性に関する検討】

 交通安全対策の効果や道路案内標識の有効性を検討する道具として、ドライバーの運転行動を分析するためのドライビングシミュレータ(DS)が開発されています。本研究では、市販のゲーム用機器を用いた簡易DSを対象に、道路案内標識の有効性を検討することを目的として、道路案内標識の視認性の検討をおこないました。結果として、簡易DSにおいては道路案内標識の大きさを実物よりも拡大することが必要であることがわかりました。また、走行速度に応じた適切な拡大率を明らかにすることができました。

研究テーマ(13)【インドネシア国North Acheにおける津波災害に対する避難施設の配置計画に関する検討】

 インドネシア国North Acheでは、沿岸部に多数の住民が居住しており、これまでにも津波の被害を受けてきていることから、津波災害に対する早急な対策が必要とされています。本研究では、North Acheを対象に、津波災害に対する避難施設の配置計画をおこないました。対象地域の家屋配置や道路ネットワークにもとづき具体的な避難施設の配置計画をおこなうことにより、今後の対象地域の防災計画の策定に対して有用な知見が得られました。

 

2007年度 卒業論文・修士論文 研究テーマ

 

2007年度には、以下のような研究テーマで卒業論文、修士論文の作成をおこないました。

研究テーマ(1)【無信号交差点における自転車の交通錯綜に関する研究】

 自転車の関わる交通事故の1つとして、無信号交差点における自動車との出合頭事故が挙げられます。その多くは、歩道や路側帯を走行する自転車と細街路から交差点に進入する自動車との衝突によるものですが、このような交通事故の危険性には自転車の走行位置・走行速度、自動車の停止位置、相互の見通し距離など、さまざまな要因が考えられます。本研究では、このような無信号交差点に進入する自転車、自動車の走行挙動を観測し、自転車の走行位置や走行速度による交通事故の危険性の違いについて検討しました。

研究テーマ(2)【歩行者の影響を考慮した平面交差点における右左折車の交通容量分析】

 近年、平面交差点における横断歩行者や自転車の安全性を向上するため、歩車分離信号の導入が進められています。このような歩車分離信号の導入の検討において、自動車交通量、歩行者交通量などの交差点条件と、歩車分離信号の導入による交通渋滞への影響との関係を把握するためには、右左折車の交通容量に対する横断歩行者の影響をより正確に把握する必要があります。本研究では、横断歩行者の影響を考慮した右左折車の交通容量について、平面交差点のシミュレーションモデルを作成することにより検討しました。

研究テーマ(3)【都市計画道路の見直し手順に関する研究】

 都市計画策定時からの社会情勢の変化や、長期未着手の都市計画道路の存在にともない、近年、多くの自治体で都市計画道路の見直しがおこなわれています。見直しに当たっては、各自治体において見直し手順を策定し、それにもとづいて各々の都市計画道路の評価をおこないます。本研究では、さまざまな自治体における都市計画道路の見直し手順について調査をおこない、検討項目における共通点や相違点の有無、地域特性や現状の都市計画道路の整備状況との関連について比較をおこないました。

研究テーマ(4)【簡易ドライビングシミュレータの再現性向上方策に関する検討】

 交通事故多発地点の安全対策を検討する道具として、ドライバーの運転行動を分析するためのドライビングシミュレータ(DS)が開発されています。本研究では、市販のゲーム用機器を用いた簡易DSを対象に、ドライバーの運転行動の再現性向上方策について検討しました。具体的には、信号交差点での信号切り替わり時におけるドライバーの通過・停止の判断に対する実験を簡易DSを用いておこない、実験での被験者の判断と現地での走行挙動とを比較することにより、簡易DSにおける運転行動の再現性について検討をおこないました。

研究テーマ(5)【リバーシブルレーン設置による交通の円滑性に関する研究】

 時間帯によって往復の交通量に大きな差があるような道路では、道路幅員を有効に利用して各方向の交通需要を処理するために、リバーシブルレーンが設置されることがあります。滋賀県内でも、大津市内の国道161号(現道)に設置されています。本研究では、リバーシブルレーンが設置された道路について、交通量と各車線の利用率との関係を分析するとともに、通常の道路(リバーシブルレーンの設置されていない道路)との比較をおこない、リバーシブルレーンの設置による交通の円滑性への効果について検討をおこないました。

研究テーマ(6)【買い物行動に対する自動車保有の影響に関する研究】

 現在では多くの人が自家用車を保有し、日常生活に自家用車を使うことを前提としたライフスタイルをとっています。日常生活に自家用車を利用することにより、交通手段の変化のみならず、交通行動の目的地や頻度も異なることが予想されます。本研究では、草津市民を対象に買い物行動についてのアンケート調査をおこない、自家用車の保有の有無による日常的な買い物行動への影響について分析しました。この結果、自家用車保有層、非保有層によって、日常的な買い物行動の目的地や頻度が異なることがわかりました。

研究テーマ(7)【渋滞時における往復4車線道路の路肩幅員と二輪車走行挙動の関連性の分析】

 長距離交通と短距離交通とが混在した道路では、大型車、普通車、二輪車などのさまざまな車両が混在して走行しています。このような道路では、渋滞時には路肩を二輪車がすり抜けて走行する一方、非渋滞時には原付などの低速の二輪車を普通車や大型車が追い越して走行しており、これらに起因する多くの交通事故が発生しています。本研究では、路肩幅員が異なる往復4車線道路を対象に二輪車の走行挙動の調査をおこない、路肩幅員の大小による走行挙動への影響を分析しました。また、これまでの研究で得られた往復2車線道路での走行挙動との比較をおこない、車線数の違いによる走行挙動の違いを分析しました。

研究テーマ(8)【新聞記事に基づく文化遺産防災の社会的着目度に関する考察】

 歴史都市とはいえ、災害時に守るべきものは文化遺産ばかりではなく、市民の生命、財産、産業基盤、インフラストラクチャーなど、さまざまなものがあります。これらを考えず、文化遺産防災のみを考えていても、防災投資に対する市民の理解は得られないでしょう。本研究では、文化遺産を災害から守ることが社会的にどの程度重要と思われているのかを把握するため、文化遺産の防災や被災に関する新聞報道の分析をおこない、文化遺産防災に対する社会的な着目度についての考察をおこないました。

研究テーマ(9)【歩車分離式信号による交差点処理能力の改善に関する研究】

 近年、平面交差点における横断歩行者や自転車の安全性を向上するため、歩車分離信号の導入が進められています。しかしながら、歩車分離信号の信号現示のパターンにはいろいろなものがあり、たとえば交差点の規模、車線数、自動車交通量、歩行者交通量などの条件により、適切な信号現示のパターンは異なっていると考えられます。
 本研究では、平面交差点のシミュレーションモデルを作成することにより、近年導入が進められている歩車分離信号を対象に、交差点の自動車交通量、歩行者交通量と信号制御方式による自動車交通の渋滞状況への影響を定量的に分析しました。これにより、歩車分離信号の導入の検討において問題となりやすい自動車交通への影響について定量的な評価をおこない、交差点条件に応じた渋滞状況の変化を明らかにすることができました。このような研究を通じて、今後の交差点の信号制御方法の検討に対しての知見が得られると考えています。