コラム

Column

「災害救援と大学とのコーディネーション」

日本福祉大学福祉経営学部 教授 山本 克彦

オモイをカタチに
 
「先生、私たちにも何かできないでしょうか」・・・
災害の現場をメディアが報道する。いまは報道に気づく前に、なんらかの「緊急速報」が手元に届く。すると学生たちは自らのチカラを現場につなぐことを描こうとする。すべての学生ではないが、もう20年以上昔から、学生たちがまず抱く“オモイ”は変わらずに在る。
 災害という状況を知った学生のスタートは自分にできる何かへの“意欲”であるが、具体的にそれを描き行動につなぐ“能力”は備えていない。彼らは「災害」がもたらした、社会の多様な課題に対して、自らの持つ力をフルに活用した実践へ…と一歩を踏み出そうとしているのだ。そのことを支えることは教員の重要な役割であると、私は考えている。
 いや教員だろうがなんだろうが、世の中に大変なコトが起こり、明らかに困っている人がいる。そこに実際に向かうには、ふだんのくらしとの調整が必要だ。一歩ひいて、冷静に安全に一定の距離をおいたコーディネーションは重要だが、どうすればいち早く、学生の「オモイをカタチに」できるのか、そのためのコーディネーションが私の役割であった。


迷ったらGO!
 自分にできる何か(活動)を見出そうとする学生もいれば、活動が見えていて自分にもできそうなら参加しようと考える学生もいる。参加するかしないか、迷ったら選ぶのは“参加する”ことである。参加を促したのは良いのだが、学生にとって学びがなかったらなどと心配する必要はない。災害という状況に対し、動き出したことに意味がある。さらにいうならば、その意味付けをどのようにしていくかを考えれば良いのだ。
 災害時に限らないが、コーディネーションに重要なリーダーシップとして、私は状況対応リーダーシップ(SL理論:Situational Leadership Theory)をオススメしている。学生が持つ「自分にできる何かへの“意欲”」と「備えている“能力(スキルや経験)”」を見極め、リーダー(この場合はコーディネーター)が「指示的行動(タスク指向)」と「援助的行動(人間関係指向)」をバランスよく使い分けるというものだ。意欲を持って活動を見出そうとする学生には、指示的行動としていつまでに何をどのように…ということを伝え、ともに動く。能力を備えるにしたがって、指示的行動は小さく、活動を見守り支える援助的行動を大きくするというものである。個人だけでなく学生グループ等も同じ対応が大切で、最終的には自立へとつながる。

出会いは化学反応
 ここまでのタイトルはすべて、2011年の東日本大震災で学生ボランティアの組織化と運営を試みた際の“合言葉”でもある。学生のオモイをていねいに受け止め、迷いがあればそっと背中をつっつく。これまで災害という状況で数千人という学生ボランティアの姿を観てきた。被災した地域との出会い、住民との出会い、ボランティアどうしの出会い、あらゆる出会いが相互の変化を促す。そのことを「出会いは化学反応」と表現してきた。
 大学では出会うことのないさまざまな人間関係、多様な状況への対応、求められるコミュニケーションやチームワーク。学生自身、自分では気づいていない自分のチカラに気づくこともある。被災地で現地調整をしていると、学生のオモイはともかく、「この学生をボランティアに参加させて良いだろうか」と相談を受けることがある。まさに迷ったらGO!である。現場で学生は化ける…それを知っているから、どんな事前の心配があっても信じて、待つことを活動現場では大切にしている。

これまでの非常識を常識に変えてやる!
 地域で過ごす人々それぞれの“ふ”だんの“く”らしの“し”あわせを実現することを「ふくし(福祉)」といいます。そんなふだんの中に災害という状況が頻繁に起こり、災害多発時代とまでいわれている。このコラムのテーマにある災害救援は決して特別なことではなく、日常から意識しなければならない。
 20年以上昔から、災害救援への学生のオモイは変わらずに存在するが、当時大学教員が率先して、学生とともに被災地へ向かうことは非常識とも思われていた。しかし多発する災害と、そのたびに現場にかけつけ、活動する学生ボランティアの姿はあたりまえともいえる状況になった。個々の大学や大学をネットワークする組織が災害救援に動き出すことは、常識なのだ。
 災害救援は未知の地域や状況に出かける活動である。しかも常に変化する環境であることから、ボランティア活動の先にある学びを描いてから動くことは困難である。しかし活動をふりかえり、もちかえることにより、被災地だけでなく、大学と地域の備えにつながる大きな学びが確実にあるのだ。常識になりつつあるとはいえ、災害救援におけるコーディネーションは職人技ともいえるスキルやセンスが求められる。

ボランティア|VSL研究会|山口 洋典
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