スポーツマネジメント概論:特別講演「スポーツマネジメントの視点で見る五輪」
去る2024年12月12日に、一般社団法人子ども未来・スポーツ社会文化研究所主席研究員で、元朝日新聞論説委員、そして、本学客員教授の速水徹氏に、パリ五輪が開催された「オリンピックイヤー」であったことを踏まえて、「スポーツマネジメントの視点で見る五輪」という演題で、特別講演をしていただきました。
速水氏は、サッカーとラグビーのワールドカップとともに、オリンピックは、「世界三大スポーツイベント」であると説明し、中でも、1896年にアテネで開催された近代オリンピックは、これらのイベントの中でも最も歴史を有した大会であると説明されました。
そして、都市で開催されるオリンピックを意味づけるために、五輪史上初の聖火リレーが行われた1936年のベルリン大会、五輪大会初めて、衛星中継で世界各国に映像を配信するとともに、国産の時計メーカーの「セイコー」を「世界のSEIKO」に押し上げた1964年の東京大会、人種差別問題に揺れ、アメリカ人のメダリスト2人が表彰台で拳を突き上げ、人種差別問題に抗議の意を表した1968年のメキシコシティ大会、テロで人質や死者が五輪期間中に発生し、五輪史上最悪の事態を招いた1972年のミュンヘン大会、巨額の開催経費によって、大会組織委員会が破産し、赤字問題に揺れた1976年のモントリオール大会、五輪に政治は持ち込まないというオリンピック憲章に反し、政治問題によって各国が五輪をボイコットした1980年モスクワ大会と1984年ロサンゼルス大会、また1984年大会は、「五輪は金のなる木」へと変貌し、「五輪の転換点」とことなどについて解説され、開催された五輪が都市とともに世界各国やスポーツ界にもたらした影響について説明されました。
そして、世界的なパンデミックによって、大会が1年間、延期され、無観客で大会が開催された2021年の東京大会に触れ、ロンドン大会からIOC(国際オリンピック委員会)が強調するようになった「オリンピック・レガシー(五輪開催によって受け継がれる次世代への有形・無形の遺産)」について、詳しく説明されました。
最後に、IOCが2015年以前と2016年以降に求める要件を変更したことによって、大会が揺れた「トランスジェンダー・アスリート」の出場について、実例を示しながら、ジャーナリストである速水氏らしい視点を盛り込みながら、五輪大会が向き合うべき問題について触れられました。
学生は、講義資料にメモを取りながら、熱心に講義に耳を傾け、講義後、活発な質疑応答が繰り広げられ、有意義な機会を得ることができました。