研究項目A01 結晶成長技術

研究項目A01「結晶成長技術」では、InN系窒化物半導体、AlN系窒化物半導体の高品質結晶成長技術の開発を行う。窒素の平衡蒸気圧が高く、解離温度も低いため高温での結晶成長が困難であり、未だ高品質結晶を得ることが困難なInN系窒化物半導体に対しては、低温成長に適したRFプラズマ励起MBE法およびパルス堆積法を用いて取り組む。特に、成長温度の高温限界向上、表面マイグレーション促進、ヘテロ界面反応制御による結晶高品質化に対して、装置の開発、その場観察による結晶成長素過程の制御まで踏み込んだ研究を行い、InN系窒化物半導体結晶成長に関わる本質的課題の解決に取り組む。またInN薄膜成長用バルク結晶基板が得られない現状から、新規基板材料の探索も精力的に進める。AlN系窒化物半導体に関しては、短波長発光デバイス実現のための高品質AlN、高Al組成AlGaN薄膜が早急に求められている。これに対し、本研究項目ではMOVPE法を用いた欠陥伝搬制御による高Al組成AlGaN 薄膜の高品質化、およびHVPE法を用いた原料分子制御法によるAlN、AlGaN厚膜基板結晶の開発を行う。

研究項目A02 物性評価

研究項目A02「物性評価」では、窒化物半導体発光デバイス設計に必須な物性値を明らかにし、量子構造における輻射・非輻射再結合過程を解明することにより、発光波長の深紫外への超短波長化、赤・赤外への超長波長化を進め、さらに窒化物系の優れた物性を活かした超高効率化対策を打ち出すことを目的とする。具体的には、現在不明な全組成域でのGaInN、AlInNの3元混晶、およびAlGaInNの4元混晶のバンドギャップや電子有効質量、価電子帯エネルギー構造など、光デバイス設計に必須の物性値を明らかにする。また、広波長域の分光、局所領域の分光、点欠陥の検出、高速過渡応答分光など3グループから得られる結果を総合的に討論し、広波長領域の発光に対応するナノへテロ構造の設計を行う。

研究項目A03 短波長デバイス基盤技術

研究項目A03「短波長デバイス基盤技術」では、既に電流注入による発光は観測されているものの、その外部量子効率が数%或いはそれ以下に留まっている波長350nm以下のLED、および光励起では250nm以下の発振まで確認されているものの、電流注入では350nm以上に留まっているLDについて、現在までに培った独自技術を基にした新しい取り組みによる基盤技術の確立を行う。具体的には、新しい結晶成長法による高品質AlGaInN系結晶技術、内部量子効率100%の活性層作製技術、および高正孔濃度p層作製技術を確立する。更に、それら基盤技術の集大成として、高効率紫外LEDの実現、および紫外 LDの実現を目指す。

研究項目A04 長波長デバイス基盤技術

研究項目A04「長波長デバイス基盤技術」では、AlInGaN系半導体の優れた材料特性を基礎に、その潜在能力を顕在化させて、動作波長域の拡大を達成する。ここでは、近赤外域までをカバーしつつ、新しい窒化物光デバイスを創成して、従来の窒化物半導体の限界を打破し、情報、通信、エネルギー分野に寄与するAlGaInN系光デバイスを開拓することを目的とする。具体的には、AlGaInN系発光デバイスの長波長限界を広げつつ、発光量子効率の向上を図り、ナノ結晶効果を基礎にInGaN系赤色LEDの高輝度化、近赤外InGaN系発光デバイス実現の基盤技術を開拓する。光通信レーザの高性能化を達成するため、微量の窒素を含むGaInNAs系レーザ結晶の成長プロセスの改善を進める。さらにナノ結晶で極限ナノヘテロ制御を進めて、高速応答性に優れたサブバンド間遷移(ISBT)を活用して、微細回路に適合するナノISBT光デバイスの実現を狙う。これらによって窒化物光デバイスの情報・通信への応用の幅を拡大する。一方、エネルギー分野では、InAlNの優れた材料特性を活かした超高効率InAlN太陽電池の開拓を進め、地球環境保全とエネルギー有効利用に資する。このように本研究項目では、AlGaInN系半導体の特徴と潜在能力を発現させ、計画研究と公募研究によって、窒化物系による革新的な長波長域光デバイス技術基盤の確立を行う。