たった二つのパーツで
機能性を実現した、
シンプルで美しいデザイン。
安井歩夢、田谷凌輔、米光 陸
理工学部の「CAD/CG演習」の授業では、デジタルデータをもとにモノづくりをする技術・デジタルファブリケーションを使ってプロダクトを作る課題に挑戦。建築を学ぶ安井 歩夢さん、田谷 凌輔さん、米光 陸さんはAIOLにあるデジタルカッターを使ってカタログスタンドを製作。高い評価を得ました。
テキデジタルファブリケーション機器を使って
美しいカタチの
カタログスタンドを製作
「CAD/CG演習」の授業。建築やプロダクトデザインに用いられるデジタル・情報技術について学んだ学生は、最後にそれを実践する課題に挑戦しました。テーマは、「多くの人が集う交流センターにあると便利なファニチャーを、デジタルファブリケーション機器を使ってダンボールで作る」こと。
デジタルファブリケーションの特長は、CADソフトなどを使って設計したデジタルデータをもとに、手作業では難しい複雑で緻密な形も自在に作れるところにあります。AIOLには3Dプリンタやレーザーカッターなどデジタルファブリケーション機器が揃っています。
学生はそれぞれチームに分かれ、アイデアを駆使してプロダクト作りに取り組みました。ダンボールをワッフルのような立体的な格子状に組み上げた椅子、細かい凹凸のある表面、波打つような曲線が印象的な小物置きなど、デジタルファブリケーションならではの多彩なデザインの作品が完成。力作揃いの中、投票によって最優秀賞に選ばれたのは、安井 歩夢さん、田谷 凌輔さん、米光 陸さんの三人が作ったカタログスタンド「Hexagonal shelf」でした。
その名の通り六角形のスタンドを組み合わせることで、大きさや形を自由に変えられるのがポイント。どんな場所や目的にも対応できる機能性とともに、六角形のボードと補強材の2種類の部材だけで構成されたシンプルで美しいデザインが、高く評価されました。
自分が設計したモノが
カタチになる
モノづくりの
楽しさを実感
「複雑な部材を何種類も使う構成にしたら、量産に手間やコストがかかるし、品質を安定的に保つのも難しくなります。できるだけ少ない部材で機能性を実現するにはどんなデザインがいいか。三人でアイデアを出し合いながら設計していきました」と田谷さんは語ります。
3次元CADソフトを使って完成形を描き、その図面に基づいて各部材を詳細に設計。部材のサイズや、カッティングの場所や数についても熟慮を重ねました。「A4サイズのパンフレットや冊子を立てかけることを想定し、最初は長方形のスタンドで設計を進めていました。でも長方形だと部材同士を組み合わせるための切り込みを入れると、カタログを置くスペースが狭くなってしまいます。そこでスタンドの形状を六角形にして、切り込み分のスペースを作り出しました」と、米光さんは明かします。
設計図が完成すると、次はそのデータをもとに、AIOLにあるレーザーカッターで部材を切り出します。各部材の形や寸法が少しでも異なると、うまく組み立てることはできないため、正確なカッティングが必須。自動で切り出すレーザーカッターなら、まったく同じ部材をいくつでも作ることができます。
しかしここで思わぬ問題が発生しました。切り出した部材で試しに組み立ててみたところ、ダンボールが自らの重みに耐えきれず、潰れてしまったのです。対策を考えた三人は、スタンドの強度を高めるために補強材を入れることにしました。どこにどのような形の部材を入れるべきか。いくつも試作し、検討。最終的に最も強度を保てると判断したのは、安井さんがアイデアを出した正方形の補強材でした。「2枚のスタンドの間、圧縮方向に力がかかる位置に補強材を差し込み、潰れるのを食い止める方法が一番良いことが分かりました。自分のアイデアが功を奏した時は、大きなやりがいを感じました」と安井さん。その後も、微調整を繰り返し、ようやく完成形にたどり着きました。
「設計ソフトを使うと、デザインの幅が驚くほど広がります。アイデアを次々カタチにしていくのが楽しかった」と、米光さんは3DCADソフトを使って設計するおもしろさを語ります。また今回の課題を通じて「実物」を作る難しさとおもしろさを実感したという田谷さん。「設計段階ではうまくできたと思っても、実際に作ってみると、図面ではわからなかった問題に何度もぶつかりました。大変だったけれど、自分が設計したモノが実際にカタチになった時の喜びは、想像以上でした」
建築デザインを学ぶ三人。他の授業でもAIOLや工作センターを利用し、モノづくりを体験しています。「デザイン演習」の授業では、チャペルを設計し、3Dプリンタで建築模型を作りました。
米光さんは、「ボロノイ分割」という領域を分ける手法で多様な形の壁面を張り子のように張り合わせたチャペルを設計。「3Dプリンタを使うことで、多種多様なカタチのパーツを精密に作ることができました」と言います。
「AIOLを授業でしか使わないのはもったいない。訪れると、いつも新しい発見があります。3Dプリンタやレーザーカッターを使って、課題以外のモノも作ってみたいと思いました」と田谷さん、安井さんはモノづくりのおもしろさを実感しています。
デジタルファブリケーションに
触れ
自分の関心がさらに大きく
広がった
「災害などから建物を守ることについて学びたいとの思いから、特に建築構造に関心を持っていました」と入学動機を語った田谷さん。「自然災害の多い日本では、建物の倒壊などの二次被害によって人が亡くなることも少なくありません。建築構造設計や構造計算などを学び、建物によって失われる命を減らしたい」と語ります。今回、「CAD/CG演習」でデジタルファブリケーションに触れたことで、関心はさらに広がったといいます。「VRをはじめ仮想空間における建築など、デジタルのモノづくりにも、興味が湧いてきました」
同じく建築の構造に関心を持っている安井さんは、「CAD/CG演習」を通じてその想いをさらに強くしています。「補強材を入れることでカタログスタンドの倒壊を防ぐ方法を見つけ出す経験を通じて、建物における構造の重要性を改めて感じました。建築構造についてもっと学びを深め、将来は建物で人を守ることに貢献したい」と夢を膨らませています。
「もともと建物や空間のデザインに興味があった」と言う米光さんは、3DCADソフトやデジタルファブリケーション機器を学ぶことで、デザインの可能性を追求していきたいという思いを抱くようになりました。「『建築の最適化』を追求したい。デジタル技術を使うことで、人間の意図や想像を超えて理想的なデザインを創り出せるのではないかと思っています」
デジタルファブリケーションに触れる授業を経て、それぞれが見出した関心を今後はさらに深めていきます。
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