研究概要

マーケティングと組織間関係

マーケティングは、売手と買手の交換を科学する学問です。モノやサービスが生産されてから最終消費者の手元に 流通するまでには、様々な売手と買手の交換が行われますが、その大半は、個人ではなく、組織間の交換です。 企業は、買手組織として、自社製品の生産に必要な原材料や部品を他社から調達し、売手組織として、 自社製品を他社(顧客や流通業者)に販売しています。こうした組織間の販売・調達、組織間関係の維持・構築に かかわる多彩なトピックを大きな研究対象としています。より具体的には、下記のようなトピックに関心を 寄せています。


マーケティング・チャネル(流通・販売)

製品やサービスを流通させるために、企業組織は、販売経路であるマーケティング・チャネルの管理が必要であり、 これは「チャネル戦略」と呼ばれ、著名なマーケティング・ミックス(4P)のうちのPlaceに該当します。 製造業者、流通業者、小売業者、消費者など、多様なチャネルメンバーとかかわりながら、 どのようなチャネルを構築するのか、そして、そうしたチャネルメンバーとどのような関係を維持・構築するのかについて研究を進めています。


ソーシング(調達・購買)

自社製品の生産に必要なモノやサービスを、誰から、どのような形態で調達するのかは、企業にとって重要な戦略課題です。 どのような基準で調達先のサプライヤーを選択するべきか、そもそも、部品や原材料を自社で内製すべきか外注すべきかといった 研究課題に取り組んでいます。 さらに、自社製品を個人消費者に売るために、消費者の行動や心理を理解することが重要なのと同じように、自社製品を他社組織に売るためには、 買手組織の行動や心理を理解することが重要です。企業の調達・購買活動には、営業担当者の宣伝や、Webサイトの情報だけではなく、 他社からのクチコミも大きな影響を与えると言われています。そうした企業間のクチコミ(B2Bクチコミ)が、 購買プロセスのどの段階で、どのような役割を果たすのかについて、研究を進めています。


グローバルストラテジー(国際戦略・海外進出)

グローバル化が進んだ現代において、数多くの企業が、自社製品を海外で販売したり、あるいは、海外から原材料やサービスを調達したりすることで、 海外取引にかかわるようになってきました。そうした企業にとって重要な経営課題の一つは、いかにして、外国企業との関係を維持・構築するかです。 外国企業との関係には、例えば、輸出企業と輸入企業の関係、国際アライアンス関係、ジョイントベンチャーにおける出資企業の関係などが挙げられます。 国内関係とは異なり、企業間の国際関係は、文化、制度、規範、価値観などが互いに異なるため、その維持・構築は比較的難しいものです。 どうずれば、外国企業と良好な関係を維持・構築することができるのか、どのような企業とパートナーになればよいのかなどについて、研究を進めています。


バウンダリースパナ―(組織における個人)

企業間の関係管理に直接的に携わり、企業という境界(バウンダリー)を超えて他企業との橋渡し役(スパナ―)を担う人物は、 バウンダリースパナ―(boundary spanner)と呼ばれています。典型例としては、川下の流通業者や顧客との関係管理を担う「営業担当者」や、 川上の原材料・部品メーカーとの関係管理を担う「購買担当者」が該当しますが、他にも、他企業との共同開発に携わる人物や、ITサービスを調達する担当者なども、 含まれます。言うまでもなく、企業関係の管理には、こうした個人の役割が極めて重要であり、バウンダリースパナ―はどのような方略を採るべきか、 どのような個人であれば高い営業成果を出せるのかなどについて、関心を寄せています。