2025年11月13日、「スポーツマネジメント特論」にて公益財団法人日本スポーツ協会(JSPO) 地域スポーツ推進部長 金谷英信 氏に特別講義を行っていただきました。
2025年11月13日のスポーツマネジメント概論の授業にて、公益財団法人日本スポーツ協会地域スポーツ推進部長の金谷英信氏をお招きし、「公益財団法人日本スポーツ協会(JSPO)とは」というタイトルで特別講義をしていただき、日本のスポーツ政策の現状、またスポーツが持つ社会的価値や今後の課題を踏まえながら、JSPOの役割について、話されました。金谷氏は、立教大学経済学部を卒業後、日本体育協会(現日本スポーツ協会)に入職し、総合型地域スポーツクラブの育成やオリンピック・パラリンピック事業、またスポーツ少年団の育成に長年、携わってらっしゃいます。
金谷氏は、まず、JSPOが1911年に設立された日本のスポーツ統括団体であり、「スポーツと、望む未来へ。」をコーポレートメッセージに掲げ、誰もが主体的にスポーツを楽しめる社会の実現を目指している組織であることについて説明されました。また、JSPOがスポーツ基本法やスポーツ基本計画に基づき、国・自治体・スポーツ団体をつなぐ中核的役割を担う存在であることや、とりわけ、スポーツを文化として捉え、「健康」「教育」「共生」「地域再生」など、多面的価値を重視している点に組織の特徴があると述べられました。
次に、「国体」として親しまれ、各都道府県が持ち回りで開催してきた「国民体育大会」が2024年から「国民スポーツ大会」へと名称が変更され、その際に、この大会を「JAPAN GAMES」と呼ぶことになった経緯について説明されました。国民スポーツ大会(当時は、国民体育大会)は、戦後間もない1946年に第1回大会が開催され、1988年の京都府大会から2巡目を迎え、そして、2034年目に2巡目の開催を終えようとしています。3巡目の国民スポーツ大会の開催やあり方について、様々な議論が積み重ねられる中で、JSPOは、この大会のコンセプトに相応しい名称として、「JAPAN GAMES」を掲げました。この名称は、JSPOの理念を体現するものであり、国民スポーツ大会、全国スポーツ少年団交流大会、また日本スポーツマスターズを包括的に再構築するための新しいムーブメントとして、 JSPOは、「する・みる・ささえる」を融合した大会を目指そうとしています。JAPAN GAMESのスローガンは、「スポーツは、もっとオモシロイ。」というものであり、金谷氏は、国民体育大会、そして、国民スポーツ大会が紡いできたものを踏襲しつつ、JSPOが世代や立場を超えて、誰もがかかわることができる「スポーツ文化の創造」を成し得ようとしていることなどについて説明されました。
その一方で、現代スポーツ界が抱える課題として、暴力・暴言・差別をなくす「NO!スポハラ運動」や、少子化や教員の働き方改革に対応するための「学校活動改革」にもJSPOがかかわり、特に後者については、学校と地域とが有機的に連携し、「地域で子どもたちを育てる」という仕組みを創り上げようとしていることについて、説明されました。これまでJSPOが尽力してきたスポーツ少年団や総合型地域スポーツクラブの基盤を活かしつつ、政策の実現やスポーツ環境の改善を図ることは、JSPOのミッションを遂行するだけでなく、スポーツ少年団や総合型地域スポーツクラブといった地域スポーツクラブの発展と直結することだと述べられました。
最後に、金谷氏は、日本スポーツ協会における事務局職員の役割についても言及されました。行政、またスポーツ団体の職員は、単なる事務作業者ではなく、政策・制度・ルールを設計し、現場を支える「スポーツ推進の実践者」であると述べられ、スポーツ現場への理解と情熱を持ち、理論と実践を結びつける力が求められると強調されました。そして、学生へのメッセージとして、「スポーツを楽しむこと」「主体的にかかわること」「スポーツの本質を理解すること」のが重要であると述べられ、将来、どのような道に進んでも、スポーツを通じて、人と社会とをつなぐという意識を持ち続けてほしいし、そのような存在にもなってほしいと述べられ、講演が締めくくられました。