OIC H棟・
情報可視化

「みんなで描くみらいの茨木」ポスターコンテスト
イオンモール茨木×立命館

「共創」をテーマに市民・企業・自治体・大学が集い
学生の挑戦の場にもなった生成AI活用のポスターコンテスト

OUTLINE

2024年4月13日、イオンモール茨木の、4階まで吹き抜けとなっている広く明るいエントランススペースで、「みんなで描くみらいの茨木」ポスターコンテストの表彰式が行われました。

会場には大判のポスターがたくさん展示されています。「みらいの茨木」をテーマに市民から募集したキーワードをもとに、画像生成AIを活用して制作されたポスターです。アドビ株式会社の協力を得て、立命館大学の学生と、茨木市内に拠点がある協賛企業が共に制作に取り組みました。完成したポスターはイオンモール茨木内で約3週間展示され、買い物などで訪れた市民からも「未来の茨木がこうなったらいいな」と思う作品への投票を集めました。この日、最優秀賞、市民賞、各協賛企業賞が決定、茨木市長も駆けつけた表彰式の様子が上記の写真です。買い物の足を止めて様子を見守る市民の姿も多く見られました。

キャンパスに近いイオンモール茨木との自由な対話から始まり、茨木市に拠点をおく企業や自治体にも共創関係が広がることによって、それぞれが目指すものを実現できた、TRY FIELDにおける初めての社会共創プロジェクトです。

プロジェクト参加者が目指したもの

立命館大学
  • 大阪いばらきキャンパス周辺の企業・自治体との共創、社会課題の解決
  • デジタルツールによるアウトプットを最大化し「試す」「挑戦する」を学生の日常に組み込む
イオンモール茨木
  • 「地域の暮らしをより豊かに」との理念を実現する地域との共創
  • 店舗改装に伴い一時的に生じる白壁の有効活用
茨木市
  • 市民・地元企業・大学との共創
  • 市の今後に対する市民の意見を知る
アドビ
  • デジタルツールを活用しながら創造性を発揮し、新しい価値を作る力を育成
協賛企業
  • 市民からの認知度向上、地域に密着した企業運営
  • 地域に拠点を置く企業同士の連携

「みんなで描くみらいの茨木」立命館大学×イオンモール茨木共催 社会共創イベントメイキングPV

EPISODE

EPISODE01

「店舗内に白い壁ができちゃうんですよね」
何気ない会話からプロジェクトが始まった

このプロジェクトの始まりは、本学社会共創推進本部本部長の三宅雅人教授と、イオンモール茨木の渡邉広太営業マネージャーの間で交わされた会話でした。新棟(H棟)のオープンを半年後に控え、三宅教授は定期的に渡邉マネージャーを訪ねて、TRY FIELDをキーワードとした立命館の挑戦・ビジョンを説明し「一緒にできることはないだろうか」を模索していたのです。

その中で渡邉マネージャーから出たのが「エントランス近くの店舗で改装工事が始まり、白い壁ができちゃうんですよね」という話でした。「有効活用したいので、新学部のポスターでも貼られますか?」との言葉に、三宅教授は、イオンモールの課題解決につながるポスターを学生が制作、発表するイベントをしてはどうかと考えました。「大学とアドビ社との間で連携協定を締結した*ので、同社のデジタルツールを使った制作ができると考えたのです」(三宅教授)。

一方で、三宅教授は茨木市と大阪府にも定期的な訪問を行っていたことから「この話をさらに広げてはどうだろう」と考え、常日頃から地元企業との共創に前向きな茨木市に話を持ちかけたところ、とんとん拍子に話が進み、「みらいの茨木」をテーマとしたポスターにすることが決まりました。茨木市としても、大学や地元企業との共創のもとで、未来の茨木市に向けた市民の期待を「可視化」する取組は新しく、可能性や面白さを感じたとのことでした。

同じ頃、渡邉マネージャーは地元企業へ協力を呼びかけていました。「『みらいの茨木』は地元に拠点を置く企業すべてに関わること。各企業にこの取組を説明し、一緒にやりませんかとお声がけしたところ、5つの企業様に協賛いただけることになりました」。

「みらいの茨木」キーワード募集にあたっては、茨木市とイオンモール茨木の全面的な協力を得ることができました。「市の広報紙や市役所内での告知、イオンモール茨木内でのポスターやサイネージによる告知、さらには応募者の中から抽選で賞品がもらえる企画も実施していただきました」。大学での広報をふくめたさまざまな方法で広く周知され、集まったキーワードの数は291にものぼりました。

渡邉営業マネージャーよりバトンを受けとった
松久営業マネージャー

EPISODE02

何度でもやり直しできるツールで
短時間に挑戦と失敗を繰り返し、
アウトプットする

3月1日、OICで、寄せられたキーワードをもとに画像生成AIを活用したポスター制作のワークショップが行われました。定員30名に対して36名、しかもOICだけではなく、3キャンパス、9学部3研究科から学生が参加。協賛企業からの参加者もあり、2~3名ごとに分けられた学生グループのうちいくつかに加わって共に取り組む形で行われました。

使用ツールは4月より立命館の全学生が利用できるようになったAdobe Expressです。講師は、アドビの認定制先生コミュニティの教員であるAdobe Education Leader(現在はAdobe Creative Educator Innovatorにブランド変更)の2名の先生が務めました。レクチャーを受けた学生は、早速制作に取り組みました。

ほとんどの学生にとってAdobe Expressの生成AI機能の利用は初めて。まずは市民から寄せられたキーワードをそのままプロンプトとして入力してみますが、期待通りの画像は生成されませんでした。例えば「緑豊か」と入力しても、生成されるのはただの森の絵。キーワードに込めた市民の思い、どのような未来をイメージしているのかを深堀りし、複数のプロンプトによって具体的に指示することが必要です。講師からアドバイスを受けると、学生たちの作業ぶりはみるみる改善されていきました。

生成AIによる画像制作は、すぐにアウトプットでき、何度でもやり直しができるのが特徴です。三宅教授も「とりあえず手を動かすことが大切。それが、TRY FIELDのコンセプトにもある『挑戦と失敗を繰り返しながら、未来を⾃由に創り出す』ことにつながるんです」と話します。

制作時間はあえて約40分しかとられていません。「限られた時間の中で課題に取り組みアウトプットする」という経験を重ねてほしいとの思いからです。三宅教授は言います。「全員が自分を主張していてはうまくいきません。共通の目的のもと、初対面の人同士でコミュニケーションをとりながら、グループ内での自分の立ち位置を見極めて役割分担を行い、時間管理もしながら成果を出す。この実践を繰り返すことによってコミュニケーション能力のレベルも上がっていくのだと思います」。全員が初対面のグループ。実際に、挨拶もそこそこにチームとして機能し始める各グループの姿が見られました。

協賛各社の方が加わったグループでは、「企業のみらい」のポスターも制作しました。イメージを共有しやすいデジタルツールの強みも活かされて、社会人と学生との間に壁はなく、同じグループメンバーとしてすぐに活発な意見交換が始まっていました。学生の一人は「企業の人の物事を考える際のロジックを知ることができてとても勉強になりました」と言います。企業の方も、学生の自由な発想や予想外の真面目さにふれ、お互いに新しい発見のある出会いだったようです。この日は、渡邉マネージャーの後任となったイオンモール茨木の松久和人営業マネージャーもワークショップを見学。「学生さんの適応力、飲み込みの早さには驚かされました。完成した作品について発表する場面でもスラスラと話しておられ、ただただすごいと思いました」。

EPISODE03

「みらいの茨木」を
真剣に考えた市民によって
予想を大きく上回る投票数を実現

完成したポスター17枚は、イオンモール茨木のエントランスホール「ジョイプラザ」に面した、改装中の店舗を覆う白壁に掲示されました。「多くのお客様に見ていただきたかったので、可能な限り大きなサイズで、壁いっぱいに貼ることにしました」(松久マネージャー)。各ポスターの下にはシールを貼るスペースも設けられました。お買い物に訪れた市民が「未来の茨木がこうなったらいいな」と思うポスターを選び、シールで投票できるようになっています。

足を止めて1枚1枚をじっくり見る人、家族で感想を言い合いながらシールを貼る人…単なる学生の作品発表ではなく、「みんなで描くみらいの茨木」のコンセプトで制作されたポスターに対して、市民の方々が、参加者・当事者としての意識で真剣に考え、投票する様子がうかがえました。

最終的な投票数は、松久マネージャーの予想も大きく上回る1329票。「これまでにさまざまなイベントを実施しましたが、ここまで投票数が伸びるのは珍しいです。しかもお客様の金品的なメリットは皆無。本当に驚きました」。三宅教授は「収益性の高い人通りの多いスペース、しかも広い面積を無償で長期間提供する決断をしていただいたことに感謝しています。我々の構想や企画趣旨をご理解いただき、一緒に取り組んでいだたけたことがとてもありがたかったですね」。

4月13日に行われた表彰式には、学生や大学関係者だけでなく、福岡洋一茨木市長をはじめとする茨木市関係者、イオンモール茨木、アドビをはじめ、このプロジェクトに関わったすべての企業が参加。最優秀賞に選ばれたのは、産業社会学部の小野雅崇さん、情報理工学部の目淑乃さん、理工学部の堀江亮太さんのグループでした。小野さんは「茨木市には緑と人と豊かな資源がある一方、人口増加率が減少傾向との課題があります。このような都市政策課題に学生が向き合うことでシナジーを生み出せればと思い制作しました」との感想を述べました。

各協賛企業から贈呈された協賛企業賞の副賞が、揃って茨木工場で生産された製品など地域ゆかりのものばかりだったのも特筆すべきことでした。「企業としてただ金品を提供するのではなく、工場で何を作っているかを知ってもらいたいとの思い、プロジェクトへの積極的な姿勢がありがたかったです。イオンモールさんや大学をハブ役に、企業同士が連携する形を喜んでいただいていることが感じられました」(三宅教授)。「各企業様は、もっと地域と密着した企業運営を行いたい、でも実現しづらいという課題を抱えておられたようです。また一緒に何かしましょうとすでにお声がけもいただいているんですよ」(松久マネージャー)。

「みんなで描くみらいの茨木」ポスターコンテストは、TRY FIELDというプラットフォームで初めて実施された社会共創プロジェクトとして、参加したすべての人が手応えを感じられるものとなりました。

VOICE

さっか 淑乃さん(情報理工学部 3回生)

アドビのツールを使ってみたくて参加しました。最初は思うような画像を作ることができなかったのですが、茨木市の基本計画に沿ってキーワードを言い換えてみたり、企業の統合報告書を参考に、理想の未来に至る課程の部分をプロンプトに加えてみるなど、限られた時間内でも可能な限り工夫することによって、より良い画像が出力されるようになっていきました。グループ内に就職活動を経験した上回生がいたことから、自分では思いつかないようなアプローチもでき、最優秀賞をいただけて、とても嬉しかったです。

絵を描いたりデザインしたりはできなくても、デジタルツールの力を借りて自分なりの表現をする方法を一通り経験できたので、今後自分で何かを発信する機会に活かせると思います。それが一番の収穫でした。

TRY FIELDには、挑戦と失敗を繰り返しながらより良いものを作っていこうというコンセプトがあるので、気楽にプロジェクトに挑戦できます。これからもたくさんの挑戦をしていきたいと思います。

REFLECTION

プロジェクトを終えて、関わった方々の
振り返りをお聞きしました

  • 立命館大学社会共創推進本部 本部長

    三宅 雅人教授

    私が目指したのは、従来の産学連携のような、大学と企業のどちらかが主体となり、もう一方が協力する関係ではありません。両方が対等でWin-Winになる関係、しかもその関係がいくつも複合的に組み合わされたものを一つのプロジェクトとして実現することでした。
    イオンモール茨木の企業価値を向上させ、同時に大学の目指す社会共創を実現し、教育にも活かす。茨木市の協力によって我々は地元の方々と「共創」するフィールドを得られ、かつ、茨木市の課題解決に寄与する。地域より複数の企業に参画いただくことで、企業間のネットワークづくりや認知度向上に役立ててもらう…このプロジェクトは、すべての参加者にとって価値があるものになったと思います。

  • イオンモール株式会社 イオンモール茨木
    営業マネージャー

    松久 和人

    イオンモールは自治体や地域の皆さま、近隣の企業や学校に支えられて成り立っていますので、社会共創、地域共創への関心も高く持っていました。立命館大学や茨木市とはこれまでも関係を築いてきたので、このプロジェクトはぜひ一緒にさせていただきたいと思いました。イオンモール茨木としてはプロジェクトそのものも大成功だったと考えていますし、地域企業のハブ役を担わせていただけたことにも大きな意義があったと考えています。今後、プロジェクトの内容によってお声がけする企業さんは異なってくると思いますが、今回の実績をベースにお話しすることにより、このつながりの輪がどんどん広がっていくことを期待しています。

  • 茨木市

    福岡 洋一市長

    「みらいの茨木」、こんなにいろいろな絵が出てくるのですね。行政の常識にとらわれない素晴らしい作品が揃ったことに感銘を受けています。茨木市と立命館大学様が共有している「共創」というキーワードには、若者、学生の力が欠かせません。今後も、ぜひお力添えをお願いしたいと思っています。

  • アドビ株式会社 教育事業本部 執行役員本部長

    小池 晴子

    Adobe Expressや生成AIのAdobe Fireflyなどのデジタルツールはあくまでも「道具」にすぎません。学校の学びの中でどのように役立てていくことができるか、当社も実験的な取り組みを積極的に行っています。今回「地元に密着した課題」という普遍的テーマにアドビのツールをご活用いただけたことをありがたく思っています。

  • 茨木市 企画財政部 政策企画課 公民連携係 係長

    北冨 稔晃

    大変素晴らしい機会に関わらせていただき、誠にありがとうございました。
    イオンモール茨木様の強みである市民訴求力と、立命館大学様の強みである新たな技術や学生活力を掛け合わせた、まさに共創に繋がる取組だったと感じています。
    今回の取組で集められた市民の皆さまからの貴重な声は、市の事業展開にあたっての参考とさせていただきたいと考えています。

  • 学校法人立命館 総合企画部 社会共創推進課
    課長補佐

    垰口たおぐち 広和

    当プロジェクトの担当職員です。社会共創というテーマの具現化、地域のさまざまなステークホルダーの方々を巻き込んだイベントのあり方を一つアウトプットできたことはとても喜ばしいことだと考えています。さまざまな立場の関係者とキャッチボールをする中で、それぞれの考えを知ることもでき、職員としても大きな刺激を受けました。企画の範囲が広がり大変な面もありつつでしたが、とても有意義なプロジェクトに参画させていただけました。
    今も複数のプロジェクトの企画が同時進行で動いています。職員にも、決して計画だけで終わらせず、たとえ失敗しても最後までやりきろうという雰囲気があります。TRY FIELDがさらにチャレンジできる場になっていくことを期待しています。

  • 日東電工株式会社

    社会共創というキーワードが強く刺さっております。多様なステークホルダーが集い、未来のありたい姿を共有し、課題設定し、一緒に解決する。そのような場が今、求められていると感じています。具体的なアクションに向け、引き続きよろしくお願いいたします。

  • 株式会社資生堂 大阪茨木工場

    参加させていただき、ありがとうございました。生成AIを活用して学生の皆さまが「みらいの茨木」に考えをめぐらせ一所懸命に取り組んでいらっしゃる姿がとても印象的でした。弊社も地元企業の一員として茨木市に貢献したいと考えておりますので、また何かございましたらお声がけいただけますと幸いです。

  • 第一生命株式会社 茨木支社

    世代を超えて未来の茨木を作っていく、地元を盛り上げていく、そんな場がもっとたくさんあればいいし、参画していきたいと思いました。

  • 近畿中央ヤクルト販売株式会社

    参画させていただきありがとうございました。大切なご縁を大事にして引き続き茨木市、貴校とも良好な関係のもと社会共創のため、産官学が一体となった課題解決や未来に向けたお取り組みが出来ればと存じます。

  • ゴウダ株式会社

    皆さんの作品や言葉に感銘を受けました。参加させていただきありがとうございました。また機会がありましたらお誘いください。できることがあればご協力・連携させていただきたいと思います。

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