スポーツマネジメント特論:特別講義 「どのように研究方法の選択を正当化するか?:哲学的仮定の役割」
去る2025年5月19日に、和歌山大学国際観光学研究センターの山北隆太郎先生をお招きし、「どのように研究方法の選択を正当化するか?」というテーマで、スポーツ健康科学研究科前期課程の大学院生に特別講義をしていただきました。
特別講義のねらいとして、山北先生は、2つの目的を掲げられ、①認識論を中心とした科学哲学を概観する、②スポーツマネジメントの主要学術誌に掲載された先行研究を検討する、というものでした。
まず、山北先生の大学院時代の経験に基づき、ご自身が作成した研究計画書で、教員から質問されたのが、「なぜ、この研究方法なのか?」「なぜ、この研究方法で得られた結果が正当であると言えるのか?」ということだったようです。その時には、なぜと言われても…と漠然とした答えしか持ち合わせてなく、モヤモヤした気持ちになったとおっしゃっていました。その後、博士課程後期課程に進学し、「科学哲学」を学び、自身の研究に関して、科学的方法、科学的知識、科学的説明の本質、科学的活動の意味について、深く考えるようになったとのことでした。
次に、なぜ、科学哲学が必要なのかということを考え、Crotty (1998)の書に触れ、研究は、「知識の獲得・拡張・発展」をめざす行為であることを知り、さまざまな事物について、それが存在するといわれることの意味を問い究め、世界の構造について、さらには一般的に存在そのものの根拠またはその様態について考察し、規定する存在論、客観主義、構築主義、主観主義といった3つの認識論的立場を踏まえ、正当な知識の獲得方法について仮定する必要があること、そして、世界の見方と理解の仕方を問うための哲学的パースペクティブが必要であることを学んだとのことでした。
講義では、文献を提示されながら、存在論、認識論、哲学的パースペクティブについて代表的な考え方について紹介され、これから修士論文に着手する大学院生にとって、研究の質を決める方法論の正当性を考える今回の機会は、知的刺激に富んだ内容であったと思います。
山北先生は、学部生と大学院生を対象に、論文執筆について学ぶオンラインワークショップを2025年6月17日から8月5日までの18時から19時30分に開催されます。山北先生曰く、「その日は論文執筆に向き合う日!」というためのワークショップとのことなので、興味のある方は、是非、参加してみてください!
https://www.wakayama-u.ac.jp/ctr/