研究内容

貪食細胞による病原微粒子の認識機構(中山グループ)

マクロファージや樹状細胞(DC)といった貪食細胞は、体内に侵入した細菌や体内で発生したアポトーシス細胞などの病原性微粒子を認識し、速やかに捕食すること(phagocytosis)によって生体防御の砦として重要な役割を担っています。私たちは貪食細胞がどのようにこれら病原体微粒子を認識し、貪食するかについて研究を進めています。これまでに、黄色ブドウ球菌の認識受容体としてPIR-B、およびDC1のアポトーシス認識受容体としてTim-3を同定しました。

  • Nakayama et al. J. Immunol. 2012
  • Nakayama et al. Blood 2009
  • Nakayama et al. J. Immunol. 2007
  • 中山勝文, 小笠原康悦「細菌感染におけるペア型受容体の役割」Surgery Frontier メディカルレビュー社 21巻, p41-45, 2014年
  • 中山勝文 「Timファミリー分子を介したアポトーシス細胞貪食機構」生物と化学 日本農芸化学会 会誌 48巻, p806-808, 2010年

環境微粒子に対する炎症応答機構の解明(中山グループ)

今日PM2.5、ディーゼル排ガスといった環境微粒子による健康被害が国際的に大きな社会問題となっています。また近年のナノテクノロジーの発展に伴い、多種多様なナノ材料が開発されていますが、これらの人体への影響もよく分かっていません。これら環境微粒子は生体内に入ると主に貪食細胞に認識され捕食されます。本来、貪食細胞は病原体を捕食することによって生体防御の砦として重要な役割を担っていますが、環境微粒子を捕食した場合は、ストレスを強く感じ、そのストレス応答から慢性炎症を惹起します。例えばシリカやアスベストによる珪肺や中皮腫はよく知られていますが、これらの発症にはマクロファージによる炎症応答が関与していると考えられます。

私たちはマクロファージがどのようにこれら環境微粒子を認識するのかを解明すべく研究を進めています。これまでに、マクロファージはクラスBスカベンジャー受容体SR-B1を介してシリカ粒子を認識すること、また次世代ナノ材料のカーボンナノチューブの認識にはTim4が関与すること等を明らかにしました。

  • Omori et al. Cell Rep. 2021
  • Nakayama, Front. Immunol. 2018
  • Tsugita et al., Part. Fibre Toxicol. 2017
  • Tsugita et al., Cell Rep. 2017
  • 中山勝文「新規シリカ受容体の同定」臨床免疫・アレルギー科 科学評論社 68巻 p544-549, 2017年

Trogocytosisによる免疫応答制御(中山グループ)

Trogocytosisとは、ラテン語で齧る(かじる)を意味するtrogoに由来する造語です。これは、2つの細胞が接触した際に一方の細胞膜断片がもう一方の細胞へダイナミックに細胞間移動する現象を示します。Phagocytosisが貪食細胞特有の機能であるのと対照的にTrogocytosisは全ての細胞が持つ機能だと考えられます。これまでに私たちは、主要組織適合複合体MHC分子が免疫細胞間で移動し、免疫応答を制御することを明らかにしてきました。Trrogocytosisは多くの生物学的応答の修飾に関与していると考えられていますが、まだその分子メカニズムや生理機能など多くのことが分かっていません。

  • Nakayama, Front. Immunol. 2015
  • Nakamura et al., PNAS 2013
  • Nakayama et al., PNAS 2011
  • 中山勝文「Trogocytosisによる免疫調節機構」臨床免疫・アレルギー科 科学評論社 67巻 p82-87, 2017年

好中球の機能制御メカニズムの解析(野依グループ)

貪食細胞の1種である好中球は、体内に侵入した細菌などの病原体を貪食後、細胞内に存在する消化酵素によって殺菌・分解することで生体防御に寄与します。一方で、好中球の過度な活性状態が持続すると深刻な組織傷害を引き起こす原因となり、病原体の排除後は直ちに不活化あるいは除去される必要があります。

私たちは、好中球の機能制御機構を明らかにし、人為的制御法の確立を目指しています。現在は、好中球に発現するプリン受容体の機能に注目して解析を進めています。

インフルエンザウイルス関連細菌性肺炎の重症化メカニズムの解析(野依グループ)

1918年のスペイン風邪、2009年の新型インフルエンザでは、それぞれ推計約5000万人、約28万人が犠牲になったとされています。

細菌と共感染することで、肺炎が重症化することが原因の一つと考えられていますが、そのメカニズムについては多くの不明点が残されています。

これまでに、インフルエンザウイルスと細菌の共感染細胞で、無数の細胞膜突起構造が形成誘導されることを見出しました。HIV-1やプリオンなど種々の病原体が、遠隔細胞へ感染伝播する際にもこの構造体を利用し、免疫機構や治療薬から回避していると考えられており、病原体による”ハイジャック”とも例えられることがあります。

そこで、インフルエンザウイルスと細菌の共感染時に観察されたこの構造体が、免疫機構や治療薬からの回避に寄与するのか解析し、さらにその形成制御機構を明らかにすることで、新規治療薬の開発へ繋げたいと考えています。

立命館大学 薬学部 免疫微生物学研究室

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