コラム

Column

地域に入る、地域にいる

あきよし制作舎 秋吉 大地

座談会から見えてきたこと

先日、立命館大学サービスラーニングセンター(以下SLC)の外部アドバイザーと教職員が集まって座談会が開かれました。私も課外プログラムの外部アドバイザーの一人として参加し、SLCの現状や課題、今後のあり方について意見交換を行いました。
話題の中心の一つになったのが、「大学と地域の関わりをどう見せるか」という問いでした。
同じくアドバイザーとして参加されていたスポーツ健康科学部准教授の河井先生から、大学生が地域にいること自体を関係人口として捉え、大学と地域の関わりを可視化できないかという話が出ました。活動の受け入れ団体数や参加人数といった数字だけでなく、「この地域にこれだけの学生が継続的に関わっている」という関係の広がりを、別の切り口でも示していく必要がありそうです。
一方で、現場で何が起きていたか、学生と地域の人との間にどんな関係が生まれていたか、そういうものは数字では見えてきません。
何をどう可視化するか。数字で測れるものと、測れないものがある。その両方をちゃんと扱うことが、大学と地域をつなぐ仕事には必要なんじゃないかと、座談会を通じて改めて思いました。

自己紹介
私は立命館大学の卒業生で2019年に経済学部を卒業しています。今は滋賀県を中心にイベントの音響や映像制作・ライブ配信、農業などの仕事を生業にしながらマルシェの運営や場づくり等に関わらせていただいています。
大学在学中は、びわこ・くさつキャンパスでSLCの学生コーディネーターとして活動していました。当初は地域活動自体に懐疑的でしたが、フィールドとデスクを行き来する中で、体験が少しずつ自分の中に積み重なっていく感覚は、学生時代の自分には新鮮でした。特に高島ワークキャンプとの出会いは大きなきっかけとなりました。大学から文系学部へ進学したこともあり自身の将来像が見えずに焦っていた自分が、高島で活動するなかで多様な「生き方・暮らし方」に触れて自身の生き方の正解がほぐれていく感覚をおぼえました。解像度が上がると、どこか他人事だった地域や社会の出来事が、自分事として見えてくる。そのとき、私は初めて「地域に入る」のではなく、「地域にいる」という感覚を持てたのだと思います。
卒業後は人材系の企業に就職しましたが、1年半ほどで退職。「顔の見える関係性のなかで仕事がしたい」という気持ちから、高校生の頃から続けていた音響や映像のスキルと、滋賀県内の同業者とのつながりをもとに開業し、今の暮らしに繋がっています。
現在も有り難いことにSLCの動画やレポートの制作のご依頼をいただくことがあります。卒業してからもこうして関わりが続いているのは、学生時代に築いた「顔の見える関係」があったからだと思っています。

数字では測れないものを、どう可視化して伝えるか
音響や映像の仕事をしていると、「伝える」ことの難しさと面白さを日々感じます。
どんなに良い空間やコンテンツでも、映像に収めた瞬間に何かが欠けてしまいます。場の温度や空気感、背景。そういうものはカメラのフレームやマイクには収まりません。だからこそ「何を切り取るか」「どう残すのか」に神経を注ぐことになります。数値にできない体験を、別の形で伝えようとすることが、この仕事の核心だと思っています。
地域活動の「成果」を伝えることも、似ているところがあります。
座談会でも話題になりましたが、ボランティアや地域活動の成果を数値化することには、功罪があります。「学生が人、時間活動した」という数字はわかりやすく、大学が地域にどれだけ関わっているかを示す根拠にもなります。でも数字に落とし込む過程で、抜け落ちることもあります。
たとえば、昨年度は2012年から続いている「大船渡盛町七夕まつりサポートプロジェクト」に撮影スタッフとして同行しました。学生たちが地域の方と一緒に七夕まつりの準備から片付けまでを担う活動です。カメラを持って現場に入りながら、学生と地域の人たちのやりとりを見ていると、初日はどこか遠慮がちだった学生が、2日目には地域の方に名前を呼ばれながら自身の役割を認識して動いています。そういう変化は、参加回数や活動時間には出てきません。
ではどう伝えるか。一つは、個別の学生の動きを丁寧に追うことだと思っています。「昨年初めて参加した学生が、今年は自分から段取りを組んでいた」という話は現場の空気が伝わるエピソードとなります。数字だけではなく、一人ひとりのストーリーを見せることで、活動の意味が伝わりやすくなります。
もう一つは、関係の地図を描くことです。誰と誰がどうつながっているかを可視化することで、活動の広がりが見えてきます。個々の活動がバラバラに存在しているように見えても、関係図として描いてみると、そこに確かなネットワークがあります。
私が実行委員として関わっている蓬莱マルシェも、そういう関係の地図が見えやすい場だと思っています。滋賀県の蓬莱駅近くの会場で毎月開催しているマルシェで、学生を中心に運営しています。遠くからお客さんを呼んで非日常としてイベント的に盛り上がる、というよりも、毎月同じ時間に行けば「誰かいるかも」とふらっと立ち寄れる、地元の人が日常の延長で集まれる場を大事にしています。顔の見える関係が積み重なることで、場が育っていく感覚があります。
学生時代の活動を振り返ってみても、BKCの地域活動の中には、学生・教員・地域団体・行政・OBOGといった人たちのゆるやかなつながりが確かにありました。ただ当時は、目の前の活動を点としてしか捉えられていなかったように思います。
卒業して、言わば地域の人という視点に立つと、これまで点で見えていたものが線で繋がってきます。大事なのは、関わっている人たちがお互いの存在を知れる状態をつくることです。

卒業しても、卒業しない
ボランティア・地域活動をしている学生のなかには大学の卒業のタイミングで活動も卒業してしまうパターンが散見されます。卒業して関係が切れるのは自然なことかもしれません。でも、それは少しもったいないとも感じています。
地域のコミュニティに関わるということは、部活やサークルのように単に「活動する」ということではないと思っています。そこに顔が見える関係ができて、自分のことを知っている人がいて、行けば「おかえり」と言ってもらえる場所ができる。そういう場所は、学生という身分がなくなっても消えません。
私自身もそうでした。SLCで出会った人たち、地域で一緒に動いた人たち、ことあるごとにお世話になった地域の大人たちとの関係は、卒業後も続いています。会社を辞めて地域に戻ってきたとき、その関係があったから戻れた、という感覚があります。
就職や進学で関西を離れる人もいると思います。それでも、一度つくった地域とのつながりは、物理的に離れていても何かの形で残り、そしてまた戻ってくることができます。
生き方や暮らし方は、一人で決めるものではなくて、関わってきた人や場所との関係の中でだんだんと形になっていくものだと思います。その関係を、学生のうちに少しでも豊かに編んでおくこと。そして、できれば卒業後も、その場所と関わり続けてほしい。それが地域活動の、数字には出てこない大切な価値だと私は思っています。

ボランティア|VSL研究会|山口 洋典
  1. 地域と出会う
  2. コラム
  3. 地域に入る、地域にいる