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順天堂大学の宮本恵里先生に「運動生理学」の講義をしていただきました。

2023118日の2限、「運動生理学」の授業に、順天堂大学スポーツ健康科学部の宮本恵里先生を招聘し、「スポーツと遺伝子」と題して、先生が精力的にされている遺伝子多型とスポーツパフォーマンスやスポーツ外傷・障害に関する知見について講義いただきました。

 

最近は競馬を楽しむことはないのですが、昔はたまに馬券を購入することもありました。サラブレッドは血統が重視され、父母やその祖先が長距離か短距離かどちらを得意としていたか、など考えたりします。我々も、ウサインボルト選手の走りを見て、「そもそも遺伝子が違う」と言ったりします。ではそもそも遺伝子が違うって何なのでしょう?それがどうしてパフォーマンスと関係するのでしょう?宮本先生は、こうした研究を精力的に実施されている、新進気鋭の研究者です。

 

まずは、とても身近な血液型や身長がどの程度遺伝しているかという「遺伝率」についての問いがあり、受講生が答えていきました。ちなみに、それぞれ100%80%ということです。

おそらく皆さんは両親の体格を思い浮かべられたのではないでしょうか。

その他にも、筋力や持久力も5割くらいの遺伝的影響を受けているとのことです。

遺伝子はタンパク質の設計図ですが、このタンパク質には多くの種類があり、我々の生命現象を担っております。遺伝子には、どういったアミノ酸をどういった順番で配列するかの情報が組み込まれていますが、人によってその情報に相違があることがあり、これを遺伝子多型といいます。運動パフォーマンスに対する影響が強いことで知られている遺伝子多型にαアクチニン3というものがあり、この多型によって筋肉の性質が異なり、スプリント競技能力にも違いが出てきます。こうしたお話を丁寧に解説してくださいました。

 

また、興味深いことに、肉離れや靭帯損傷、骨折などの怪我にも遺伝的な要因が関わってくるようです。筋組織や骨組織の構成要素としてI型コラーゲンがあり、その機能に重要な役割を果たしていますが、I型コラーゲンの遺伝子多型によって、骨密度や筋の硬さが変化し、前述の怪我の誘因となっているのではないかということです。

 

では、遺伝子でほぼ決まってしまうのか?というと、そうではなく、やはりトレーニングなどの外的要因、環境要因も大事であり、スプリント競技にネガティブと思われる遺伝子を保持していても、トレーニングの方法を工夫することでトレーニング効果がかえって高くなることが示唆されていること、そして遺伝子のタイプを知ることは、自分に適したトレーニングやコンディショニングを選択する上で有益な情報となることを強調しておられました。

 

今は、唾液から簡便にそうした遺伝子情報を解析し、知ることができますので、それを活かして、スポーツ科学や健康科学に役立てていくことが私たちには求められていると実感しました。

 

この分野にも精通されている家光先生も聴講され、「大変勉強になり、新しい気付きもあった」とおっしゃっていました。

私にとっても、そしてもちろん受講生にとっても愉しくてあっという間に時間が過ぎた1コマでした。授業後にも多くの質問が寄せられました。

宮本先生、ありがとうございました!

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