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以下は、2017年度〜2021年度におこなっていた研究テーマです。もちろん、これからも継続しておこなっていきます。

 

2021年度 卒業論文・修士論文 研究テーマ

 

2021年度には、以下のような研究テーマで卒業論文、修士論文の作成をおこないました。

研究テーマ(1)【災害の時間的フェーズを考慮した歴史都市防災に関する研究論文の分類】

 立命館大学では、2003年度に開始された21世紀COEプログラム「文化遺産を核とした歴史都市の防災研究拠点」、グローバルCOEプログラム「歴史都市を守る「文化遺産防災学」推進拠点」以降、歴史都市防災研究所に所属するさまざまな分野の研究者によって、歴史都市や文化遺産の防災に関するさまざまな研究活動をおこなってきました。しかしながら、歴史都市や文化遺産の防災に関する研究活動に費やすことができる資金や人材などには限りがあり、今後も無限に研究活動の範囲を拡大できるわけではありません。そのため、今後の歴史都市防災に関する研究活動のあり方を考える上では、これまでにどのような研究活動がおこなわれてきているのかを把握し、それにもとづいて今後重点を置くべき研究内容を検討したり、これまでの研究活動で見落とされてきた研究内容がないかを確認したりする必要があります。本研究では、近年の「歴史都市防災論文集」に掲載された論文・報告の分類をおこない、過去の論文・報告の分類との比較をおこなうとともに、災害の「時間的フェーズ」に対応した論文・報告の分類と、その分類方法の検討をおこないました。

研究テーマ(2)【対向車左折時における右折車のギャップアクセプタンス挙動の分析】

 信号交差点において右折をおこなう際、対向車が直進車あるいは左折車であればその車間(ギャップ)を選択して右折をおこなうことになります。本来は対向車の進行を妨げないように右折をおこなう必要がありますが、対向車が左折車の場合、交差点流出先の車線数が1車線の場合であっても左折車が交差点に進入するより前に右折を開始し、対向車線に入ってから左折車の通過を待って右折を完了するといった挙動がみられます。このような挙動は、右折車と対向左折車との錯綜や事故に繋がることに加え、対向左折車にとっては右側から接近してくる右折車に注意が向くことから交差点流出先の横断歩道に注意が向かなくなり、左折車と横断歩行者との事故にも繋がるため、非常に危険であると考えられます。本研究では、信号交差点における右折車のギャップアクセプタンス挙動に着目し、対向車が直進車のみの場合と対向車に左折車が含まれる場合とを比較することによってその差異の分析をおこないました。その結果、ギャップ形成車に左折車が含まれる場合には受容、棄却の判断のばらつきが大きくなること、時間ギャップが小さい場合でもギャップを受容する確率が大きくなることがわかりました。

研究テーマ(3)【都市特性を用いた都市交通手段の時系列変化に関する分析】

 自動車利用の増大による交通渋滞や交通事故、排出ガスによる地球温暖化などの問題から、近年では自動車利用を抑制し、公共交通や自転車の利用を促進させることが求められています。そのためには、都市交通における利用交通手段に影響を及ぼす要因を把握することが必要です。本研究では、全国都市交通特性調査(全国PT調査)による代表交通手段分担率を用いて、1992年、2005年、2015年の3時点のデータを用いた都市交通手段の時系列変化に関する分析をおこないました。具体的には、重回帰分析を用いた都市特性と交通手段分担率の関係の分析と、クラスター分析を用いた交通手段分担率の特性による都市の分類をおこないました。これにより、年少人口率や単身世帯率などが交通手段分担率に影響を及ぼしていること、影響する要因が時点によって変化していることがわかりました。また交通手段分担率の特性によって都市を3グループに分類することにより、各々のグループの特徴や、グループ間を移動する都市が存在していることがわかりました。

研究テーマ(4)【交通事故発生状況に着目した自転車の通行位置と通行方向に関する地域比較】

 車道上への自転車通行空間の整備や自転車道への一方通行規制の導入など、自転車の通行位置や通行方向を規定することの根拠として、歩道上を右側通行する自転車の交通事故発生確率が大きいことが挙げられています。しかしながら、道路上における自転車の通行位置(歩道・車道)や通行方向(左側・右側)に関する詳細な調査結果は少なく、また交通事故の発生状況に関するデータも少ないため、自転車の通行位置や通行方向による交通事故発生確率の差異は明確ではありません。本研究では、自転車の通行位置や通行方向を簡易に調査する方法として、Google Street Viewで撮影された自転車の通行位置や通行方向を計測し、その割合の算定をおこないました。また、計測された自転車の通行位置や通行方向の割合と、都道府県ごとの自転車の利用特性や交通事故発生状況との比較をおこないました。

研究テーマ(5)【札幌市と京都市における交差点の形成経緯と道路構造による交通事故多発状況の比較】

 古くからの生活道路を横断するように新しい幹線道路ができることにより、地域住民がこれまでの生活習慣にしたがって新しい幹線道路を横断することから交通事故が発生しやすくなるといわれています。また、道路形成の時期や順序はこのような地域住民の行動だけではなく、交差点の道路構造にも影響を及ぼしていると考えられます。本研究では、格子状の道路ネットワークをもつ札幌市と京都市を対象に、交差点の形成経緯と道路構造の関係性、道路構造と交通事故多発状況の関係性、交差点の形成経緯と交通事故多発状況の関係性について分析をおこない、道路形成の時期や順序がどのように交通事故発生状況に影響を及ぼしているかについて検討をおこないました。

研究テーマ(6)【「飛び出し坊や」の設置状況の実態調査とドライバーの意識に対する影響の分析】

 「飛び出し坊や」とは、ドライバーに対して子供の飛び出しに対する注意喚起を促すための子供の絵が描かれた看板です。滋賀県内では多数の「飛び出し坊や」が設置されていますが、これらはおもに町内会やPTAなどの地域住民が中心となって、地域内で危険と感じられる箇所を選定して設置しています。このため、地域内でどのような箇所に「飛び出し坊や」が設置されているかを調べることにより、地域住民が日常生活の中でどのような箇所を危険と感じているかを知ることができます。本研究では、大津市内の3小学校区を対象に、学区内に設置されている飛び出し坊やの設置状況について実態調査をおこない、設置箇所の特徴に関する分析をおこなうとともに、これらと学区内における交通事故発生箇所の特徴との比較をおこないました。また、このような子供の飛び出しに対する注意喚起をおこなうことによるドライバーの意識に対する影響について、アンケート調査にもとづき分析をおこないました。

研究テーマ(7)【豊岡市出石地区における災害時の避難経路の抽出方法に関する研究】

 多数の観光客が訪れる歴史都市、観光都市では、観光客はその土地の土地勘がないことから、大規模な地震災害等が発生した場合にも道に迷ってしまい避難経路から逸脱してしまうなど、迅速に避難することができない可能性があります。そのため歴史都市、観光都市の避難計画の検討においては、市民だけでなく観光客の避難も考慮に入れた対策が必要となります。本研究では、これまで京都市、金沢市、奈良市などの都市中心部の道路ネットワークを対象として検討をおこなってきた避難経路の抽出方法を、小規模な歴史地区である豊岡市出石地区の道路ネットワークに対して適用し、その応用可能性の検討や課題点の抽出をおこないました。

研究テーマ(8)【織込み区間における車線変更行動の安全性と交通の遅れ時間に関する研究】

 本研究では、幹線道路の織込み区間を対象に、ドライバーの車線変更行動の安全性とそれにともなう交通の遅れ時間との関係について分析をおこないました。今後の安全、円滑な交通のための織込み区間の計画、設計や、織込み区間を通行するドライバーに対する啓発方法の検討のための有用な知見を得ることができました。

研究テーマ(9)【交通手段選択行動分析に基づく乗合タクシーの利用促進に関する研究】

 本研究では、公共交通としての乗合タクシーの利用促進をおこなうため、乗合タクシーを含めた複数の交通手段を対象に、利用者の交通手段選択行動の分析をおこないました。乗合タクシーのサービス水準や各種の利用促進策が利用者の交通手段選択行動に及ぼす影響について分析をおこなうことにより、今後の地方部における公共交通の維持、利用促進のための方策を検討する上での有用な知見を得ることができました。

研究テーマ(10)【複々線区間を含む鉄道路線におけるホームドア導入に関する費用便益分析】

 本研究では、複々線区間を含む鉄道路線におけるホームドア設置の費用便益分析をおこないました。ホームドア設置による人身事故の削減と列車遅延の減少について複々線区間の特性を考慮した分析をおこなうことにより、今後のホームドア設置の効果評価や、設置すべき駅や路線の優先順位の検討をおこなうための有用な知見を得ることができました。

研究テーマ(11)【交通時間価値の影響を考慮した旅行費用法による文化遺産の評価に関する研究】

 本研究では、京都市の文化遺産を対象に、旅行費用法を用いて観光資源としての評価をおこない、その中でも評価結果に及ぼす影響の大きい交通時間価値の影響について分析をおこないました。観光資源としての文化遺産の価値を客観的に定量化することにより、今後の文化遺産防災に対する客観的、定量的な評価のための有用な知見を得ることができました。

研究テーマ(12)【往復2車線道路における自転車追越挙動を考慮した自転車通行空間の整備効果に関する研究】

 本研究では、往復2車線道路における自転車の車道通行にともなう自動車交通への影響について、追越し時の隔離距離、遅れ時間、追従時間率といった自転車、自動車の双方のサービス水準の視点から、付加的な自転車通行空間の整備効果について分析をおこないました。ナショナルサイクルルートに代表される、郊外部の自転車通行空間整備の効果評価やその優先順位の検討をおこなうための有用な知見を得ることができました。

研究テーマ(13)【Indonesia国Jakarta市における自転車利用者の特性と自転車通行空間の評価】

 本研究では、Indonesia国Jakarta市における新型コロナウィルス感染拡大下における自転車利用行動の変化と自転車利用者の特性、自転車通行空間の評価に関する分析をおこないました。新型コロナウィルス感染拡大下および感染収束後の新たな生活様式に対応した自転車通行空間整備を検討するための有用な知見を得ることができました。

研究テーマ(14)【Indonesia国中小規模都市における都市の人口密度分布の特性分析】

 本研究では、Indonesia国の中小規模都市を対象に、都市の人口密度分布の特性について分析をおこないました。人口が増加する過程における都市の人口集中と人口分布の拡大の様子を数量的に表現することにより、人口増加を続ける開発途上国における今後の都市計画や交通計画を検討するための有用な知見を得ることができました。

 

2020年度 卒業論文・修士論文 研究テーマ

 

2020年度には、以下のような研究テーマで卒業論文、修士論文の作成をおこないました。

研究テーマ(1)【世帯構成を考慮した自動車中心と公共交通中心のライフスタイルによる交通費用の比較分析】

 現在では多くの人が、自動車を使うことを前提としたライフスタイルをとっています。このようなライフスタイルは、非常に便利である反面、自動車の購入費、維持費、また交通事故の危険性なども含めると、多くの個人的、社会的費用がかかります。しかしながら、多くの自動車利用者は、直接的な金銭費用ではない自動車利用の費用については、十分に認識していないのではないかと思われます。本研究では、公共交通の整備状況の異なる3地域として、滋賀県草津市、湖南市、京都府京都市を対象に、世帯構成の異なる家族を対象として、自動車中心のライフスタイル、公共交通中心のライフスタイルを想定し、自動車の購入費、維持費のような自動車保有にかかる費用と、通勤、買い物、通院といった日常の交通行動にかかる一般化費用の算定をおこないました。これにより、自動車中心と公共交通中心のライフスタイルの違いによる、平均的な交通費用の比較分析をおこないました。

研究テーマ(2)【高速道路ICの出口標識における表示地名に関する研究】

 高速道路ICの出口標識には、さまざまな地名が表示されています。高速道路ネットワークの充実により、ICの出口標識に表示される地名の数も増加しています。また、近年の市町村合併により、IC周辺の地名が変化したり、1つの地名が示す市町村の範囲が大きくなったりしており、標識のわかりやすさにも影響を与えていると考えられます。本研究では、東名高速道路を対象に、高速道路ICの出口標識における表示地名について分析をおこないました。

研究テーマ(3)【道路ネットワーク特性を考慮した自転車の通行位置と通行方向による交通事故遭遇確率の比較分析】

 車道上への自転車通行空間の整備や自転車道への一方通行規制の導入など、自転車の通行位置や通行方向を規定することの根拠として、歩道上を右側通行する自転車の交通事故発生確率が大きいことが挙げられています。しかしながら、これは個々の交差点における交通事故発生確率であり、自転車利用者にとっての出発地・目的地間の交通事故遭遇確率ではありません。本研究では、出発地・目的地間の車道横断回数を考慮して、自転車の通行方向を左側のみの一方向通行とする整備をおこなった場合と、道路両側の双方向通行を許容する整備をおこなった場合との交通事故遭遇確率の比較をおこないました。具体的には、地域によって道路ネットワーク特性が異なる大阪府豊中市を対象として、走行距離帯別の出発地・目的地間の交通事故遭遇確率の算定をおこない、道路ネットワーク特性を考慮した自転車の通行位置と通行方向による交通事故遭遇確率の比較分析をおこないました。

研究テーマ(4)【地方自治体における自転車ネットワーク計画の策定目的の比較分析】

 国による「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」の発出や「自転車活用推進計画」の策定にともない、多くの地方自治体で自転車ネットワーク計画や自転車活用推進計画が策定されるようになっています。しかしながら、自転車ネットワーク計画や自転車活用推進計画の策定目的にはさまざまなものがあり、各々の自治体の計画において掲げられた施策は、必ずしも国による自転車活用推進計画に掲げられた施策を網羅しているわけではありません。これは、各々の地域における道路状況や自転車利用状況の特徴は異なり、必ずしも国による自転車活用推進計画が想定したものと同一ではないためと考えられます。本研究では、さまざまな地方自治体の自転車ネットワーク計画や自転車活用推進計画において掲げられた施策の内容を調査し、その比較をおこないました。

研究テーマ(5)【堀川五条交差点における交通容量解析と自転車通行空間整備の検討】

 京都市中心部に位置する五条通には、双方向の自転車道が整備されており、歩行者・自動車と分離された自転車通行空間が確保されていますが、中心部の堀川五条交差点の横断施設は横断歩道橋となっており、自転車が安全に横断できる状況にはなっていません。法規上、車道を左側通行で横断することは可能ですが、交通量が大きく交差点面積が大きい上、いずれの方向も左折車の処理が常時左折可であることから、横断中に左折車と交錯することになってしまいます。このため自転車利用者の多くがこの交差点を避けて他の箇所で堀川通や五条通を横断している現象がみられ、自転車利用者にとっては迂回を強いられる上、道路管理者・交通管理者にとっても整備された自転車道が有効に利用されていない状況になっています。本研究では堀川五条交差点を対象に、現状の信号制御方式(常時左折可)の場合と、他の交差点と同様の信号制御方式(右折専用現示を加えた4現示方式)とした場合の各々について交通容量解析をおこないました。これにより、常時左折可と横断歩道橋を廃止し、歩行者・自転車が横断しやすい交差点とすることが可能か否かの検討をおこないました。

研究テーマ(6)【道路整備の時期と道路構造による交通事故多発状況の比較】

 古くからの生活道路を横断するように新しい幹線道路ができることにより、地域住民がこれまでの生活習慣にしたがって新しい幹線道路を横断することから交通事故が発生しやすくなるといわれています。また、道路形成の時期や順序はこのような地域住民の行動だけではなく、交差点の道路構造にも影響を及ぼしていると考えられます。本研究では、滋賀県と京都府を対象に、交差点の道路形成経緯と道路構造の関係性、道路構造と交通事故多発状況の関係性、道路形成経緯と交通事故多発状況の関係性について分析をおこない、道路形成の時期や順序がどのように交通事故発生状況に影響を及ぼしているかについて検討をおこないました。

研究テーマ(7)【中央線変移区間の交通処理能力と今後の運用方法に関する検討】

 中央線変移とは、時間帯によって方向別の交通需要に差異がある道路に対し、中央線の位置の変更をおこない、交通需要の大きい方向により多くの車線を配分することによって道路空間を効率的に利用する規制です。これにより、たとえば朝は都心方向、夕方は郊外方向に向かう車線数を大きくすることで交通処理能力を大きくし、交通渋滞の緩和、円滑な交通の確保を図ることができます。しかしながら、中央線変移には安全性の面では問題があると考えられます。時間帯によって通行方向が変化するため、標示を見落として逆走してしまい、正しい方向に走行している車両と正面衝突してしまう危険性があるほか、交差点付近の路面標示が複雑となり走行位置がわかりにくくなること、中央分離帯や中央線への車線分離標の設置などができないため沿道施設の出入車両の右折入庫、右折出庫が防止しにくく、沿道施設の出入車両による交通事故も発生しやすくなることなどが挙げられます。本研究では、滋賀県大津市内の滋賀県道558号高島大津線(旧国道161号)で導入されている中央線変移区間を対象に、現状の交通量と交通処理能力との比較をおこない、中央線変移の今後の必要性の有無について検討をおこないました。

研究テーマ(8)【往復4車線道路における自転車通行空間確保のための道路空間再配分の検討】

 京都市内には往復4車線(片側2車線)道路が多くありますが、その中には交差点の右折車線が整備されていない道路や、路上駐車が多く存在する道路もあります。このような道路では、右折車の滞留を避けるため右側の車線が利用されなかったり、路上駐車を避けるため左側の車線が利用されなかったりするため、実質的には1方向あたり1車線分の交通量しか通過していない状況になります。本研究では、京都市内の七条通を対象として、実際の交通量と交差点の交通容量とを比較し、車道幅員や車線数の削減による自転車通行空間の確保の可能性の検討をおこないました。

研究テーマ(9)【H型交差点における信号制御方式と交通処理能力に関する分析】

 高架道路に並行する道路(側道)の交差点は、高架道路を挟んで上下線が分離された構造(H型交差点)となります。このような交差点は、交差点面積が大きく走行挙動のばらつきが発生しやすいこと、高架道路の橋脚などによって対向車の視認性が低下しやすいことから、交通事故の危険性が大きくなります。一方、交通安全対策のため信号制御方式を複雑にすると、各方向の青時間が小さくなることから、交通処理能力が小さくなってしまいます。本研究では、金沢市内の幹線道路におけるH型交差点を対象に、各種の信号制御方式の適用範囲の検討をおこないました。これにより、今後の交通安全対策、交通渋滞対策を検討するための有用な知見を得ることができました。

研究テーマ(10)【タクシー運賃補助制度による高齢者の運転免許返納意思に対する影響分析】

 本研究では、タクシー運賃補助制度による高齢者の運転免許返納意思に対する影響について、アンケート調査にもとづき分析をおこないました。運賃補助制度の水準や、交通費用に関する情報提供による効果の有無の分析をおこなうことにより、今後の高齢者の交通事故防止や、運転免許返納にともなう代替交通手段の検討をおこなうための有用な知見を得ることができました。

研究テーマ(11)【往復2車線道路でのバスの発進時における後続車の譲り行動と交通の遅れ時間に関する分析】

 本研究では、往復2車線道路のバスベイにおけるバスの発進時における後続車の譲り行動に着目し、後続車の譲り行動とバスおよび一般車の所要時間との関係について、エージェントシミュレーションを用いて分析をおこないました。後続車の譲り行動による影響を定量的に評価することにより、往復2車線道路におけるバスの遅延防止対策や交通渋滞対策を検討するための有用な知見を得ることができました。

研究テーマ(12)【Indonesia国Blitar市における生徒の通学に対する自転車利用促進政策の評価】

 本研究では、Indonesia国Blitar市における生徒の通学に対する自転車利用促進政策について、利用者や行政担当者による評価の分析や効果の計測をおこないました。対象となる学校の生徒、保護者、教員に対するアンケート調査や行政担当者に対するヒアリング調査により、利用者や行政担当者による政策の評価や今後の課題点を明らかにすることができ、現地における今後の自転車利用促進政策を検討する上での有用な知見を得ることができました。

 

2019年度 卒業論文・修士論文 研究テーマ

 

2019年度には、以下のような研究テーマで卒業論文、修士論文の作成をおこないました。

研究テーマ(1)【自動車中心と公共交通中心のライフスタイルによる交通費用の比較分析】

 現在では多くの人が、自動車を使うことを前提としたライフスタイルをとっています。このようなライフスタイルは、非常に便利である反面、自動車の購入費、維持費、また交通事故の危険性なども含めると、多くの個人的、社会的費用がかかります。しかしながら、多くの自動車利用者は、直接的な金銭費用ではない自動車利用の費用については、十分に認識していないのではないかと思われます。本研究では、公共交通の整備状況の異なる3地域として、滋賀県草津市、湖南市、京都府京都市を対象に、自動車中心のライフスタイル、公共交通中心のライフスタイルを想定し、自動車の購入費、維持費のような自動車保有にかかる費用と、通勤、買い物、通院といった日常の交通行動にかかる一般化費用の算定をおこないました。これにより、自動車中心と公共交通中心のライフスタイルの違いによる、平均的な交通費用の比較分析をおこないました。

研究テーマ(2)【瀬田東IC出口における自動車走行挙動の分析と交通安全対策の検討】

 滋賀県大津市にある名神高速道路・瀬田東IC出口と京滋バイパス、県道2号が合流する地点は、合流地点から下流側交差点までの距離が小さく、合流した車両と交差点を右左折する車両との間で織込み交通が発生するため、危険な合流挙動がしばしばみられます。本研究では、織込み区間を通行する自動車の走行挙動の分析をおこない、錯綜指標(PTTC)を用いた危険性の定量化と、方向別・車線別交通量と危険性との関係にもとづく交通安全対策の検討をおこないました。

研究テーマ(3)【道路ネットワーク特性を考慮した自転車の通行位置と通行方向による交通事故遭遇確率の比較分析】

 車道上への自転車通行空間の整備や自転車道への一方通行規制の導入など、自転車の通行位置や通行方向を規定することの根拠として、歩道上を右側通行する自転車の交通事故発生確率が大きいことが挙げられています。しかしながら、これは個々の交差点における交通事故発生確率であり、自転車利用者にとっての出発地・目的地間の交通事故遭遇確率ではありません。本研究では、出発地・目的地間の車道横断回数を考慮して、自転車の通行方向を左側のみの一方向通行とする整備をおこなった場合と、道路両側の双方向通行を許容する整備をおこなった場合との交通事故遭遇確率の比較をおこないました。具体的には、道路ネットワーク特性が異なる京都市中心部、洛西ニュータウン付近、大阪府枚方市の3地域を対象として、走行距離帯別の出発地・目的地間の交通事故遭遇確率の算定をおこない、道路ネットワーク特性を考慮した自転車の通行位置と通行方向による交通事故遭遇確率の比較分析をおこないました。

研究テーマ(4)【京葉線におけるホームドア導入に関する費用便益分析】

 鉄道路線におけるホームドアの設置は、人身事故の防止やそれにともなう列車遅延の防止などに大きな効果がありますが、一方で必要となるコストも大きく、導入が進みにくい原因の1つとなっています。適切な導入の優先順位を考えるためには、ホームドアの設置による便益を定量的に推定する必要があると考えられます。本研究では、首都圏の通勤路線の1つであるJR東日本・京葉線を対象として、ホームドアの設置による便益と費用を推定し、費用便益分析をおこないました。

研究テーマ(5)【エスカレータにおける利用方法による利用者通過時間の比較分析】

 多くの地域では、急ぐ人のためにエスカレータの片側を空けて利用する習慣が存在します。しかしながら、混雑時にもこのような利用がなされると、急ぐ人がほとんどいないにもかかわらず片側を空けて利用するため、実質的にはエスカレータが1列でしか利用されないことになり、非効率になってしまいます。本研究では、エージェントシミュレーションを用いてエスカレータの利用方法、利用者数と通過時間との関係を分析し、エスカレータを効率的に利用するための利用ルールの検討をおこないました。

研究テーマ(6)【CVMを用いた京都市の文化遺産の防災対策に対する支払意思額に関する研究】

 歴史都市の防災計画において文化遺産防災を明確に位置付けるためには、災害時においても文化遺産を守ることに対する市民のコンセンサスが重要になります。そのためには、文化遺産防災の必要性を客観的、定量的に示すことが必要であると考えられます。本研究では、京都市内の文化遺産を対象として、CVM(仮想市場評価法)を用いた文化遺産の防災対策に対する市民の支払意思額の計測をおこない、これにもとづいて文化遺産防災に対する社会的な便益の推定をおこないました。また、CVMには支払意思額に関する質問の方法や回答者に対する情報提示内容によって結果が異なるという問題点が指摘されていることから、支払意思額の質問をする際に3種の異なる情報を回答者に提示し、それらが支払意思額に及ぼす影響についても比較をおこないました。

研究テーマ(7)【高速道路のジャンクションにおける案内標識の表示地名に関する研究】

 高速道路のジャンクションに設置された案内標識には、さまざまな地名が表示されています。高速道路ネットワークの充実により、ジャンクションの数も増加し、案内標識に表示される地名の数も増加しています。本研究では、並行する都市間高速道路を接続するジャンクションの案内標識に表示されている地名について、表示地名の連続性、誘導性といった視点から分析をおこないました。

研究テーマ(8)【大規模小売店舗における必要駐車台数に関する実態分析】

 大規模小売店舗の立地に当たっては、大規模小売店舗立地法にもとづき周辺地域の生活環境への配慮が必要になります。この中には、周辺交通への影響を緩和するための駐車台数の確保が含まれていますが、経済産業省による「大規模小売店舗を設置する者が配慮すべき事項に関する指針」では簡易な算定式が示されており、これにもとづいて駐車台数を設定する店舗が多くあります。しかしながら、地域の状況によっては過大な駐車台数となっている場合も見受けられ、開店後に駐車台数を減少させる事例もみられます。本研究では、都市化の程度の異なる複数の都道府県を対象として、大規模小売店舗における駐車場整備台数の実態と、経済産業省による指針で必要とされる駐車台数との比較をおこない、指針で示されている算定式の改善案の検討をおこないました。

研究テーマ(9)【大都市部・地方都市部・郊外部における自動車保有行動の比較分析】

 現在、地方都市やその郊外においては自動車が大量に普及し、「一家に1台」から「一人に1台」という時代になってきています。また、地域によっては郊外型店舗の増加や中心市街地の衰退など、街そのものが自動車の普及を前提とした形態になってきています。本研究では、都市化の程度の異なる3地域として、滋賀県草津市、湖南市、京都府京都市を対象に、世帯の自動車保有行動の分析をおこないました。これにより、地域によって異なる自動車保有行動に及ぼす要因の比較分析をおこないました。

研究テーマ(10)【高速道路ICの出口標識における表示地名に関する研究】

 高速道路ICの出口標識には、さまざまな地名が表示されています。高速道路ネットワークの充実により、ICの出口標識に表示される地名の数も増加しています。また、近年の市町村合併により、IC周辺の地名が変化したり、1つの地名が示す市町村の範囲が大きくなったりしており、標識のわかりやすさにも影響を与えていると考えられます。本研究では、名神高速道路を対象に、高速道路ICの出口標識における表示地名について分析をおこないました。

研究テーマ(11)【消費者余剰の推定による観光資源としての文化遺産の評価】

 歴史都市の防災計画において文化遺産防災を明確に位置付けるためには、災害時においても文化遺産を守ることに対する市民のコンセンサスが重要になります。そのためには、文化遺産防災の必要性を客観的、定量的に示すことが必要であると考えられます。本研究では、多くの歴史都市が観光都市でもあることから、観光資源としての文化遺産の価値に着目し、旅行費用法を用いて観光資源としての文化遺産の評価をおこないました。これまでの研究では観光客の一般化旅行費用の総額を推定していましたが、本研究では観光客の需要曲線を推定することにより、消費者余剰の推定をおこない、一般化旅行費用と消費者余剰の両者をあわせた観光資源としての文化遺産の評価をおこないました。

研究テーマ(12)【大津市瀬田北小学校区・瀬田東小学校区における「飛び出し坊や」の設置状況に関する実態調査】

 「飛び出し坊や」とは、ドライバーに対して子供の飛び出しに対する注意喚起を促すための子供の絵が描かれた看板です。滋賀県内では多数の「飛び出し坊や」が設置されていますが、これらはおもに町内会やPTAなどの地域住民が中心となって、地域内で危険と感じられる箇所を選定して設置しています。このため、地域内でどのような箇所に「飛び出し坊や」が設置されているかを調べることにより、地域住民が日常生活の中でどのような箇所を危険と感じているかを知ることができます。本研究では、滋賀県大津市の瀬田北小学校区、瀬田東小学校区内に設置されている「飛び出し坊や」について実態調査をおこない、「飛び出し坊や」の設置箇所と地域の道路状況、交通状況の特徴との比較をおこないました。

研究テーマ(13)【追従時間率を考慮した往復2車線道路における付加自転車通行空間の設置水準に関する研究】

 近年、自転車の観光利用が注目されています。滋賀県では自転車で琵琶湖を1周する「ビワイチ」による観光振興をおこなっていますが、琵琶湖を1周する湖岸道路の多くは往復2車線道路であり、県内の幹線道路として機能しているため自動車交通量も大きく、安全な自転車通行環境であるとはいえません。近年、路肩拡幅による自転車通行空間が部分的に設置されていますが、その設置区間長や設置間隔と、追い越しが可能になることによる自転車・自動車のサービス水準との関係は明確ではありません。本研究では、往復2車線道路におけるサービス水準の評価指標の1つである追従時間率を考慮し、エージェントシミュレーションを用いて自転車通行空間の設置区間長や設置間隔と、自転車・自動車のサービス水準との関係について分析をおこないました。

研究テーマ(14)【Indonesia国Kendal県におけるパーク・アンド・ライド施設の現状と利用者の選択行動の分析】

 本研究では、Indonesia国Kendal県におけるパーク・アンド・ライド施設の現状と利用者の選択行動の分析をおこないました。現地ではさまざまな私設のパーク・アンド・ライド施設が立地していますが、現地調査と利用者に対するアンケート調査をもとに、立地条件や施設内容と利用者の選択行動との関係を明らかにすることができました。これにより、今後のパーク・アンド・ライド施設の整備計画を検討する上での有用な知見を得ることができました。

研究テーマ(15)【Indonesia国Jakarta都市圏における公共交通の整備と開発計画に関する検討】

 本研究では、Indonesia国Jakarta都市圏を対象に、公共交通の整備とそれにあわせた開発計画(TOD:Transit Oriented Development)にともなう住民の交通手段選択行動、居住地選択行動の分析をおこない、開発計画に対する提案をおこないました。仮想的な交通手段や居住地のサービス水準に応じた交通手段選択行動、居住地選択行動の分析をおこなうことにより、現地における今後の公共交通計画、都市開発計画のための有用な知見を得ることができました。

 

2018年度 卒業論文・修士論文 研究テーマ

 

2018年度には、以下のような研究テーマで卒業論文、修士論文の作成をおこないました。

研究テーマ(1)【H型交差点における信号制御方式と交通処理能力に関する分析】

 高架道路に並行する道路(側道)の交差点は、高架道路を挟んで上下線が分離された構造(H型交差点)となります。このような交差点は、交差点面積が大きく走行挙動のばらつきが発生しやすいこと、高架道路の橋脚などによって対向車の視認性が低下しやすいことから、交通事故の危険性が大きくなります。一方、交通安全対策のため信号制御方式を複雑にすると、各方向の青時間が小さくなることから、交通処理能力が小さくなってしまいます。本研究では、代表的なH型交差点を対象として信号制御方式の違いによる交通処理能力の比較をおこない、方向別の交通量と導入可能な信号制御方式との関係について分析をおこないました。

研究テーマ(2)【往復2車線道路における車道通行の自転車に対する自動車の追越し行動の分析】

 地方部においては、幹線道路においても路肩幅員が小さい往復2車線道路が多く存在しています。そのような道路で自転車の車道通行が増加した場合、都市部での往復4車線以上の道路とは異なり、自動車は対向車線にはみ出して自転車を追い越すことになります。このため、交通量が大きい道路においては自動車による自転車の追越しが困難となり、自転車との間隔を十分に空けない危険な追越し行動が発生したり、幹線道路として必要となる自動車の交通容量に影響を及ぼしたりする可能性があります。本研究では、往復2車線道路において自転車が車道通行をおこなった場合の自動車による自転車の追越し行動に着目し、追越し時の横断方向の車両間隔、自動車の走行速度、対向車線へのはみ出しの有無などを計測することにより、往復2車線道路における自転車の車道通行による自動車交通への影響の分析をおこないました。

研究テーマ(3)【交差点の歩行者・自転車の視認性による左折時の自動車走行挙動の比較分析】

 横断歩行者や自転車の交通事故を防止する上で、交差点付近における見通しの確保は重要ですが、実際にはさまざまな構造物や街路樹などの存在によって見通しが不足している交差点が存在しています。本研究では、左折車からの歩行者・自転車の視認性が異なる2箇所の交差点を対象に、信号切り替わり時における見切り発進(フライング)の発生状況や、横断歩道付近における歩行者・自転車と自動車との錯綜現象の発生状況の比較をおこないました。これにより、交差点付近における見通しの不足による危険性の把握をおこないました。

研究テーマ(4)【鉄道駅改良工事後におけるホーム上旅客流動の推定】

 JR高槻駅では、近年、駅構内の改良工事がおこなわれ、ホームの新設、昇降式ホーム柵の設置、乗換通路や改札口の新設などがおこなわれました。このため、駅構内での乗降客、乗換え客の移動が大きく変化しています。本研究では、改良工事前後の高槻駅における旅客流動調査の結果をもとに、改良工事後におけるホーム上旅客流動の推定をおこないました。また、ミクロシミュレーションを用いてホーム上における混雑状況の推定をおこないました。

研究テーマ(5)【往復4車線道路における自転車通行空間確保のための道路空間再配分の検討】

 京都市内には往復4車線(片側2車線)道路が多くありますが、その中には交差点の右折車線が整備されていない道路や、路上駐車が多く存在する道路もあります。このような道路では、右折車の滞留を避けるため右側の車線が利用されなかったり、路上駐車を避けるため左側の車線が利用されなかったりするため、実質的には1方向あたり1車線分の交通量しか通過していない状況になります。本研究では、京都市内の東大路通を対象として、実際の交通量と交差点の交通容量とを比較し、車道幅員や車線数の削減による自転車通行空間の確保の可能性の検討をおこないました。

研究テーマ(6)【浜大津駅前交差点における交差点内合流時の自動車走行挙動の分析】

 滋賀県大津市にある浜大津駅前交差点は、交差点内で車線数が減少する形状となっており、かつバスターミナルからの合流や路面電車の軌道敷の合流もあり、複雑な形状となっています。このため交差点内では危険な合流挙動がしばしばみられます。本研究では、浜大津駅前交差点を通過する自動車の走行挙動の分析をおこない、合流の順序や錯綜指標(TTC)を用いた危険性の定量化の検討や、交通安全対策の検討をおこないました。

研究テーマ(7)【CVMを用いた金沢市の文化遺産の防災対策に対する支払意思額に関する研究】

 歴史都市の防災計画において文化遺産防災を明確に位置付けるためには、災害時においても文化遺産を守ることに対する市民のコンセンサスが重要になります。そのためには、文化遺産防災の必要性を客観的、定量的に示すことが必要であると考えられます。本研究では、金沢市内の文化遺産を対象として、CVM(仮想市場評価法)を用いた文化遺産の防災対策に対する市民の支払意思額の計測をおこない、これにもとづいて文化遺産防災に対する社会的な便益の推定をおこないました。また、CVMには支払意思額に関する質問の方法や回答者に対する情報提示内容によって結果が異なるという問題点が指摘されていることから、支払意思額の質問をする際に3種の異なる情報を回答者に提示し、それらが支払意思額に及ぼす影響についても比較をおこないました。

研究テーマ(8)【発生件数の変動を考慮した交通死亡事故多発警報の発令基準に関する分析】

 交通死亡事故多発警報とは、一定期間内に死亡事故発生件数や死者数などが一定水準以上となった場合に、都道府県や警察本部などが警報を発令し、注意を呼び掛けるものです。発令基準には一定期間内の死亡事故発生件数を用いているもの、死者数を用いているもの、その他の基準を用いているものなど、さまざまなものが存在し、それに応じて制度の名称もさまざまなものがあります。本研究では、適切な発令基準の設定方法を考える一助とすることを目的として、確率現象として算定し得る警報の発令回数の期待値と、実際の警報の発令回数の実績値との比較をおこないました。とくに、交通事故発生件数には曜日変動や季節変動が存在することから、これらを考慮した警報の発令回数の期待値を算定し、実際の警報の発令回数の実績値との比較をおこないました。

研究テーマ(9)【旅行費用法を用いた京都市民の視点からみた観光資源としての文化遺産の評価】

 歴史都市の防災計画において文化遺産防災を明確に位置付けるためには、災害時においても文化遺産を守ることに対する市民のコンセンサスが重要になります。そのためには、文化遺産防災の必要性を客観的、定量的に示すことが必要であると考えられます。本研究では、多くの歴史都市が観光都市でもあることから、観光資源としての文化遺産の価値に着目し、旅行費用法を用いて観光資源としての文化遺産の評価をおこないました。これまでの研究では京都市を訪れる国内外からの観光客の行動に着目していましたが、本研究では逆に、京都市民が他の地域を観光客として訪れる際の行動に着目し、京都市民の視点からみた観光資源としての文化遺産の評価をおこないました。

研究テーマ(10)【Indonesia国Bekasi-Jakarta間の通勤交通における交通手段選択行動の分析】

 本研究では、Indonesia国におけるBekasi-Jakarta間の通勤交通を対象として、自家用車、BRT(Transjakarta)、鉄道の交通手段選択行動の分析をおこないました。利用者に対するアンケート調査をもとに、仮想的なBRTのサービス水準の変化に対する利用者の行動変化の可能性について分析をおこなうことにより、現地における今後の公共交通計画のための有用な知見を得ることができました。

 

2017年度 卒業論文・修士論文 研究テーマ

 

2017年度には、以下のような研究テーマで卒業論文、修士論文の作成をおこないました。(研究室は安隆浩特任助教との共同運営です。)

研究テーマ(1)【鉄道駅構内における利用客の動的OD推定】

 JR高槻駅では、近年、駅構内の改良工事がおこなわれ、ホームの新設、昇降式ホーム柵の設置、乗換通路や改札口の新設などがおこなわれました。このため、駅構内での乗降客、乗換え客の移動が大きく変化しています。本研究では、改良工事前後の高槻駅における旅客流動調査の結果をもとに、駅構内における利用客の動的OD推定(出発地・目的地間の交通量の推定)をおこないました。また、ミクロシミュレーションを用いてホーム上における混雑状況の推定をおこないました。(安先生担当テーマ)

研究テーマ(2)【地方自治体における自転車通行空間の整備形態の比較分析】

 国土交通省・警察庁による「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」の作成にともない、多くの自治体で自転車ネットワーク計画が作成されるようになっています。しかしながら、自転車通行空間の整備形態にはさまざまなものがあり、各々の自治体における整備形態は必ずしも国土交通省・警察庁によるガイドラインと同一ではありません。これは、各々の地域における道路状況や自転車利用状況の特徴は異なり、必ずしも国土交通省・警察庁によるガイドラインが想定したものと同一ではないためと考えられます。本研究では、さまざまな自治体の自転車ネットワーク計画における自転車通行空間の整備形態を調査し、その比較をおこないました。

研究テーマ(3)【商業施設の駐車場出入口における課題点の抽出】

 商業施設の駐車場出入口には、商業施設の存在や駐車場出入口の存在を示す看板が設置されています。これらは利用者に対する案内ではありますが、設置状況によっては駐車場に出入りする車両の見通しを妨げるものとなっており、駐車場出入口における交通事故の発生要因にもなり得ます。本研究では、大阪府吹田市の幹線道路沿いに立地する商業施設を対象として、駐車場出入口における車両の見通し距離の調査をおこない、商業施設の立地状況や看板の設置状況による見通し距離への影響の比較をおこないました。

研究テーマ(4)【大規模小売店舗における駐車場整備台数の実態調査】

 大規模小売店舗の立地に当たっては、大規模小売店舗立地法にもとづき周辺地域の生活環境への配慮が必要になります。この中には、周辺交通への影響を緩和するための駐車台数の確保が含まれていますが、経済産業省による「大規模小売店舗を設置する者が配慮すべき事項に関する指針」では簡易な算定式が示されており、これにもとづいて駐車台数を設定する店舗が多くあります。しかしながら、地域の状況によっては過大な駐車台数となっている場合も見受けられ、開店後に駐車台数を減少させる事例もみられます。本研究では、宮城県、奈良県、広島県を対象に、大規模小売店舗における駐車場整備台数の実態と、経済産業省による指針で必要とされる駐車台数との比較をおこないました。

研究テーマ(5)【H型交差点のコンパクト化の有無による自動車走行挙動の比較分析】

 高架道路に並行する道路(側道)の交差点は、高架道路を挟んで上下線が分離された構造(H型交差点)となることから交差点面積が大きくなり、また交差点によって信号制御の方法が異なっていることから、左折車・右折車の走行挙動のばらつきや信号誤認、横断歩行者の信号誤認や信号無視が発生しやすく、交通事故の危険性が大きくなっています。本研究では、交差点の隅切り半径を小さくしたり、停止線間距離を小さくしたりする「コンパクト化」と呼ばれる交通安全対策が実施されたH型交差点を対象として、交差点を通過する左折車・右折車の走行速度の計測をおこない、コンパクト化の有無による自動車走行挙動の比較をおこないました。

研究テーマ(6)【Google Street Viewを用いた自転車の通行位置と通行方向に関する実態調査】

 車道上への自転車通行空間の整備や自転車道への一方通行規制の導入など、自転車の通行位置や通行方向を規定することの根拠として、歩道上を右側通行する自転車の交通事故発生確率が大きいことが挙げられています。しかしながら、道路上における自転車の通行位置(歩道・車道)や通行方向(左側・右側)に関する詳細な調査結果は少なく、また交通事故の発生状況に関するデータも少ないため、自転車の通行位置や通行方向による交通事故発生確率の差異は明確ではありません。本研究では、自転車の通行位置や通行方向を簡易に調査する方法として、Google Street Viewで撮影された自転車の通行位置や通行方向を計測し、その割合の算定をおこないました。また、これをもとに、自転車の通行位置や通行方向による交通事故発生確率の推計をおこないました。

研究テーマ(7)【高齢者交通死亡事故多発警報の発令基準と発令状況に関する分析】

 交通死亡事故多発警報とは、一定期間内に死亡事故発生件数や死者数などが一定水準以上となった場合に、都道府県や警察本部などが警報を発令し、注意を呼び掛けるものです。発令基準には一定期間内の死亡事故発生件数を用いているもの、死者数を用いているもの、その他の基準を用いているものなど、さまざまなものが存在し、それに応じて制度の名称もさまざまなものがあります。本研究では、高齢者を対象とした高齢者交通死亡事故多発警報に着目し、適切な発令基準の設定方法を考える一助とすることを目的として、注意喚起のための警報の発令頻度という視点から、その発令基準と発令状況について分析をおこないました。具体的には、確率現象として算定し得る警報の発令回数の期待値と、実際の警報の発令回数の実績値との比較をおこないました。

研究テーマ(8)【道路ネットワーク特性と走行距離を考慮した自転車の通行位置と通行方向による交通事故遭遇確率の比較分析】

 車道上への自転車通行空間の整備や自転車道への一方通行規制の導入など、自転車の通行位置や通行方向を規定することの根拠として、歩道上を右側通行する自転車の交通事故発生確率が大きいことが挙げられています。しかしながら、これは個々の交差点における交通事故発生確率であり、自転車利用者にとっての出発地・目的地間の交通事故遭遇確率ではありません。本研究では、出発地・目的地間の車道横断回数を考慮して、自転車の通行方向を左側のみの一方向通行とする整備をおこなった場合と、道路両側の双方向通行を許容する整備をおこなった場合との交通事故遭遇確率の比較をおこないました。具体的には、格子状の道路ネットワークをもつ京都市中心部と、非格子状の道路ネットワークをもつ京都市郊外の洛西ニュータウン付近とを対象として、走行距離帯別の出発地・目的地間の交通事故遭遇確率の算定をおこない、道路ネットワーク特性と走行距離を考慮した自転車の通行位置と通行方向による交通事故遭遇確率の比較分析をおこないました。

研究テーマ(9)【Afghanistan国Kabul市における公共交通計画のための交通需要予測】

 本研究では、Afghanistan国Kabul市を対象に、都心への通勤交通の増大に対応する公共交通計画のための交通需要予測をおこないました。具体的には、現地におけるアンケート調査と交通量調査の結果をもとに、Kabul市北西部と都心との間における発生交通量の予測と、仮想的な公共交通を導入した場合における交通手段分担量の予測をおこないました。これにより、現地における今後の公共交通計画のための有用な知見を得ることができました。