研究科長のつぶやき 2020年5月バックナンバー 立命館大学大学院言語教育情報研究科ホームページ佐々木冠のホームページコロナに負けない役立つウェブサイト研究科長のつぶやき

研究科長のつぶやき 2020年5月バックナンバー

2020/06/04設置
2020/05/31[情報共有]立命館大学図書館開館
 要予約・滞在時間1時間という制限が付いていますが、6月1日から立命館大学図書館に学生(院生を含む)と教職員が入館できるようになります。これで大型の辞書類も閲覧できるようになりますね。制限付きですので、詳しい情報をこちらで確認してください。
2020/05/31[情報共有]立命館大学緊急学生支援金募集要項公開
 立命館大学緊急学生支援金募集要項がこちらで公開されています(公開されたのは5月29日)。学校法人立命館が設置する大学・学校で学ぶ学生・生徒・児童全員が支援の対象になっています。
2020/05/31[情報共有]Keio-ICU Linguistic Colloquium
 6月10日のKeio-ICU Linguistic Colloquiumは日本語の母音の無声化を研究している人にとって興味深い内容の講演があります。詳しい内容はこちらをご覧下さい。講演は英語で行われますが、日本語での質疑も可能なようです。Zoomでの会議です。こちらから参加申し込みができるようです。
2020/05/30[その他]丸善京都本店が開いていました
丸善京都本店, 2020/05/30  散歩がてらに河原町三条まで歩いて行ってきました。衣笠キャンパスの近くからだと1時間ほどかかります。非常事態宣言が解除される前と比べると開いている店も多く人も戻ってきたようです。もっとも、営業時間を短縮している店も多いですし、歩いている人はほとんど全員マスクをしています。本当に元通りになるにはまだ時間がかかりそうです。

 河原町三条から少し四条に向かって歩くと丸善京都本店があります。非常事態宣言の間は閉まっていましたが、今日は開いていました。ただし、写真にあるとおり営業時間は短縮されています。言語学関連の新刊も置いています。ご存じと思いますが、地下1階が日本語で書かれた本、地下2階が英語などの外国語で書かれた本を扱うフロアです。皆さんも散歩がてらに本屋巡りを再開してみてはいかがでしょうか。

2020/05/27[情報共有]「オンライン授業の受講環境整備のための支援金」案内送付は5月29日
 「オンライン授業の受講環境整備のための支援金」の案内が5月29日に送付されます。詳しくはこちらをご覧ください。
2020/05/25[情報共有]政府による「緊急事態宣言」の解除を受けた立命館大学における対応について
 緊急事態宣言会に対する立命館大学の対応方針です。こちらをご覧ください。5月25日夕方の全面解除より前に出た方針です。
2020/05/25[情報共有]立命館大学 緊急学生支援金
 まだ募集要項が発表されていませんが、立命館大学緊急学生支援金についてのページが大学のサイトにできています。家計が急変した院生はこちらのウェブページをチェックしてください。早く募集要項が発表されることを期待します。
2020/05/25[情報共有]新型コロナウイルス禍に対する学びの緊急支援
 こちらは学校法人立命館が設置する大学・学校で学ぶ学生・生徒・児童全員が対象です。5月下旬(って、もうその時期ですね)には案内を送付するそうです。詳しくはこちらをご覧ください。
2020/05/21[その他]オンラインでの方言調査の実験
千葉県南房総市三芳の「切った」  5月1日に開催された「Covid-19の影響下における方言研究のあり方を模索するWS」で国立国語研究所の横山(徳永)晶子さんがSkypeを使ったご自身の調査を紹介してくださいました。佐々木も若い方の実践に倣って、オンラインでの方言調査をやってみようと思い、5月20日に千葉県南房総市の調査協力者の協力のもと、Zoomによる調査を実験的にやってみました。右側の画像は「切った」の波形です。第1音節の「き」が無声化していること、アクセントが標準語のような「[き]った」ではなく「きっ[た]ー」であることがわかります。

 Zoomによる調査で得たデータの第一印象は「使える」です。調査協力者に直接会って発音していただいたデータがベストなのは言うまでもありません。京都府は今日緊急事態宣言が解除されました。しかし、首都圏や北海道はまだ緊急事態宣言が解除されていません。まだ面接調査ができる状況ではありません。人と人の接触を極力抑えて調査を継続する上でオンラインでの方言調査はも有効なのではないかと思いました。

2020/05/21[情報共有]「日本の消滅危機言語・方言の記録とドキュメンテーションの作成」オンライン研究発表会 (2020年6月14日)
 今年度最初の標記の研究会が6月14日(日)に開催されます。国立国語研究所主催です。この日の研究会は、「格・情報構造 (本土諸方言) 」がテーマです。佐々木も発表する予定です。YoutubeとZoomで参加できます。質疑に参加したい方は、Zoomでの参加を申し込んでください。無料です。詳細はこちらをご覧ください。
2020/05/20[情報共有]Speech Prosody 2020がビデオカンフェランスに
 東京大学で開催予定だったSpeech Prosody 2020がビデオカンファレンスになりました。東京まで行かなくとも参加可能です。参加費は有料です。参加申し込み締め切りは5月22日となっています(5月20日15:32の時点)。参加申し込みはこちらから。
2020/05/20[情報共有]オンライン大学院進学説明会
 下記の日程でオンライン大学院進学説明会を行います。申し込み方法などは、こちらで確認してください。関心を持ちそうな知り合いに情報を転送していただけると幸いです。
  1. 2020年6月7日(日)14:00-15:00(日本時間)
  2. 2020年6月19日(金)18:00-19:00(日本時間)
2020/05/20[情報共有]「学修」「学生生活」「留学生/海外留学」に関する支援サイト
 5月18日に立命館大学が「学修」「学生生活」「留学生/海外留学」に関する支援サイトを立ち上げました。こちらをクリックして確認してください。自分に必要な情報が見つかるかもしれません。
2020/05/16[情報共有]日本語学会会長と人工知能学会会長の対談
 Youtubeで日本語学会会長と人工知能学会会長の対談が公開されました。こちらからご覧いただけます。
2020/05/16[情報共有]学外の図書館の再開
 近日中に利用可能になる学外の図書館の情報をまとめました。詳細はリンク先のウェブページで確認してください。言語教育情報研究科の院生の場合、専門に関わるのは郷土資料ぐらいかと思いますが、学外でも資料が利用できるようになるのは心強いことです。

 研究で疲れたら、小説を借りて読むのもいいかもしれませんね。日本語で読める文学は市民が利用する学外の図書館の方が充実しているかもしれません。

府立京都学・歴彩館 京都市図書館の予約資料の「来館」貸出 京都府立図書館
2020/05/15[その他]2日で図書入手
取り置きサービスで借りた本, 2020/05/15  5月13日に図書館に「事前申し込みによる取り置きサービス」で申し込んだ本を受け取ることができました。申し込んでから受け取るまで2日。迅速な対応だと思います。「事前の申し込みによる図書資料郵送サービス」だと郵送する分もう少し時間がかかるんでしょうけれど、それでも十分なスピードの対応と言えるんじゃないでしょうか。せっかくこのようなサービスがあるので、院生の皆さんも積極的に利用してください。

 これらのサービスの利用方法の詳細は図書館のウェブページに掲載されています。こちらをクリックして確認してください。

2020/05/15[情報共有]電子書籍試読サービスが8月31日まで延長
 立命館大学図書館の電子書籍試読サービスが8月31日まで延長になりました。詳細は図書館ウェブページの「電子書籍 試読サービスの延長について」をご覧ください。

 京都は緊急事態宣言の解除を見送りましたが、自治体によっては解除したところもありますね。新型コロナウィルス感染拡大が早く治まってほしいものです。そのためにも、用心を継続する必要がありますね。こまめに石鹸を使って手洗いをしましょう。

2020/05/13[その他]図書館から本を借りました。
取り置きサービスで借りた本, 2020/05/13  図書館の「事前申し込みによる取り置きサービス」で申し込んだ本を借りることができました。5月10日に申し込んで、今日(5月13日)の午後に「サービスカウンターまでお越しください」というメッセージが来ました。会議が終わった後で、早速、図書館に取りに行きました。

 「三密」を避けるために、一つの窓口で一人ずつ対応してもらうかたちになっています。そんなわけで、カウンター付近に着いてから、図書を受け取るまでに時間がかかります。図書館で働く職員の安全を考えれば、こうするしかありませんね。

 この状況で予約して3日で資料を受け取れるのは、十分満足できるサービスだと思います。大学院生の皆さんも積極的に使ってください。

2020/05/12[その他]図書館の様子
図書館開館, 2020/05/11  昨日(5月11日)、衣笠キャンパスの平井嘉一郎記念図書館に行ってきました。左の写真にあるように開館していました。まだ、中に入って図書を閲覧することはできませんが、図書の返却と予約した資料(図書・雑誌)を受け取ることはできます。僕が行ったときに利用している人はいませんでしたが、複写もできるはずです。

図書館開館, 2020/05/11  ただ、予約してから受け取るまでに時間がかかるようです。5月10日にMyLibraryから1冊本を予約したのですが、まだ利用できません。資料の請求は余裕を持ってやった方がよいようです。

* * *
 余談ですが、今日は13時から自分が出席しなければならないと思っていた会議があったの、Skypeで参加していたら、「言語研の方には退出してもらってください」と言われて退出するという出来事がありました。会議のURLが送られてきたので参加したのですが、本来僕が参加すべきではない会議であるにもかかわらず僕のところにもメールが来ていたのでした。確かに変な会議ではありました。ほかの参加者が持っている資料が僕のところにだけないのです。対面の会議だったら、会議室に入った瞬間に「あれ、今日の会議に出席を要請していましたっけ」となって、不必要なら研究室に引き返すことができたのですが、この情勢では仕方ありませんね。最初の15分ぐらい、「資料はどこだろう」とハードディスクの中をひっくり返していたのですが、無駄にした時間が15分で済んだのでよしとしましょう。自分で招集する会議ではこういうことが起きないように気をつけるつもりです。オンライン会議は便利ですが、注意すべき点もありますね。
2020/05/11[情報共有]日本音韻論学会2020年度春期研究発表会6月19日(金)13:00からオンラインで開催(非会員でも参加可能)
 日本音韻論学会2020年度春期研究発表会が6月19日(金)13:00からオンラインで開催されます。事前申し込みをすると非会員でも参加可能です。今回予定されている発表は以下のとおりで、英語教育関連のものもあります。日本音韻論学会のウェブサイトにはまだプログラムが載っていませんが、今朝僕のところに来たメールによると予定されている発表は以下のとおりです。司会者名と休憩時間は略しました。ただし、プログラムの詳細が変更される可能性もあるということですので、日本音韻論学会のウェブサイトをこまめにチェックした方がよいと思います。

 関心のある方は是非ご参加下さい。参加申し込みの詳細は日本音韻論学会のウェブサイトで確認してください。
2020/05/11[情報共有]就職支援に関わる特設サイト
 キャリアセンターが就職支援に関わる特設サイトを開設しています。そのサイトへの入り口はこちらです。ページの一番下に特設サイトへのリンクが張ってあります。「学内専用ページ」と書いてありますが、ID(大学の電子メールアドレスの「@」より前の部分)とパスワードを入れると閲覧できます。

 上で入り口として言及したのは「Beyond COVID-19」の一つのページです。Beyond COVID-19では立命館に所属する人たち(児童、生徒、学生、院生、教職員)が、新型コロナウィルス感染拡大状況のもと取り組んでいる様々なプロジェクトを紹介しています。時間があるときに覗いてみてください。自分でプロジェクトを立ち上げるのもいいかもしれませんね。

2020/05/10[情報共有]図書館利用方法の詳細
 5月5日の記事でも書きましたが、5月11日(月)から全学生・院生と教職員を対象とした「事前の申し込みによる図書資料郵送サービス」「事前申し込みによる取り置きサービス」が始まります。図書館のウェブページにこれらのサービスの利用方法の詳細が掲載されましたので、こちらをクリックして確認してください。資料の複写も可能になります。

 「事前の申し込みによる図書資料郵送サービス」「事前申し込みによる取り置きサービス」MyLibraryを使って申し込みをすることになります。資料の複写はメールでの申し込みになります。申し込み用のメールのアドレスと、メールに記載すべき事項についてはこちらで確認できます。

 これで紙に印字された資料にもアクセスできるようになりますね。図書館でこのようなサービスをしている大学はまだあまりないようです。図書館のサービスに関しては立命館大学は恵まれていると言えるでしょう。

2020/05/07[情報共有]無料で読む最新研究動向(学会の予稿集)
 今日から講義が再開したわけですが、無事受講できましたでしょうか。僕は二つゼミがありましたが、manaba+RでのファイルのやりとりもZoomでの発表と質疑応答も問題ありませんでした。

 さて、図書館の閉館が5月10日(日)まで延長されたことは5月5日の記事でも書いたとおりです。もちろん、電子書籍やE-JournalはVPN接続で利用できるのですが、紙に印字された書籍を借りられないのは痛いですね。今日は、皆さんがこの週末を有意義に過ごせるよう、無料でアクセスできる最新の研究動向について紹介したいと思います。

 ここで紹介するのは、各学会の予稿集です。予稿集は大会で発表される口頭発表やポスター発表の内容を数ページ(学会によってページ数は変わります)の文章で表したものが載っている冊子です。かつては、紙に印刷されて配布されていましたが、数年前から電子版を公開する学会が増えてきました。

 予稿集は学会誌などに投稿される前の記述や分析が載っています。新しい研究動向を把握する上で大変参考になります。

 日本言語学会のように電子化して以降の予稿集を全てインターネット上で公開しているところもあれば、期間限定で予稿集をインターネット上で公開している学会もあります。通常、研究者(学生・院生を含む)は、ダウンロードした予稿集をラップトップやタブレットに入れて学会に行き、受付で参加費を支払います。そして、その参加費が大会運営の費用となるわけです。予稿集が紙に印刷されていた頃は、受付で参加費を支払って予稿集を受け取っていました。

 上の段落に書いたことは「通常」の場合の話です。今年は新型コロナウィルス感染拡大によりほとんどの学会が大会開催を取りやめています。しかし、緊急事態宣言が発せられる前に予稿集の原稿を集めるプロセスが始まっていたため、大会は中止したけれども予稿集はインターネット上で公開する学会があります。参加費を払わずに予稿集を読める状態になっているのです。

 参加費収入がなくなったので学会を運営する上ではきつい状況なのですが、これから研究に参加していく院生にとっては無料で最新の研究動向に接することができる事態が出現しているとも言えます。僕が把握している範囲でそのような無料で読める予稿集を紹介します。以下のリストのホットリンクをクリックしてみて下さい。

 学会によっては期間を定めて読者が予稿集の著者に質問できる機会をオンラインで補償しているところもあります。公開期間が限定されていたり、リンク先が変わる場合がほとんどですので、関心を持てそうなものがあったら早めにダウンロードして目を通して下さい。

 皆さんと同世代の若者が書いた原稿が多いのも予稿集の特徴です。同世代の息吹を感じてみましょう。

 なお、日本音韻論学会は2020年6月19日(金)の13時からオンラインで2020年度春期研究発表会を実施するそうです。こちらのウェブページに非会員が参加する方法が書いてありますので、音韻論に関心のある方はチェックして下さい。

 有料ですが、日本語教育学会の予稿集も本日5月7日から購入可能になっています。関心のある方はこちらのウェブページをチェックして下さい。

2020/05/05[情報共有]図書館サービスの拡大
 昨日の記事で「研究テーマを決めようとするM1(修士課程1年次)の皆さんにとって図書館で雑誌や論文集のページをめくることができないことは大きな痛手だと思います」と書いたのですが、昨日の夕方、状況に変化が生じました。常任理事会から5月4日の夕方に研究科長宛てのメッセージが届きました。これまで、春セメスターで終了予定の学生と院生に限定されていた「事前の申し込みによる図書資料郵送サービス」の対象が全学生・院生に拡大されます。また、「事前申し込みによる取り置きサービス」も全学生・院生・教職員を対象に始まります。つまり、図書館に入ることはできないけれども図書館の本を利用できるようになるということです

 ただし、これらのサービスの利用の仕方は常任理事会からのメッセージには書いてありませんでした。連休明けに図書館のウェブページで利用方法が公開される可能性が高いと思いますので、こまめに図書館のウェブページをチェックするようにして下さい。ところで、図書館の臨時休業が5月1日付けで5月10日まで延長されています。上で紹介したサービスを実際に利用できるのはもう少し後なのかもしれません。

 二つのサービスのうち「事前申し込みによる取り置きサービス」は事前に申し込んだ書籍を図書館に受取に行くかたちで利用できるサービスです。立命館大学(衣笠キャンパス)の近くに住んでいる院生にとっては「事前の申し込みによる図書資料郵送サービス」よりも迅速に書籍を読むことができるサービスになると思います。

2020/05/04[エッセイ]こんなときだからこそ読み返しの勧め
 5月1日に「Covid-19の影響下における方言研究のあり方を模索するWS」というワークショップがZoomを使って開催されました。このワークショップは新型コロナウィルス禍によってフィールドワークができなくなった状況で方言研究者にどんな研究方法があるのか模索する趣旨のものでした。方言調査はその方言が話されている地域に行って面接調査でデータを得るのが定番です。しかし、新型コロナウィルスの感染が拡大している状況下では、面接調査は感染の原因となる危険性があるので研究倫理上実施できません。調査被害を起こす可能性があるからです。

 ワークショップでは、インターネット上の方言語形収集や電子化された資料を使った分析などさまざまな研究方法が示され、質疑応答がありました。佐々木もインターネット上の方言語形収集の話をしましたが、もともと面接調査を保管する位置づけでインターネット上の方言語形収集を行ってきたため、卒業論文や修士論文を抱えた若い研究者にとって参考になる話ができたか不安です。

 方言研究は新型コロナウィルス禍で研究に支障が出ていることがわかりやすい分野だと思います。しかし、言語研究に関連する他の分野でも研究に支障が出ているものと思います。教室での授業ができない状況下では、外国語教育学の研究も思うように進めることができないでしょう。そして、図書館に入館できない状況では全ての分野の研究で先行研究の把握に支障が出ていると言って良いと思います。

 立命館大学は学生(院生を含む)・教職員が学外からでも図書館に入っている電子書籍とE-Journalにアクセスできる体制になっていますから、他の大学よりも状況は悪くないかも知れません。とはいえ、紙に印字された媒体しかない資料が多いのも事実。専門分野の用語が載っている大辞典は図書館に入らないと閲覧できなかったりします。研究テーマを決めようとするM1(修士課程1年次)の皆さんにとって図書館で雑誌や論文集のページをめくることができないことは大きな痛手だと思います。

 こんなときに勧めたいのが手元にある文献の読み返しです。皆さんの手元に昔読んで納得した文献のコピーやファイルがあるのではないでしょうか。読んで「説得力があるな」と納得した論文は一定の水準をクリアした論考のはずです。しかし、そのような論文でも、論証が不足している部分はないか、再現可能かという観点で読み直してみると、問題点が見つかることがあります。そのような問題点が見つかったら、そこから自分が追求すべきテーマが見えてくる可能性があります。

 以前、ある院生から、日本語学習者の方言に対する意識に関心がある、でも、先行研究で新しいものがあまりなくて20年ぐらい前のものになってしまうという相談を受けたことがあります。結局、その院生は別なテーマで修士論文を書いたのですが、なかなか良いテーマだと思いました。というのは、ご存じのように言語は変化するものですし、社会も人々の意識も変化します。20年の間に伝統方言を使う人が減ったりネオ方言を使う人が増えたり、言葉を伝える媒体としてコンピュータやスマートフォンが出現したりとめまぐるしい変化があったはずです。まったく同じような属性の人に20年前と同じアンケートを行っても違う結果が出る可能性があります。そんなわけで、これはなかなか良いテーマだと思ったわけです。20年前と同じ結果になっても面白いし、違っていても面白い。前者の場合、先行研究の分析の妥当性を補強することになりますし、後者の場合、結果が違った要因を考察すると研究を発展させることができます。

 あとは、読んで「説得力があるな」と納得した論文があったら、そこで提案された分析が他の現象にも当てはまるか検証するのもよいと思います。

 研究テーマを探すために手元にある文献を読み返すことを勧めます。手元にある論文は最新の研究ではないと思います。しかし、論証の不足や再現可能性そして他の現象への応用について考えを巡らせてみると自分の追求するテーマが見えてくる可能性があります。

 とはいえ、最新の情報にアクセスしづらいのはきついですよね。新型コロナウィルス禍の中で研究者は研究を継続するために様々な工夫をしています。「研究科長のつぶやき」では、そうした工夫についても紹介していこうと思います。


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