過去の研究テーマ

ホーム履歴講義資料研究テーマ研究業績写真リンク更新履歴


 

以下は、2012年度〜2016年度におこなっていた研究テーマです。もちろん、これからも継続しておこなっていきます。

 

2016年度 卒業論文・修士論文 研究テーマ

 

2016年度には、以下のような研究テーマで卒業論文、修士論文の作成をおこないました。(研究室は安隆浩特任助教との共同運営です。)

研究テーマ(1)【鉄道駅改良工事にともなう駅構内の昇降施設利用状況の変化の分析】

 JR高槻駅では、近年、駅構内の改良工事がおこなわれ、ホームの新設、昇降式ホーム柵の設置、乗換通路や改札口の新設などがおこなわれました。このため、駅構内での乗降客、乗換え客の移動が大きく変化しています。本研究では、改良工事後の高槻駅における旅客流動調査をおこない、ホームとコンコースを結ぶ昇降施設の利用状況や混雑状況の把握をおこないました。また、過去の研究で実施された改良工事前の調査結果と比較することにより、改良工事にともなう駅構内の昇降施設の利用状況や混雑状況の変化の分析をおこないました。(安先生担当テーマ)

研究テーマ(2)【法定外標識による自転車利用者の経路選択行動への影響分析】

 立命館大学びわこ・くさつキャンパスでは、多くの学生が自転車を利用して通学をしています。しかしながら、キャンパス周辺の幹線道路における自転車通行環境は十分なものではなく、多くの自転車が住宅地内の細街路に流入しています。本研究では、住宅地内の細街路における自転車の通過交通を抑制するため、住宅地内への流入抑制や幹線道路への経路誘導を目的とした法定外標識を想定し、学生に対するアンケート調査にもとづき自転車利用者の経路選択行動への影響分析をおこないました。これにより、法定外標識の内容やデザインによる自転車利用者の意識や行動に対する影響について検討しました。

研究テーマ(3)【文化遺産防災施策の評価に対する旅行費用法とCVMとの比較】

 歴史都市の防災計画において文化遺産防災を明確に位置付けるためには、災害時においても文化遺産を守ることに対する市民のコンセンサスが重要になります。そのためには、文化遺産防災の必要性を客観的、定量的に示すことが必要であると考えられます。本研究では、旅行費用法とCVM(仮想市場評価法)を用いて、観光客からみた観光資源としての文化遺産の評価や、文化遺産防災施策に対する市民の支払意思額の計測をおこないました。これにより、方法論の違いによる文化遺産防災施策の評価結果の違いについて考察をおこないました。

研究テーマ(4)【「飛び出し坊や」の設置方法に対する課題点の抽出と改善策の検討】

 「飛び出し坊や」とは、ドライバーに対して子供の飛び出しに対する注意喚起を促すための子供の絵が描かれた看板で、滋賀県内では多数の設置がなされています。これらは行政や警察ではなく、おもに町内会やPTAなどが中心となって設置をしているのですが、ドライバーに対する注意喚起として役に立つ一方で、設置方法によってはかえって交差点の見通しの妨げになるなど、危険性を助長しているものも見受けられます。本研究では、滋賀県草津市の玉川小学校区、矢倉小学校区内に設置されている「飛び出し坊や」について実態調査をおこない、設置方法に対する課題点の抽出と改善策の検討をおこないました。

研究テーマ(5)【草津市玉川小学校区・矢倉小学校区における「飛び出し坊や」の設置状況に関する実態調査】

 「飛び出し坊や」とは、ドライバーに対して子供の飛び出しに対する注意喚起を促すための子供の絵が描かれた看板で、滋賀県内では多数の設置がなされています。これらは行政や警察ではなく、おもに町内会やPTAなどが中心となって設置をしています。このため、地域内でどのような箇所に「飛び出し坊や」が設置されているかを調べることにより、地域住民が日常生活の中でどのような箇所を危険と感じているかを知ることができます。本研究では、滋賀県草津市の玉川小学校区、矢倉小学校区内に設置されている「飛び出し坊や」について実態調査をおこない、「飛び出し坊や」の設置箇所と地域の道路状況、交通状況の特徴との比較をおこないました。

研究テーマ(6)【往復2車線道路における車道通行の自転車に対する自動車の追越し行動の分析】

 地方部においては、幹線道路においても路肩幅員が小さい往復2車線道路が多く存在しています。そのような道路で自転車の車道通行が増加した場合、都市部での往復4車線以上の道路とは異なり、自動車は対向車線にはみ出して自転車を追い越すことになります。このため、交通量が大きい道路においては自動車による自転車の追越しが困難となり、自転車との間隔を十分に空けない危険な追越し行動が発生したり、幹線道路として必要となる自動車の交通容量に影響を及ぼしたりする可能性があります。本研究では、往復2車線道路において自転車が車道通行をおこなった場合の自動車による自転車の追越し行動に着目し、追越し時の横断方向の車両間隔、自動車の走行速度、対向車線へのはみ出しの有無などを計測することにより、往復2車線道路における自転車の車道通行による自動車交通への影響の分析をおこないました。

研究テーマ(7)【公共交通の情報提供による利用者の経路選択行動への影響に関する研究】

 京都市では「歩くまち京都」と呼ばれるバス・鉄道乗換案内システムが運用されており、バス・鉄道に対するさまざまな情報が提供されています。本研究では、このような乗換案内システムによる情報提供が一般利用者の経路選択行動に及ぼす影響について把握するため、WEBアンケート調査を実施し、利用者の経路選択行動モデルの構築をおこないました。これにより、利用者の乗換案内システムに対する利用特性や、利用者の経路選択行動に影響を及ぼす要因について分析をおこないました。(安先生担当テーマ)

研究テーマ(8)【交通死亡事故多発警報の発令基準と発令状況に関する分析】

 交通死亡事故多発警報とは、一定期間内に死亡事故発生件数や死者数などが一定水準以上となった場合に、都道府県や警察本部などが警報を発令し、注意を呼び掛けるものです。発令基準には一定期間内の死亡事故発生件数を用いているもの、死者数を用いているもの、その他の基準を用いているものなど、さまざまなものが存在し、それに応じて制度の名称もさまざまなものがあります。本研究では、適切な発令基準の設定方法を考える一助とすることを目的として、注意喚起のための警報の発令頻度という視点から、その発令基準と発令状況について分析をおこないました。具体的には、確率現象として算定し得る警報の発令回数の期待値と、実際の警報の発令回数の実績値との比較をおこないました。

研究テーマ(9)【公共交通の情報提供に対する利用者の満足度と信頼度に関する研究】

 京都市では「歩くまち京都」と呼ばれるバス・鉄道乗換案内システムが運用されており、バス・鉄道に対するさまざまな情報が提供されています。本研究では、このような乗換案内システムに対する利用者の満足度、信頼度に及ぼす要因を明らかにするため、WEBアンケート調査を実施し、乗換案内システムに対する利用者の利用特性を把握しました。これをもとに、共分散構造モデルを構築することにより利用者の満足度、信頼度に影響を及ぼす要因の分析をおこないました。(安先生担当テーマ)

研究テーマ(10)【CVMを用いた文化遺産防災施策に対する支払意思額の都道府県別比較分析】

 歴史都市の防災計画において文化遺産防災を明確に位置付けるためには、災害時においても文化遺産を守ることに対する市民のコンセンサスが重要になります。そのためには、文化遺産防災の必要性を客観的、定量的に示すことが必要であると考えられます。本研究では、CVM(仮想市場評価法)を用いて、歴史都市における文化遺産防災施策に対する市民の支払意思額を計測し、これにもとづいて文化遺産防災に対する社会的な便益の推定をおこないました。また、支払意思額について都道府県別の比較をおこなうことにより、文化遺産防災に対する市民意識の比較をおこないました。

研究テーマ(11)【自転車歩行者道におけるすれ違い・追い越し行動に対する通行ルールの導入効果に関する分析】

 近年、自転車の車道左側通行の促進や、車道上の自転車通行空間の整備が進められていますが、自動車の走行速度が大きい幹線道路など、自転車が自動車と混在して走行することが困難な道路も多く存在します。このような道路における自転車歩行者道において、自転車は「中央から車道寄りの部分を徐行する」こととされていますが、すれ違い・追い越し行動に対する明確なルールは定められておらず、双方向通行で速度が異なる歩行者・自転車が混在する空間において錯綜現象が増加する原因となっていると考えられます。本研究では、エージェントシミュレーションを用いて自転車歩行者道における歩行者・自転車の挙動を再現し、すれ違い・追い越し行動にともなう回避挙動を錯綜現象と捉え、すれ違い・追い越し行動に対する通行ルールを定めること、歩行者・自転車が通行ルールを遵守することによる錯綜現象の減少効果の分析をおこないました。

研究テーマ(12)【Indonesia国Muaro Jambi地区における道路ネットワークと土地利用状況の変化の分析】

 本研究では、Indonesia国Muaro Jambi地区を対象に、道路ネットワークと周辺の土地利用状況の変化との関係の分析をおこないました。時系列的な変化を考慮して幹線道路からの距離と土地利用状況との関係の分析をおこなうことにより、道路ネットワークの整備が周辺の土地利用状況に及ぼす影響を明らかにすることができ、対象地域における道路計画、土地利用計画に向けての有用な知見を得ることができました。

研究テーマ(13)【Afghanistan国Kabul市における横断歩行者の行動分析と交通安全対策の検討】

 本研究では、Afghanistan国Kabul市を対象に、幹線道路を横断する歩行者と、横断歩行者に対する自動車運転者の行動分析をおこない、横断歩道の有無による横断歩行者や自動車運転者の行動の差異の分析をおこないました。これにより、横断歩道を設置することによる効果を分析することが可能となり、対象地域における横断歩行者の交通事故の減少に向けての有用な知見を得ることができました。

研究テーマ(14)【Afghanistan国Kabul市における環境負荷削減のための自動車保有行動の分析】

 本研究では、Afghanistan国Kabul市を対象に、自動車購入時におけるガソリン車とディーゼル車の選択行動の分析をおこない、ディーゼル車に対する課税による選択行動の変化とそれにともなう大気汚染への影響の分析をおこないました。これにより、ディーゼル車に対する課税の効果を分析することが可能となり、対象地域のディーゼル車による大気汚染の削減に向けての有用な知見を得ることができました。

 

2015年度 卒業論文・修士論文 研究テーマ

 

2015年度には、以下のような研究テーマで卒業論文、修士論文の作成をおこないました。

研究テーマ(1)【道路ネットワークと走行距離を考慮した自転車の通行位置と進行方向による交通事故遭遇確率の比較分析】

 車道上への自転車通行空間の整備や自転車道への一方通行規制の導入など、自転車の通行位置や進行方向を規定することの根拠として、歩道上を右側通行する自転車の交通事故発生確率が大きいことが挙げられています。しかしながら、これは個々の交差点における交通事故発生確率であり、自転車利用者にとっての出発地・目的地間の交通事故遭遇確率ではありません。本研究では、出発地・目的地間の交差点通過回数を考慮して、自転車の進行方向を左側通行のみとする整備をおこなった場合と、自転車の両側通行を許容する整備をおこなった場合との交通事故遭遇確率の比較をおこないました。自転車の通行位置と進行方向による出発地・目的地間の交差点通過回数の違いは、対象地域の道路ネットワーク特性とともに出発地・目的地間の走行距離にも依存します。このため、本研究では格子状の道路ネットワークをもつ京都市中心部と、非格子状の道路ネットワークをもつ京都市郊外の洛西ニュータウン付近とを対象として、走行距離帯別の出発地・目的地間の交通事故遭遇確率の算定をおこない、道路ネットワークと走行距離を考慮した自転車の通行位置と進行方向による交通事故遭遇確率の比較分析をおこないました。

研究テーマ(2)【路面標示を用いた交差点のコンパクト化による自動車走行挙動に対する影響の分析】

 交差点面積の大きな大規模交差点は、車両の走行挙動のばらつきが大きくなったり、左折時・右折時の走行速度が大きくなったりして、交通事故の危険性が大きくなります。このため、交差点の隅切り半径を小さくしたり、停止線間距離を小さくしたりすることによって交差点面積を小さくする「コンパクト化」と呼ばれる交通安全対策がなされています。しかしながら、物理的な交差点形状の変更をともなう交差点のコンパクト化には時間と費用が掛かるため、隅切り部分へのゼブラゾーンなどの路面標示やポストコーンの設置など、物理的な交差点形状の変更をともなわない簡易な交差点のコンパクト化がおこなわれることがあります。このような簡易な交差点のコンパクト化にどの程度の効果があるのかがわかれば、安価に多数の交差点のコンパクト化をおこなうことが可能になり、短期間で多数の交差点の交通安全対策を実施することが可能になります。本研究では、滋賀県内の県道における路面標示の異なる3箇所の交差点を対象に、交差点を左折する車両の走行位置と走行速度の計測をおこない、路面標示を用いた交差点のコンパクト化による自動車走行挙動に対する影響の分析をおこないました。

研究テーマ(3)【幹線道路旧道の路側帯拡幅と中央線抹消による自動車走行挙動と歩行者通行環境に関する分析】

 生活道路における交通安全対策の1つとして、路側帯の拡幅と中央線の抹消があります。これは、歩道が設置されていない往復2車線の道路において、中央線を抹消し路側帯を拡幅することによって、自動車の走行速度の抑制と歩行者の通行空間の確保を図るものです。道路幅員の拡大や物理的な歩車道境界の変更をおこなうものではなく、路面標示により道路の横断構成を変更するものであるため、用地買収や大規模な工事を必要とせず短期間で施工することが可能になります。滋賀県内においては往復2車線の幹線道路も多く存在しますが、近年、バイパス等が完成して幹線道路としての機能を必要としなくなった道路、交通量が減少した道路に対して路側帯の拡幅と中央線の抹消が実施されており、その効果が期待されています。本研究では、滋賀県内の幹線道路旧道で実施された路側帯の拡幅と中央線の抹消に着目し、自動車走行挙動と歩行者通行環境の分析をおこなうことにより、その効果と課題について検討をおこないました。

研究テーマ(4)【歴史都市における指定避難所を経由した広域避難場所への効果的な避難経路に関する研究】

 多数の観光客が訪れる歴史都市、観光都市では、観光客はその土地の土地勘がないことから、大規模な地震災害等が発生した場合にも道に迷ってしまい避難経路から逸脱してしまうなど、迅速に避難することができない可能性があります。そのため歴史都市、観光都市の避難計画の検討においては、市民だけでなく観光客の避難も考慮に入れた対策が必要となります。本研究では、京都市上京区、東山区を対象に、これまでおこなってきた広域避難場所を目的地とした避難経路の検討に加え、指定避難所を目的地とした避難経路の検討をおこないました。また、指定避難所から広域避難場所への移動経路についても同様の検討をおこない、指定避難所を経由して広域避難場所に移動する場合の効果的な避難経路と、広域避難場所に直接移動する場合の効果的な避難経路との比較をおこないました。

研究テーマ(5)【歴史都市における個人客と団体客を考慮した観光客の避難計画に関する検討】

 多数の観光客が訪れる歴史都市、観光都市では、観光客はその土地の土地勘がないことから、大規模な地震災害等が発生した場合にも道に迷ってしまい避難経路から逸脱してしまうなど、迅速に避難することができない可能性があります。そのため歴史都市、観光都市の避難計画の検討においては、市民だけでなく観光客の避難も考慮に入れた対策が必要となります。本研究では、京都市上京区、東山区を対象に、これまでおこなってきた広域避難場所を目的地とした避難経路と避難容量の検討に加え、観光バスなどを利用して訪れる団体観光客を想定し、観光スポット周辺の観光バス駐車場を目的地とした避難経路と避難容量の検討をおこないました。これにより、ピーク時の観光客数と避難経路、避難場所の容量との比較にもとづく、避難場所の分担に関する検討をおこないました。

研究テーマ(6)【外国人観光客を対象とした京都市における観光資源としての文化遺産の評価】

 歴史都市の防災計画において文化遺産防災を明確に位置付けるためには、災害時においても文化遺産を守ることに対する市民のコンセンサスが重要になります。そのためには、文化遺産防災の必要性を客観的、定量的に示すことが必要であると考えられます。本研究では、多くの歴史都市が観光都市でもあることから、観光資源としての文化遺産の価値に着目し、旅行費用法を用いて観光資源としての文化遺産の評価をおこないました。これまでの研究では日本国内からの観光客のみを対象としていましたが、本研究では外国人観光客にも着目し、海外から訪れる観光客の旅行費用を算定することによって、京都市中心部に位置する文化遺産を有する観光スポットを対象とした観光資源としての定量的評価をおこないました。

研究テーマ(7)【高架下H型交差点の信号制御における上下線分離方式の導入に関する検討】

 高架道路に並行する道路(側道)の交差点は、高架道路を挟んで上下線が分離された構造(H型交差点)となることから交差点面積が大きくなり、また交差点によって信号制御の方法が異なっていることから、左折車・右折車の走行挙動のばらつきや信号誤認、横断歩行者の信号誤認や信号無視が発生しやすく、交通事故の危険性が大きくなっています。本研究では、複数の信号制御方式が混在した滋賀県大津市内の国道161号における連続したH型交差点を対象として、信号制御方式を変更した場合における交通処理能力の検討をおこないました。これにより、連続したH型交差点における信号制御方式の統一の可能性について検討をおこないました。

研究テーマ(8)【CVMを用いた文化遺産防災政策導入の必要性の評価に関する研究】

 歴史都市の防災計画において文化遺産防災を明確に位置付けるためには、災害時においても文化遺産を守ることに対する市民のコンセンサスが重要になります。そのためには、文化遺産防災の必要性を客観的、定量的に示すことが必要であると考えられます。本研究では、CVM(仮想市場評価法)を用いて、歴史都市における文化遺産防災に対する市民の支払意思額を計測し、これにもとづいて文化遺産防災に対する社会的な便益の推定をおこないます。また、支払意思額について地域比較をおこなうことにより、文化遺産防災に対する市民意識の地域比較や、新聞報道における文化遺産防災に対する着目度との比較をおこないます。(継続中)

研究テーマ(9)【守山市立田町ラウンドアバウトにおける自動車走行挙動の分析】

 滋賀県守山市にある立田町交差点は、守山市郊外に位置する4枝の無信号交差点であり、交通量はそれほど大きくはないものの、主道路、従道路ともに周辺の幹線道路の抜け道として利用されていることから、出合頭事故が多く発生していました。このため、2013年度にラウンドアバウト導入に関する社会実験がおこなわれ、その結果を踏まえて、2015年4月から本格的なラウンドアバウトとしての運用がおこなわれています。本研究では、本格運用開始後のラウンドアバウトにおける自動車走行挙動の分析をおこない、社会実験期間中のラウンドアバウトにおける自動車走行挙動との比較をおこないました。これにより、本格運用開始時に導入されたエプロンの段差や流入部の分離島、横断歩道の設置などによる、自動車走行挙動への影響の分析をおこないました。

 

2014年度 卒業論文・修士論文 研究テーマ

 

2014年度には、以下のような研究テーマで卒業論文、修士論文の作成をおこないました。

研究テーマ(1)【外国人観光客を対象とした京都市における観光資源としての文化遺産の評価】

 歴史都市の防災計画において文化遺産防災を明確に位置付けるためには、災害時においても文化遺産を守ることに対する市民のコンセンサスが重要になります。そのためには、文化遺産防災の必要性を客観的、定量的に示すことが必要であると考えられます。本研究では、多くの歴史都市が観光都市でもあることから、観光資源としての文化遺産の価値に着目し、旅行費用法を用いて観光資源としての文化遺産の評価をおこないました。これまでの研究では日本国内からの観光客のみを対象としていましたが、本研究では外国人観光客にも着目し、海外から訪れる観光客の旅行費用を算定することによって、京都市中心部に位置する文化遺産を有する観光スポットを対象とした観光資源としての定量的評価をおこないました。

研究テーマ(2)【交差点流入部における車両走行挙動の分析と交通安全対策の検討】

 交差点流入部の左折車線や右折車線の流入部においては、車両の錯綜や事故が発生しやすくなっています。とくに、上下線間にゼブラ帯のある道路においては、上流側からゼブラ帯を利用して右折車線に進入しようとする右折車両が多く存在するため、車両による右折車線への進入箇所のばらつきが大きくなり、車両の錯綜や事故が発生しやすくなります。本研究では、京都市内の2箇所の信号交差点を対象に右折車線に進入しようとする車両の観測調査をおこない、道路条件や交通条件による車両走行挙動の違いの分析と、それによる交通安全対策の検討をおこないました。

研究テーマ(3)【歩行者・自転車交通量を考慮した自転車歩行者道における錯綜現象の分析】

 近年の自転車通行環境の整備においては、自転車の車道左側通行を促進するための施策が推進されています。しかしながら、広幅員の自転車歩行者道がすでに設置されている道路や、自動車交通量が大きい道路、自動車走行速度が大きい道路などにおいては、自転車歩行者道における自転車の通行位置の明示や、歩行者・自転車の分離がおこなわれる場合も多くあります。本研究では、両方向から歩行者・自転車が通行する自転車歩行者道を想定し、歩行者・自転車交通量の変化を考慮した、歩行者・自転車のすれ違い、追越しによる錯綜現象の発生回数の分析をおこないました。これにより、歩行者・自転車の分離の有無による錯綜現象の発生回数の比較をおこないました。

研究テーマ(4)【自転車通行空間の流入部・流出部における自転車の通行実態の分析】

 自転車通行環境の整備において自転車道を設置する場合、交差点付近での流入部、流出部では歩道(自転車歩行者道)に接続させる場合、車道に接続させる場合の両者が存在します。また、交差点での自転車横断帯の有無や横断箇所との位置関係により、自転車道の利用のしやすさや自転車・歩行者の通行位置の遵守率も異なってきます。本研究では、名古屋市内の2箇所の自転車通行環境整備モデル地区を対象に、交差点付近における自転車通行空間の流入部、流出部の形状と通行する自転車の走行軌跡、通行位置の遵守率の関係を調査し、自転車通行空間の流入部、流出部の形状が自転車の通行実態に及ぼす影響についての分析をおこないました。

研究テーマ(5)【ラウンドアバウトにおける自動車走行挙動の分析】

 滋賀県守山市にある立田町交差点は、守山市郊外に位置する4枝の無信号交差点であり、交通量はそれほど大きくはないものの、主道路、従道路ともに周辺の幹線道路の抜け道として利用されていることから、出合頭事故が多く発生していました。このため、2013年度にラウンドアバウト導入に関する社会実験がおこなわれ、2種の環道幅員、エプロン幅員によるラウンドアバウトの試験的な導入がおこなわれています。本研究では、社会実験中のラウンドアバウトにおける自動車走行挙動の分析をおこない、2種の環道幅員、エプロン幅員による自動車走行挙動の比較と、危険性の定量的評価をおこないました。とくに、交通量のピーク時間帯とその他の時間帯との比較をおこない、時間帯による自動車走行挙動の比較と、危険性の定量的評価の比較をおこないました。

研究テーマ(6)【草津市民の買い物交通を対象とした交通手段選択行動の分析】

 近年、地球温暖化問題に対する関心が高まっていますが、現状では温室効果ガス排出量の多くを運輸・交通によるものが占めています。運輸・交通における温室効果ガス排出量を削減するためには、自動車交通に依存しないまちづくりが必要ですが、地方都市では多くの人が日常生活に自家用車を利用しており、郊外型ショッピングセンターの増加など、自動車交通を前提とした都市が形成されています。本研究では、大都市郊外の住宅地である滋賀県草津市南草津地区を対象に、地域住民の日常的な買い物行動についてのアンケート調査をおこない、地方都市での買い物行動における交通手段選択行動に関する分析をおこないました。

研究テーマ(7)【交差点のコンパクト化による自動車走行挙動に対する影響の分析】

 交差点面積の大きな大規模交差点は、車両の走行挙動のばらつきが大きくなったり、左折時・右折時の走行速度が大きくなったりして、交通事故の危険性が大きくなります。このため、交差点の隅切り半径を小さくしたり、停止線間距離を小さくしたりすることによって交差点面積を小さくする「コンパクト化」と呼ばれる交通安全対策がなされています。本研究では、近年コンパクト化がなされた滋賀県草津市内の国道1号バイパス・東矢倉南交差点と、コンパクト化前の交差点形状に近い国道1号・草津3丁目交差点を対象として、交差点を左折する車両の走行速度の計測をおこないました。この結果、交差点のコンパクト化によって左折時の走行速度が低下しており、交通安全対策として効果的であることがわかりました。

研究テーマ(8)【駅前H型交差点における横断歩行者の行動分析】

 高架道路に並行する道路(側道)の交差点は、高架道路を挟んで上下線が分離された構造(H型交差点)となることから交差点面積が大きくなり、また交差点によって信号制御の方法が異なっていることから、左折車・右折車の走行挙動のばらつきや信号誤認、横断歩行者の信号誤認や信号無視が発生しやすく、交通事故の危険性が大きくなっています。本研究では、滋賀県大津市内の国道161号・比叡山坂本駅前交差点、比叡山坂本駅北交差点を対象として、横断歩行者の行動分析をおこないました。この結果、近接する交差点の信号現示の影響によって横断歩行者の信号無視が多く発生していることがわかりました。

研究テーマ(9)【金沢市中心部における災害時の避難誘導経路の抽出方法に関する研究】

 多数の観光客が訪れる歴史都市、観光都市では、観光客はその土地の土地勘がないことから、大規模な地震災害等が発生した場合にも道に迷ってしまい避難経路から逸脱してしまうなど、迅速に避難することができない可能性があります。そのため歴史都市、観光都市の避難計画の検討においては、市民だけでなく観光客の避難も考慮に入れた対策が必要となります。本研究では、これまで京都市中心部を対象として検討をおこなってきた避難経路の抽出方法を、異なる都市特性や道路ネットワーク特性をもった歴史都市、観光都市である金沢市中心部に対しても適用し、その応用可能性の検討や課題点の抽出をおこないました。

研究テーマ(10)【奈良市中心部における災害時の避難誘導経路の抽出方法に関する研究】

 多数の観光客が訪れる歴史都市、観光都市では、観光客はその土地の土地勘がないことから、大規模な地震災害等が発生した場合にも道に迷ってしまい避難経路から逸脱してしまうなど、迅速に避難することができない可能性があります。そのため歴史都市、観光都市の避難計画の検討においては、市民だけでなく観光客の避難も考慮に入れた対策が必要となります。本研究では、これまで京都市中心部を対象として検討をおこなってきた避難経路の抽出方法を、異なる都市特性や道路ネットワーク特性をもった歴史都市、観光都市である奈良市中心部に対しても適用し、その応用可能性の検討や課題点の抽出をおこないました。

研究テーマ(11)【テキストマイニングを用いた歴史都市防災に関する研究の傾向分析】

 立命館大学では、21世紀COEプログラム「文化遺産を核とした歴史都市の防災研究拠点」、グローバルCOEプログラム「歴史都市を守る「文化遺産防災学」推進拠点」において、歴史都市や文化遺産の防災に関するさまざまな研究活動をおこなってきました。その成果は、2007年から毎年実施されている「歴史都市防災シンポジウム」にて発表され、「歴史都市防災論文集」の論文・報告としてまとめられるとともに、文化財保護や防災工学にかかわる各種の学会、研究会で学術論文として発表されています。
 本研究では、これまでおこなわれてきた歴史都市や文化遺産の防災に関する学術研究の特徴を把握し、今後の方向性の検討資料とするため、これらを周辺領域である文化財保護の分野や防災工学の分野の学術論文の特徴と比較しました。また、歴史都市や文化遺産の防災に対する社会的着目度と比較するため、代表的なマスメディアである新聞報道の特徴とも比較しました。これらにより、守るべき対象と対応すべき災害との両者の視点から、これまでの研究活動の内容の傾向を明らかにすることができました。これにより、今後の歴史都市や文化遺産の防災に関する研究活動の方向性を検討するための有用な知見を得ることができました。

研究テーマ(12)【4現示制御の交差点に対するムーブメント制御の導入に関する研究】

 交通量の変動が大きい幹線道路の信号交差点において交通渋滞を緩和する方策として、ムーブメント制御の導入が試験的におこなわれています。しかしながら、すべての交差点で効果があるというわけではなく、交差点の道路条件、交通条件によってはかえって交通渋滞が悪化するケースも存在しています。滋賀県内で導入された国道1号、国道8号の交差点では導入前の4現示制御と比較して交通渋滞が悪化したとして導入が中止されましたが、他地域で導入された交差点では効果が認められ、引き続き運用が継続されている箇所もあります。
 本研究では、ムーブメント制御の導入効果が見込まれる交差点の道路条件、交通条件を明らかにすることを目的として、シミュレーションを用いた交通処理能力の検討をおこないました。具体的には、通常の4現示制御、右折分離制御、歩車分離制御、ムーブメント制御の4種の信号制御を比較することにより、4現示制御の交差点に対するムーブメント制御の導入に関して、交通渋滞緩和の視点から制御の導入が有効となる道路条件、交通条件を定量的に分析しました。これにより、交通量の変動の大きい幹線道路交差点に対する交通渋滞緩和対策として、今後の新たな交通信号制御方式の導入の検討に対する有用な知見を得ることができました。

研究テーマ(13)【Indonesia国Yogyakarta市を対象とした自転車通行環境の評価指標の構築】

 自転車通行環境の評価指標にはさまざまな要素が含まれますが、地域によって利用者の意識や自転車の利用状況は異なっており、統一的な自転車通行環境の評価指標を作成することは困難です。本研究では、Indonesia国Yogyakarta市を対象として、現地調査とアンケート調査にもとづき、自転車通行環境の評価に対する影響要因の分析をおこないました。利用者の自転車通行環境に対する評価とさまざまな道路条件、交通条件との関係を定量的に分析することにより、今後の地域特性を考慮した自転車通行環境整備に対する有用な知見を得ることができました。

 

2013年度 卒業論文・修士論文 研究テーマ

 

2013年度には、以下のような研究テーマで卒業論文、修士論文の作成をおこないました。

研究テーマ(1)【歴史都市における観光客に対する大規模災害時の避難誘導に関する検討】

 京都市のような多数の観光客が訪れる歴史都市、観光都市では、観光客はその土地の土地勘がないことから、大規模な地震災害等が発生した場合にも道に迷ってしまい避難経路から逸脱してしまうなど、迅速に避難することができない可能性があります。そのため歴史都市、観光都市の避難計画の検討においては、市民だけでなく観光客の避難も考慮に入れた対策が必要となります。本研究では、京都市東山区の清水寺周辺地区を対象として、観光客や地区住民を対象としたアンケート、ヒアリング調査をおこない、大規模災害時における観光客の適切な避難行動に対して必要と思われる、観光マップなどに記載すべき情報の内容についての検討をおこないました。

研究テーマ(2)【道路ネットワーク特性を考慮した自転車の左側通行規制による交通事故遭遇確率のシミュレーション分析】

 車道上への自転車通行空間の整備や自転車道への一方通行規制の導入など、自転車の通行位置や進行方向を規定することの根拠として、歩道上を右側通行する自転車の交通事故発生確率が大きいことが挙げられています。しかしながら、これは個々の交差点における交通事故発生確率であり、自転車利用者にとっての出発地・目的地間の交通事故遭遇確率ではありません。本研究では、出発地・目的地間の交差点通過回数を考慮して、自転車の進行方向を左側通行のみとする整備をおこなった場合と、自転車の両側通行を許容する整備をおこなった場合との交通事故遭遇確率の比較をおこないました。具体的には、格子状の道路ネットワークをもつ京都市中心部と、非格子状の道路ネットワークをもつ京都市郊外の洛西ニュータウン付近とを対象として、出発地・目的地間の交通事故遭遇確率の算定をおこない、道路ネットワーク特性と、自転車の通行位置と進行方向による交通事故遭遇確率との関係について比較をおこないました。

研究テーマ(3)【阪神・淡路大震災と東日本大震災に関するマスメディア報道の傾向の分析】

 歴史都市の防災計画において文化遺産防災を明確に位置付けるためには、災害時においても文化遺産を守ることに対する市民のコンセンサスが重要になります。そのためには、文化遺産防災の必要性を客観的、定量的に示すことが必要であると考えられます。本研究では、1995年に発生した阪神・淡路大震災と、2011年に発生した東日本大震災に関する新聞報道を対象に、震災発生後における文化遺産の防災や被災に関する新聞報道の時系列的変化の分析をおこないました。これにより、歴史都市防災、文化遺産防災に対する社会的な着目度についての考察をおこないました。

研究テーマ(4)【自転車歩行者道におけるすれ違い・追越し方法による錯綜現象のシミュレーション分析】

 近年の自転車通行環境の整備においては、自転車の車道左側通行を促進するための施策が推進されています。しかしながら、広幅員の自転車歩行者道がすでに設置されている道路や、自動車交通量が大きい道路、自動車走行速度が大きい道路などにおいては、自転車歩行者道における自転車の通行位置の明示や、歩行者・自転車の分離がおこなわれる場合も多くあります。本研究では、両方向から歩行者・自転車が通行する自転車歩行者道を想定し、歩行者・自転車の分離をおこなった場合と分離をおこなわない場合における、歩行者・自転車のすれ違い、追越しによる錯綜現象の発生回数の比較をおこないました。これにより、自転車歩行者道において歩行者・自転車の分離をおこなうことによる効果の定量的な検討をおこないました。

研究テーマ(5)【自転車の車道走行にともなう自動車の走行挙動に対する影響のシミュレーション分析】

 近年の自転車通行環境の整備においては、車道上における自転車レーンの設置や車線内における自転車通行位置の明示など、自転車の車道左側通行を促進するための施策が推進されています。しかしながら、自動車とは走行速度の異なる自転車が車道上を走行することは、当然ながら自動車の走行挙動に影響を及ぼします。本研究では、簡易ドライビングシミュレータ(DS)を用いて、車道上に自転車通行空間を整備した場合における自動車走行挙動への影響の分析をおこないました。自転車通行空間の整備方法や自動車交通量の大小による被験者の運転行動への影響を分析することにより、道路条件、交通条件に適した自転車通行環境の整備方法の検討をおこないました。

研究テーマ(6)【ラウンドアバウト導入予定交差点における自動車走行挙動の分析】

 滋賀県守山市にある立田町交差点は、守山市郊外に位置する4枝の無信号交差点であり、交通量はそれほど大きくはないものの、主道路、従道路ともに周辺の幹線道路の抜け道として利用されていることから、出合頭事故が多く発生しています。このため、2013年度にラウンドアバウト導入に関する社会実験がおこなわれ、2種の環道幅員、エプロン幅員によるラウンドアバウトの試験的な導入がおこなわれています。本研究では、この交差点を対象として、ラウンドアバウト導入前の無信号交差点における自動車走行挙動の分析をおこない、導入前の無信号交差点における危険性の定量的評価をおこないました。とくに、交通量のピーク時間帯とその他の時間帯との比較をおこない、時間帯による自動車走行挙動の比較と、危険性の定量的評価の比較をおこないました。

研究テーマ(7)【歴史都市防災・文化遺産防災に関する学術論文の分類方法に関する検討】

 立命館大学では、21世紀COEプログラム「文化遺産を核とした歴史都市の防災研究拠点」、グローバルCOEプログラム「歴史都市を守る「文化遺産防災学」推進拠点」において、歴史都市や文化遺産の防災に関するさまざまな研究活動をおこなってきました。その成果は、2007年から2012年に実施された「歴史都市防災シンポジウム」にて発表され、「歴史都市防災論文集」の論文・報告としてまとめられてきました。本研究では、これまでおこなってきた歴史都市や文化遺産の防災に関する学術研究の特徴を把握し、今後の方向性の検討資料とするため、「歴史都市防災論文集」に掲載された論文・報告の内容を、客観的な指標によって分類するための方法について検討をおこないました。

研究テーマ(8)【香川県内の交通事故多発地点における自動車走行挙動の分析と交通安全対策の検討】

 香川県においては、人口当たりの交通事故発生件数が多い状態が継続しており、早急な交通安全対策が必要とされています。このような状況には、香川県の道路構造の特性と、ドライバーの運転行動の特性との双方が影響していると考えられます。本研究では、香川県高松市内の県道(観光通り)を対象として、左折時の交通事故が多く発生している交差点の自動車走行挙動の分析をおこない、交通安全対策の検討をおこないました。その結果、広幅員のゼブラ帯が存在することによる二輪車のすり抜けや、交差点面積が大きいことによる左折車の走行速度の増大が、左折時の交通事故の発生要因となっている可能性を示すことができました。

研究テーマ(9)【国道1号・上鈎交差点における交通容量に関する検討】

 滋賀県栗東市にある国道1号・上鈎交差点は、交通量の大きい国道と県道とが交差する交差点であり、交通渋滞が多く発生しています。この交差点では、ムーブメント制御と呼ばれる、交通量の時間的な変動に応じた信号制御が導入されましたが、渋滞緩和効果が得られず、通常の信号制御に戻されてしまいました。ムーブメント制御の導入効果が見込まれる交差点の道路条件、交通条件を明らかにするためには、対象交差点の特性を反映したシミュレーションモデルを用いて、交差点の交通処理能力の検討をおこなう必要があります。本研究では、このような検討をおこなうことを目的として、上鈎交差点における各流入方向の車両の車頭時間や発進遅れを計測し、飽和交通流率の算定をおこないました。

研究テーマ(10)【自転車利用者の経路選択特性を考慮した自転車通行空間ネットワークの構築に関する研究】

 滋賀県草津市南草津地区では、立命館大学びわこ・くさつキャンパスを初めとする多数の教育機関や企業が立地しており、多くの通勤・通学者が自転車を利用しています。しかしながら、地区内の主要道路における自転車通行空間は十分なものではなく、多くの自転車が住宅地内の細街路に流入しているのが現状です。本研究では、南草津地区を対象に、自転車利用者の経路選択特性を考慮した自転車通行環境の整備の影響評価をおこないました。自転車利用者の経路選択特性の分析にもとづき、自転車通行環境の整備にともなう経路選択行動の変化の推計をおこなうことにより、今後の自転車通行環境の整備方法の検討に対する有用な知見を得ることができました。

研究テーマ(11)【歩車分離式信号制御におけるムーブメント制御導入に関する研究】

 交通量の変動が大きい幹線道路の信号交差点において交通渋滞を緩和する方策として、ムーブメント制御の導入が試験的におこなわれています。しかしながら、すべての交差点で効果があるというわけではなく、交差点の道路条件、交通条件によってはかえって交通渋滞が悪化するケースも存在しています。本研究では、幹線道路交差点におけるムーブメント制御の導入に関して、制御の導入が有効となる道路条件、交通条件を、シミュレーションモデルを用いて定量的に分析しました。これにより、交通量の変動の大きい幹線道路交差点に対する交通渋滞緩和対策として、今後の新たな交通信号制御方式の導入の検討に対する有用な知見を得ることができました。

研究テーマ(12)【滋賀県内における自転車通行空間整備による交通手段転換可能性に関する研究】

 近年、都市交通手段としての自転車が見直されてきており、環境負荷の低減のため、自動車から自転車への交通手段転換の促進が期待されています。一般に、都市内においては5km程度以内の距離帯であれば自転車の所要時間がもっとも短いとされており、自転車利用の促進が期待される距離帯であるとされています。しかしながら、これは大都市の都心部を想定した各交通手段のサービス水準にもとづいたものであり、地方都市や郊外地域においては各交通手段のサービス水準が異なることから、有効な距離帯は異なると思われます。また、現実の自転車交通が鉄道などの公共交通機関の端末交通として多く利用されていることを考えると、自転車を端末交通として利用する場合の有効な距離帯を算定し、公共交通機関との連携の促進を図ることも必要であると考えられます。本研究では、滋賀県大津・南部地域を対象として、自転車通行空間の整備を想定した自転車利用の有効な距離帯の検討をおこないました。自転車の所要時間と他の交通手段の所要時間との定量的な比較をおこなうことにより、自転車利用の有効な距離帯を明らかにすることができ、今後の自転車通行環境の整備方法の検討に対する有用な知見を得ることができました。

研究テーマ(13)【Indonesia国Bengkulu市における津波災害に対する避難施設の配置計画に関する検討】

 本研究では、Indonesia国Bengkulu市を対象に、津波災害に対する避難のための道路ネットワークの整備や避難施設の設置に関する検討をおこないました。対象地域では沿岸部にも多数の住民が居住しており、これまでにも津波災害の被害を受けてきていることから、早急な対策が必要とされています。本研究の検討によって、今後の対象地域の防災計画の策定において有用な知見を得ることができました。

 

2012年度 卒業論文・修士論文 研究テーマ

 

2012年度には、以下のような研究テーマで卒業論文、修士論文の作成をおこないました。

研究テーマ(1)【歴史都市における観光客の避難経路の抽出方法に関する検討】

 京都市のような多数の観光客が訪れる歴史都市、観光都市では、観光客はその土地の土地勘がないことから、大規模な地震災害等が発生した場合にも道に迷ってしまい避難経路から逸脱してしまうなど、迅速に避難することができない可能性があります。そのため歴史都市、観光都市の避難計画の検討においては、市民だけでなく観光客の避難も考慮に入れた対策が必要となります。本研究では、京都市東山区を対象に、距離、到達可能率、リンク数といった評価指標を用いて抽出された観光スポットから避難場所までの避難経路について現地調査をおこない、避難経路としての課題点の抽出をおこないます。(継続中)

研究テーマ(2)【歴史都市防災に関する学術論文の分類とその時系列的変化の分析】

 立命館大学では、21世紀COEプログラム「文化遺産を核とした歴史都市の防災研究拠点」、グローバルCOEプログラム「歴史都市を守る「文化遺産防災学」推進拠点」において、歴史都市や文化遺産の防災に関するさまざまな研究活動をおこなってきました。その成果は、2007年から2012年に実施された「歴史都市防災シンポジウム」にて発表され、「歴史都市防災論文集」の論文・報告としてまとめられてきました。本研究では、これまでおこなってきた歴史都市や文化遺産の防災に関する学術研究の特徴を把握し、今後の方向性の検討資料とするため、これらの論文・報告の内容の分類とその時系列的変化の分析をおこないました。

研究テーマ(3)【旅行費用法を用いた観光資源としての文化遺産の評価】

 歴史都市の防災計画において文化遺産防災を明確に位置付けるためには、災害時においても文化遺産を守ることに対する市民のコンセンサスが重要になります。そのためには、文化遺産防災の必要性を客観的、定量的に示すことが必要であると考えられます。本研究では、多くの歴史都市が観光都市でもあることから、観光資源としての文化遺産の価値に着目し、旅行費用法を用いて観光資源としての文化遺産の評価をおこないました。これまでの研究では京都市東山区のみを対象としていましたが、本研究では京都市中心部に位置する文化遺産を有する観光スポットを対象に、観光資源としての定量的評価をおこないました。

研究テーマ(4)【神戸市東灘区・第二工区交差点における交通安全対策の検討】

 交通事故の多くは、交通事故多発地点と呼ばれる特定の地点で集中して発生しています。このような地点では、通行する歩行者、自転車、自動車の挙動分析をおこない、交通事故の発生要因の抽出とそれにもとづく適切な交通安全対策の検討をおこなう必要があります。本研究では、走行車両の錯綜現象が多く発生している多肢交差点である第二工区交差点(神戸市東灘区)を対象として、おもに信号制御の観点から交通安全対策についての検討をおこないました。

研究テーマ(5)【信号交差点における左折車両挙動の簡易ドライビングシミュレータによる再現性の検証】

 交通安全対策の効果や道路案内標識の有効性を検討する道具として、ドライバーの運転行動を分析するためのドライビングシミュレータ(DS)が開発されています。本研究では、市販のゲーム用機器を用いた簡易DSを用いて、信号交差点における左折時の横断者巻込み事故の防止対策の検討に関する適用性の検証をおこないました。具体的には、これまでの研究でおこなってきた簡易DSの走行実験における被験者の走行挙動と、現実の信号交差点における自動車の走行挙動との比較をおこない、簡易DSによる左折車両挙動の再現性の検証をおこないました。

研究テーマ(6)【地域別・災害別にみた文化遺産防災の社会的着目度に関する分析】

 歴史都市の防災計画において文化遺産防災を明確に位置付けるためには、災害時においても文化遺産を守ることに対する市民のコンセンサスが重要になります。そのためには、文化遺産防災の必要性を客観的、定量的に示すことが必要であると考えられます。本研究では、文化遺産の防災や被災に関する新聞報道を対象に、地域別、災害別の特徴の把握をおこない、文化遺産防災に対する社会的な着目度についての考察をおこないました。また、これらと地域別の災害発生状況との比較をおこない、その関連性についての考察をおこないました。

研究テーマ(7)【自転車の左側通行規制による交通事故遭遇確率のシミュレーション分析】

 近年の自転車通行環境の整備においては、車道上に自転車専用通行帯を設置するケースも多く見受けられます。また、自転車道への一方通行規制の導入など、自転車の左側通行を促進する施策もおこなわれています。しかしながら、現状では車道走行が危険と思われる区間も多く存在しており、また左側通行規制をおこなうことで交差点の横断回数が増加することによる交通事故の増加も懸念されます。本研究では、大阪府高槻市の中心部を対象に、交差点類型別の交通事故遭遇確率を設定し、出発地・目的地間の交通事故遭遇確率のシミュレーションをおこなうことにより、自転車の左側通行規制を実施した場合における出発地・目的地間の交通事故遭遇確率の変化を比較しました。これにより、自転車の左側通行規制の有効性の検証や、道路条件、交通条件に適した自転車通行環境の整備方法の検討をおこないました。

研究テーマ(8)【ムーブメント信号制御の導入による渋滞緩和効果に関する研究】

 交通量の変動が大きい幹線道路の信号交差点において交通渋滞を緩和する方策として、ムーブメント制御の導入が試験的におこなわれています。しかしながら、すべての交差点で効果があるというわけではなく、交差点の道路条件、交通条件によってはかえって交通渋滞が悪化するケースも存在しています。本研究では、ムーブメント制御の導入効果が見込まれる交差点の道路条件、交通条件を明らかにすることを目的として、シミュレーションを用いた交通処理能力の検討をおこないました。これにより、左折車線、右折車線などの付加車線長による影響がない場合には、流入交通量の平均、分散の大きさによって渋滞緩和効果が異なり、ムーブメント制御の導入効果が見込まれる交差点には一定の条件があることがわかりました。

研究テーマ(9)【自転車歩行者道における分離工作物と自転車の走行速度・通行位置との関連分析】

 自転車通行環境の整備において、広幅員の歩道(自転車歩行者道)がある箇所においては、何らかの分離工作物を用いて歩行者と自転車の通行位置を区分する施策がおこなわれる事例が多くあります。また、車道との分離においても、何らかの分離工作物が設置される事例が多くあります。しかしながら、高さのある分離工作物を設置することは、有効幅員を減少させることや、細街路との交差点における視距の妨げとなることなど、問題点も指摘されています。本研究では、分離工作物の設置状況の異なる2箇所の自転車歩行者道を対象に、自転車の走行速度と通行位置の調査をおこない、分離工作物の設置状況による自転車の走行速度と通行位置に対する影響の分析をおこないました。

研究テーマ(10)【道路幅員構成の変更による二輪車の走行挙動の変化に関する分析】

 長距離交通と短距離交通とが混在した道路では、大型車、普通車、二輪車などのさまざまな車両が混在して走行しています。このような道路では、渋滞時には路肩を二輪車がすり抜けて走行する一方、非渋滞時には原付などの低速の二輪車を普通車や大型車が追い越して走行しており、これらに起因する多くの交通事故が発生しています。本研究では、近年、路肩幅員の縮小がおこなわれた滋賀県大津市内の国道1号を対象に、二輪車の走行挙動の調査をおこないました。これにより、路肩幅員縮小前の二輪車の走行挙動との比較をおこない、道路幅員構成の変更による二輪車の走行挙動の変化について分析しました。

研究テーマ(11)【生活道路における自動車通過交通の抑制に関する研究】

 滋賀県南部では市街地内を国道1号・国道8号・国道161号といった国土幹線道路が横断しているため、これらの幹線道路と交差する交差点では交通渋滞が多く発生しています。このため、交通渋滞を避けて周辺の住宅地内に進入する通過交通の発生が問題となっています。本研究では、滋賀県草津市の南草津地区を対象に、地域住民を対象としたアンケート調査にもとづき、自動車利用者の経路選択行動の分析をおこないました。またこれにもとづき、生活道路における走行速度抑制や、一方通行規制の導入などによる自動車通過交通の抑制方策に関する検討をおこないました。

研究テーマ(12)【文化遺産防災に対する社会的着目度の時系列的変化とメディア報道の影響】

 歴史都市の防災計画において文化遺産防災を明確に位置付けるためには、災害時においても文化遺産を守ることに対する市民のコンセンサスが重要になります。そのためには、文化遺産防災の必要性を客観的、定量的に示すことが必要であると考えられます。本研究では、地震災害に対する新聞報道を対象に、文化遺産の防災や被災に関する新聞報道の時系列的変化の分析をおこない、文化遺産防災に対する社会的な着目度についての考察をおこないます。また、社会的な着目度や市民の行動の変化に対するマスメディア報道の影響についても調査をおこない、それらに対する考察をおこないます。(継続中)