STORY #02

アイデアが浮かんだら
止まらない。
あふれる情熱で、
どんなモノも作り出す。

渡邊悠希

1回生からAIOLに通い、さまざまなモノづくりに取り組んできた渡邊 悠希さん。アクセサリーやキーホルダーからロボットの制御基板、入室管理システムや動画閲覧システムまで、AIOLの機械や道具、材料をフル活用し、浮かんだアイデアを次々カタチにしています。

機械や材料が揃っているから
「こんなものがあればいいな」をすぐ作れる

「『こんなものがあればいいな』『こうすれば問題が解決するな』。アイデアが浮かんだら、もう止まりません。時間を忘れて没頭してしまいます」。そう語る渡邊悠希さんは、1回生の時からAIOLに通い詰め、さまざまなモノを作ってきました。

まず熱心に作っているのが、蝶や葉っぱの形をしたアクセサリーやキーホルダーです。AIOLの学生スタッフとしても活動している渡邊さん。「女子学生にもAIOLを利用してほしい。来た人に興味を持ってもらえるような可愛いお土産を渡せたら」と考え、作り始めました。

羽の精緻な模様や細かい葉脈に沿ってカッティングを施した美しいデザインを自ら描いてCADに取り込み、レーザー加工機を使って、木の端材を粉砕して固めたMDFという板材から切り出して作り上げました。

その可愛らしい作品をAIOLに置いたところ、瞬く間に大人気に。大学見学に訪れた高校生たちにAIOLを紹介した時には、数十個がなくなりました。

「AIOLには機械や道具、材料が揃っていて、思いついたものをすぐ作れます。授業や課外活動だけでなく、自分の趣味や楽しみでも利用できるのが嬉しい。これを活用しないなんて、もったいないと思います」と語ります。

電子回路作りとプログラミング
ライントレースロボットの
「頭脳」作りに熱中

また1回生の時にロボット技術研究会に入り、ロボット製作にも熱中しています。研究会では「ライントレースプロジェクト」に所属。地面に引かれたラインに沿って自動走行するロボットを製作するプロジェクトで、とりわけロボットを制御するための電子回路やプログラムが重要になります。渡邊さんが惹きつけられたのが、この電子回路作りとプログラミングでした。

電子回路を設計し、それをもとにプリント基板にマイコンや電源、抵抗器など微細な電子部品を一つひとつ取り付けていく作業。「各部品の配置によってノイズが発生したり、うまく動かなかったりするので、回路設計には頭を悩ませるところです」

最初は基板を触るのも初めてで、何も知らないところからのスタートだったという渡邊さん。わからないことがあるたびに先輩に教えてもらったり、自ら部品メーカーが発行している資料やさまざまなWEBサイトを調べ、独学で知識を増やしてきました。「『こういうものを作りたい』と思いついたら、それを実現するために自分で情報収集し、一つひとつ回路設計やプログラムの方法を身につけてきました。勉強だとしんどいことも、目的があると苦になりません」と言います。

1回生の時、最初に作った制御基板は、シンプルな回路で機能も限られたものでしたが、最新の基板は、数センチ四方の中に目を見張るほど複雑に回路が張り巡らされ、機能も飛躍的に向上しました。2回生からは基板づくりに加えて、プログラミングも担当。各種ロボットの「頭脳」作りを任されてきました。

思い出に残っているのは、4回生の秋に出場した「全日本学生マイクロマウス大会」。「ライントレースプロジェクト」のメンバーは、毎年、ライントレースロボットがゴールまで自動走行する速さを競う種目に出場しています。「制御基板やプログラムによって、走りの正確性やスピードは大きく変わります。この年、1回生で初出場した時と同じコースを走行し、ゴールタイムを2分の1~3分の1に短縮できたことが、すごく嬉しかったです」と渡邊さん。それに加えて、最新ロボットには新たにディスプレイを搭載することも試みました。「競技には関係ないけれど、ディスプレイに文字や画像を表示できたら、おもしろいと思って」と、モノづくりへの探究心は尽きません。

AIOLを活用して身につけた知識
を糧に
ヒューマノイドロボット
の研究に打ち込む

「モノづくりを通して課題に感じていることを解決するのが楽しい」と渡邊さん。課外活動や授業にこだわらず、ユニークなモノを次々と創り出してきました。その一つが、学生の入退出を学生証で管理する入退室システムです。

「新型コロナウイルス感染拡大の影響で、学生が研究室を利用する際には、誰がいつ、どの部屋に入ったかといった履歴を記録するようになりました。私の所属する研究室では、学生がExcelに書き込む仕組みで、常々『いちいち入力するのは面倒くさいな。何とかできないかな』と思っていました。そこで先生に許可を得て、簡単に学生の入退室を管理できるシステムを作ることにしました」

渡邊さんは、センサーに学生証をかざすと、そのデータがWi-Fiでインターネット上の管理ソフトに自動で集約されるシステムを考案。ICカードリーダーや制御基板を組み合わせ、学生証の読み取りデバイスと制御プログラムを作りました。これまでライントレースロボット製作で蓄積してきた制御基板やプログラミングの知識も大いに役立ちました。完成したシステムは思った以上に好評で、他の研究室からも依頼を受け、追加製作したといいます。

またAIOLでも、閲覧用モニターで活用できる動画の検索・閲覧システムを製作しました。AIOLでは、利用者が自由に見られる閲覧用モニターで、ロボティクス学科の学生が授業で取り組んだロボット製作のプロセスや作品の動画を紹介しています。「閲覧しにくいな」と思った渡邊さんは、自らシステム製作を申し出ました。

入退室管理システム(左上)、動画検索・閲覧システム(右上)、NHK学生ロボコン出場の制御機体(左下)、これまで作ってきたさまざまな電子回路(右下)

「タッチ一つで簡単にさまざまなカテゴリーに並べ替えられるようにしたい。できるだけ一瞬でストレスなく切り替えられるようなデータの構造を作るのに苦心しました」と渡邊さん。どうしたら課題を解決できるか。考え出したら時間を忘れて熱中し、気が付くと朝になっているということも珍しくありません。「初めてAIOLに来た時にはロボットのこともプログラミングもまったく知りませんでした。さまざまなモノを作る中で、どうすれば課題を解決できるかを考える力や必要な情報を収集する力が身につきました」

そうした経験を糧に、現在はヒューマノイドロボットの研究に取り組んでいます。「2本のアームに油圧式の駆動機構を搭載し、人間並みのパワーや運動能力を持ったロボットを開発したいと思っています。人間の骨や関節の位置をセンシングできる機構を組み入れ、自律型の格闘技ロボットを作ってみたい」と、目を輝かせました。

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