コラム

Column

”今”を積み重ねた先で築いたもの

立命館大学サービスラーニングセンター 学生コーディネーター 田中 巴実(生命科学部 生命医科学科 2020年3月卒)

先日立命館大学を、BKCサービスラーニングセンター(以下、SLC)の学生コーディネーター(以下、学生Co.)を卒業しました。学生生活を締めくくる卒業式はCOVID-19感染拡大防止のため中止となってしまいましたが、それでも間違いなく私の4年間はとても有意義で楽しいものでした。

私はSLCとともに学生生活4年間を駆け抜けましたが、入学当初はいわゆるボランティアや地域活動に自分がここまで深く関わるとは想像もしていませんでした。

踏み出した一歩と出会い

私が大学に入学した2016年は、4月に熊本地震が発生した年です。入学当初から「熊本の災害ボランティアに行きたい」という気持ちを漠然と抱いていたものの、ボランティアをやったこともなく、1人で行く勇気もない平凡な学生の1人でした。ただ幸運にも一緒に行きたいと言ってくれる友人と出会うことができ、実際に熊本市で災害ボランティアとして活動するという小さな、しかし今振り返ってみれば私の人生の転換点となる大きな1歩を踏み出しました。

災害ボランティアには大学の助成金を活用して行ったため、活動後に大学主催の報告会に参加する機会がありました。そこである職員さんからSLCや学生Co.の事を紹介されたのが、私とSLCの出会いです。正直そのときはSLCや学生Co.の役割はもとより、サービスラーニングやシチズンシップについてもよく理解できていませんでした。ただよく分からないなりにも、分野や内容を問わずボランティアに幅広く関われること、そして学生と地域をつなぐ下支えのような活動ができるという部分に魅力を感じ、私は学生Co.に飛び込んでみました。

自分のフィールド

学生Co.は学生に対してボランティアや地域活動などを紹介し、学生、団体、地域などをコーディネートする役割を持ちます。もちろん繋ぐだけではなく、自分自身も地域へと入り込み、様々な地域活動を行います。その関わり方は人それぞれですが、私の場合は「災害」に関わる活動に幅広く取り組んでいました。「災害」と一言で言ってもその範囲は広く、発災直後のいわゆる災害ボランティアから、復旧後のあらたなまちづくり、復興への道のり、そして災害に備える減災、防災まで、様々な状況・地域での活動に参加してきました。特に大学が主催の災害に関連したプログラムには、ほぼ全てに参加したとも言えるのではないでしょうか。

最初は熊本の災害ボランティアで感じた、自身の力不足・無力感から活動に参加していました。しかし1回、2回と活動を重ねていくうちに、「もっと知りたいから・学びたいから」「またあそこに行きたいから」「あの人に会いたいから」という理由へと変わっていきました。何度同じ場所を訪れても、何度同じ人に会っても、行くときが違えば、同行する人が違えば、自分自身の知識や視点、とらえ方が違えば、何度でも新たな発見、学び、出会いがありました。そして、自分が教えていただいたことや地域の方が繋ぐもの、遺したものを伝えたい、還元したいという気持ちが強くなっていきました。そのひとつの形が「減災・防災」という活動だと考えています。いま自分が興味をもっていること、いま目の前にある自分にできることにただただ本気取り組んでいたら、いつの間にか自分のフィールドだと胸を張って言うことのできる活動場所を手にしていました。「″災害″に関連する活動であれば私に聞いて」と言えるほど、学びを重ね、成長している自分がいました。熊本で小さな1歩を踏み出したからこそ、その後の私の大学生活や、活動の幅は大きく広がり、多くの素敵な人達に出会うことができました。

「今」に「本気」で向き合う

前述のような経験は、進路を考える際にも大きく影響しました。私はこの春から地元の新潟で公務員として働きます。以前の私は「地元に帰りたいから公務員になるのが妥当だろう」という消去法的な理由から公務員を目指していたのですが、活動を経て「地域の根本的な減災・防災・危機管理に関わる仕事がしたいから公務員になりたい」という理由に変化しました。結論として公務員を目指すという部分は変わっていないのですが、公務員になりたい積極的な理由を自分の中で明確にできたことでより前向きに就活に取り組むことができ、また自己分析や面接などもあまり苦労しませんでした。内定を頂いた後も公務員としてどんな仕事をしたいのか、どんな成長をしてどんな公務員を目指すのかという事などをひとつひとつ考えるようになりました。また、学生Co.で得たコーディネーションやファシリテーションの経験、サービスラーニングやシチズンシップ、社会参加についての学びなどは公務員に限らず社会人として働く上で非常に役立つと確信しています。

ここまで私の学生生活をつらつらとお話してきましたが、こうやって振り返ってみた時に改めて感じるのは、1回生の夏に踏み出したちっぽけな一歩が今の、そして今後の私自身を方向づけた大きな一歩だったのだなぁということです。ぜひ「今」に「本気」で向き合ってみてください。その一瞬の積み重ねは必ず大きな成長へとつながります。地域活動でも、サークルでも、自己研鑽でも、どんな活動でも構いません。分野や活動場所を絞るのか、自分の興味の赴くまま幅広く取り組んでみるのか、それは人それぞれです。活動を経てどんな学びや成長を得るのか、はたまたなにも得られないのか。それはあなたがどう取り組むかです。まずは自分が本気で打ち込める自分のフィールドを是非見つけてください。見つからないという人は、ちょっとでも興味を惹かれたことにためらわず飛び込んでみてください。そして、いま目の前にあることに本気で取り組んでみてください。もちろん楽しいことばかりではなく、苦手なこと、避けていたこと、やったことがないこともあるでしょう。それでも壁にぶち当たり、もがいて、苦しんで、1歩ずつ乗り越えてください。その小さな1歩、一瞬の積み重ねが、ふと振り返ったとき必ずあなたを一回りも二回りも成長させているはずです。

まずは一歩踏み出してみてください。

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