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2018/01/15   「トレーニングの理論と実践」 Theory and Practice in Exercise training と題した国際ワークショップを開催しました。


今回招聘したMads Fischer氏は、ボート競技が盛んなデンマークにおいて選手兼コーチとしてボート競技に関わっている、University of Copenhagenの学部4回生です。大学ではスポーツ科学、運動生理学、スポーツ栄養学に興味を持ち、学びを深めております。

今回、同氏に、実践しているトレーニングや生活の様子を話してもらう機会を得ることができました。

また、本学部・研究科からも、関連する研究発表(英語)をしてもらい、学際的交流を図ることが主旨でした。

 

Opening remarksとして、立命館大学総合科学技術研究機構専門研究員の

Hayato Tsukamoto氏に「High-intensity interval training (HIIT) and brain function –it’s implication-」と題して、ご自身の研究発表ならびに今回のワークショップに関わるトレーニング効果の重要な要素である「運動強度」と「運動時間」の影響について、概観してもらいました

 

続いて、Mads Fischer氏からは、自身も実践しているPolarized Trainingについて講演してもらいました。これは、我々スポーツ科学分野でも広く認知されているトレーニングというわけではありませんが、その効果を示すエビデンス(学術論文)も幾つかあり、非常に興味深いものです。

一般的に、競技種目によって様々なトレーニングがあることは言うまでもございませんが、例えば、マラソンなど持久性能力が重要なスポーツであれば、1日数十キロをランニングするといった、長時間に及ぶトレーニングを実施するのに対し、瞬発力を有するようなスポーツでは、レジスタンス運動(筋トレ)やスプリントトレーニングを実施することが主となります。

一方、パワーと持久力を有するスポーツでは、双方の要素を取り入れたトレーニングを実施する必要があります。従来、多くのトレーニングは、中間の、すなわち、中強度の運動を中程度の時間実施するようなものでしたが、Polarized Trainingは、むしろ中強度運動はトレーニングメニューからは排除して、ある期間で、何割かは低強度の長時間に及ぶ運動トレーニングを、そして残りは高強度の短時間運動を実施するというものです。Fischer氏は、そうしたトレーニング様式の効果を示したエビデンスを紹介しながら、自身のトレーニングメニューについて解説し、まさに「理論と実践」という当該ワークショップのテーマに沿った講演でした。

本学のボート部に所属する学生も10名以上聴講に来ておりましたが、皆興味深く聴いており、発表後には練習メニューについて相談するなど、有意義なワークショップとなったようです。


 

このPolarized Trainingを受け、本学部の田畑泉教授が開発した世界的に有名な高強度間欠的運動トレーニングであるTabata trainingについて、ムービーを交えながら、本学の学部3回生であるKazuhiro Yamamoto氏がわかりやすく紹介してくれました。これは20秒間の激しい運動と10秒間の休息を交互に8回程度繰り返すトレーニング様式で、トータル4分間程度のトレーニングプログラムでありますが、効果的に心肺機能や持久力を高めることが明らかになっています。

 

続いて、本研究科博士後期課程2回生のSahiro Mizuno氏からは、自身が精力的に研究しているコンプレッションウェアについて発表してくれました。これは、運動中や運動後のリカバリー期に、タイトな圧がかかるタイツなどを着用すると、運動による炎症反応を抑え、その後のパフォーマンスを改善することを示唆する、非常に興味深い内容でした。質疑応答にもしっかりと答え、国際学会での豊かな発表の経験が活かされていると感じました。

 

最後は、本研究科博士後期課程2回生のNobukazu Kasai氏からの、低酸素環境でのスプリントトレーニングの効果についての発表でした。スポーツ健康科学部のインテグレーションコア3Fには、低酸素室があり、この中で運動トレーニングをすることが可能です。従来、高地トレーニングなど、低酸素環境で実施する運動トレーニングは、酸素運搬能力を高めることを目的に持久性運動トレーニングが主として実施されてきました。しかしながら、Kasai氏は、短時間のスプリント運動トレーニングを低酸素環境内で実施すると、常酸素環境よりもスプリント能力が高まることを見出しました。これには、Fischer氏も大変興味深かったと言っておりました。

 

このように、当該ワークショップでは、非常に若い研究者ならびにその卵が国境を越えて集い、トレーニングの理論と実践について活発に協議することができました。聴講生も低回生が多く、彼・彼女らも多くの刺激を受けたのではないかと思います。

これも、素晴らしい発表をしてくれた演者の方々のおかげです。

本当にありがとうございました。