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本学客員教授の速水徹氏に「『見えない身体』が広げる視野:ブラインドサッカーをめぐる対話から」という演題で、特別講演をしていただきました。

 去る2023年12月7日に、元朝日新聞論説委員で、本学客員教授の速水徹氏に「『見えない身体』が広げる視野:ブラインドサッカーをめぐる対話から」という演題で、特別講演をしていただきました。
 速水氏は、「ブラインドサッカーの選手になる上で、大前提とされている条件とは?」といった15の問いを学生に投げかけ、この競技にかかわる様々な人々からのインタビュー調査に基づきながら、ブラインドサッカーという競技が有する魅力について話をされました。またそれ以上に、この競技の本質を捉える「見えない身体」というキーワードを手がかりに、「競技スポーツ」「障がいのある人」「自立と依存」「自由と不自由」、また「共生社会」や「インクルージョン」といった言葉や事象に対する視角について、学生の固定観念や既成概念を覆すような講義をされました。
 特に印象に残ったのは、ブラインドサッカーの選手が視覚に制約を受けながら、ピッチを自由自在に走り回ることができるのは、監督、ゴールキーパー、コーラーと呼ばれる人たちの存在によるものであり、彼ら彼女らの存在によって、「見えないところが見えてくる」と選手に言わしめるようなチームの一体感や競技の奥深さでした。また「障がい者=依存=不自由」という考え方について問いただされ、私たちが認識している「依存」という言葉には、ともすれば、ネガティブな印象を抱きがちですが、熊谷(2016)の文献を引用しながら、「『自立』と呼んでいる状態とは、実は依存していない状態(independence)などではなく、多くの(中略)依存先に依存できており(multi-dependence)、結果として、特定の依存先から支配される可能性が低く維持されている状態」と考えるのならば、「障がい者=依存=不自由」ではなく、「障がい者=依存=自立=自由」という発想を持つことによって、健常者と障がい者を対立的に捉えるのではなく、両者の対等な関係をベースにした社会のありようを考えるべきだと説明されました。
 学生は、講義資料にメモを取りながら、熱心に講義に耳を傾けており、有意義な機会を得ることができました。
1215_1長積先生ゲストスピーカー①
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