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2015/06/04 「スポーツ健康科学セミナーⅡ」において株式会社テレビ朝日 スポーツ局 スポーツコメンテーター宮嶋泰子氏に マスメディア・テレビ局の仕事と役割についてご講演頂きました。


宮嶋氏は、「1. テレビ局の組織」「2. 社会とのかかわり方」「3. スポーツを通して社会を見る」といった3つの視点からマスメディア、とりわけテレビ局の社会における役割について、多様な取材経験と事例に基づき述べられました。中でもテレビ局の組織が大規模化し、完全分業制で仕事が進むため、例えば、我々が目にするスポーツ中継であっても、まるで自動車の製造工場と変わらないぐらい、番組製作の組み立てはシステマティックに進められるといいます。またテレビ局の仕事は、国による「許認可事業」であるため、テレビが追うべき社会の理想にしたがい、番組編成や取り上げるべき内容の優先順位が必ずしも決まらないというところに、仕事の難しさがあると述べられました。それは、1953年2月1日にNHKが国内初のテレビ放送を開始し、同年に日本テレビが開局して「街頭テレビ」が設置され、大衆の関心を集めたものの、その背景には、戦後、アメリカに半ば支配されるわが国において、国民が状況を憂い、暴動や労使紛争にエネルギーが向かないよう、「社会のガス抜き」としてテレビ放送が用いられたといいます。とりわけ、国民の関心が高いスポーツ中継は、ある意味、社会で起こる重要な出来事から国民の関心をそらせるために、利用されてきたといっても過言ではないと述べられました。

そのような状況で、宮嶋氏は、スポーツや健康について学ぶ本学部の学生に対して、スポーツが優れたコンテンツであると手放しで賞賛するのではなく、「スポーツにおける違和感」を察してほしいとメッセージを送られました。それは、スポーツ、またスポーツにまつわる様々な現象を、スポーツにかかわる人間として、内側から評価をするのではなく、社会がスポーツをどう見ているのか、外側から現象を見つめる客観的な視点を持ってほしいということでした。つまり、スポーツがどのように発展し、進化を遂げるかという視点からだけではなく、スポーツによって社会は変えられるのか、スポーツが社会の発展にどう貢献できるのか、そのような視点を持ってほしいということでした。その意味では、テレビ局に求められる人材像は、「スペシャルな能力を持ち備えたジェネラリスト」であると述べられました。

奇しくも特別講義の当日に、宮嶋氏が手掛け、「報道ステーション」で放送された「なでしこジャパン」のキャプテンである宮間選手の特集番組が、後々数多くの報道番組で取り上げられている「女子サッカーをブームではなく、文化として定着させたい」という端緒となってます。