2013年10月10日~10月14日 「東日本・家族応援プロジェクトin きょうと 2013」
「東日本・家族応援プロジェクトin きょうと 2013」開催しました
(応用人間科学研究科教授・村本邦子)
今年も、きょうとNPOセンターの主催で、2013年10月10~14日、ウィングス京都にて、「東日本・家族応援プロジェクトin きょうと 2013」を開催しました。
プロジェクト実施に先立ち、10月1日、きょうとNPOセンターから内田香菜さんを招いて、京都の避難者の状況についてお話を聴かせて頂きました。現在も31万人ほどが避難しており、京都には960人ほどの避難者がいるそうです(700人ほどが京都市内在住)。3割が「母子避難」で、その支援はいろいろあるが、男性への支援が届いていないかもしれないとのお話でした。また、もともとは一時避難のつもりで来られた方々も、今では3割ほどが京都での永住を希望されているそうです。時間経過とともに、ますます「避難者」との括りでは語れない側面が出てくるでしょう。
私は、10月12日に「支援者支援セミナー:プロに聞く<気持ちの整え方>」を担当しました。昨年は、スケジュールの関係上、プロジェクトとは別の形で12月に避難者の支援の場へ出向いてセミナーを実施しましたが、今回はプロジェクトのなかに設定し、支援の場に出向くより参加者は少なくなりましたが、支援者にとっては、日常を離れることのもたらす意味もあるのではないかと思います。
参加者の自己紹介では、支援者の3.11の個人的体験が語られ、それぞれが「心理的被災」をし、それゆえに支援者として活動していることをあらためて思いました。自分自身を含めてです。物理的被災に比べ、心理的被災は見えにくく、主観的なものであるため、語られることが難しいものです。とくに、甚大な被害をもたらした災害についてはそうでしょう。大きな被害を受けた被支援者に対して罪悪感を持ちやすくもなります。支援者は、まず、自らの状態を理解し、どこかで自分をケアすることも必要です。セミナーでは、支援者がこれまでぶつかってきたさまざまな困難について語られましたが、みなさん、それぞれなりに工夫して、すでに乗り越えてこられたことが印象的でした。それでも時に、こうして語り合い、自分たちのやってきたことの意味を確認することが必要なのでしょう。
被災地と離れれば離れるほど、時間経過とともに問題は見えにくくなっていきます。支援者のみなさんとともに、私たちも細く長く関心を持ち続け、関わっていけたらと思っています。
京都2013 (応用人間科学研究科教授 団士郎)
昨年に続いて二度目の京都マンガ展&マンガトーク
東北で通常一時間半取っているが、今回は1時間の講演になる。
参加者に珍しい人や馴染みの人など様々な中、途中から入室した人のことが気になった。後で聞くと、講演に参加する予定は全くなかった人が、小冊子「木陰の物語」を受け取って帰路についた人が読み、急遽戻ってきて参加したとのこと。
被災地で開催するのと、そこから避難してきている人たちを意識して開催するのと、両者共に、刻々の事情変化はある。
現地から離れるほどに忘却や風化にさらされる程度は大きくなっているに違いない。
そんな避難地の家族全戸に小冊子の配布が実現できるといいなと、初年度から考えていたことが、実現しそうな流れの今回だ
何が何を支えるのかなど、簡単にも単純にも言えない。しかし人が人によって支えられることは違ってはいないだろう。
時間も経つ、距離もある、そんな京都での被災地応援プロジェクトはどんな風にこれから展開してゆくのがいいのか。社会の動き全体に科学的視線(情緒的すぎないという意味)を向けてながら考え続けたい。
「家族漫画展」での出会いを通して(応用人間科学研究科 対人援助学領域 M2 清武愛流)
昨年同様、今年度の「家族漫画展」=『木陰の物語』は、ウィングス京都の2Fにある、通路で行われた。この通路は、展示会場として利用される場ではあるが、ひっきりなしに何か展示がなされているわけではないようだ。
このような環境であるゆえ、漫画展に来られる方ではなく、他の用事で来られた方の通路であり、来られた方の目線では、たまたま何か展示してあるものに出会った、ということになるのだろう。
私は、ここで、通られる方に挨拶をし、漫画展をしている、と声をかけていた。実際、通りすぎて行かれる方が多い。そんな中、読まれる方や、何?と気になって近づいて来られる方もちらほらいらっしゃる。私は、ご自宅にお持ち帰りいただける小冊子を、お渡ししている。
今年は二年目ということもあり、昨年来て下さった方もいらっしゃった。「昨年もお会いしましたよね…?」とお声掛けをすると、「はい…」と返ってきた。漫画をじっくりと読まれていた。帰りのエレベーターをお待ちの際、私は「よかったですか?」と尋ねた。戻って来られ、漫画の感想を仰って下さったり、このプロジェクトについて尋ねて下さった。そして、互いに何をしている人なのか、名前などを知り合う機会となった。
支援である場合、先にどのような人であるのかを知ることから始める、もしくは、予測がつくであろう。しかし、この場では、ゆるやかに知り合い、そして、さまざまな側面を知りうる。つまり、人はゆるやかに自身の存在を表現しており、過程がこの場で起こっているとも言えるのだろう。
また、私はエレベーターを待たれている方に冊子をお渡し、漫画展をしていること、作者がトークショーをしていることを告げた。その方は、用事があるとおっしゃり冊子を受け取り出て行かれた。20分ほど経ち、戻って来られ、「トークショーに今からでも参加できるか」ということを尋ねて下さり、ご案内する機会となった。
トークショーが終わり話しかけて下さった。戻って来られたのには理由があった。「冊子を読み、すごくいい物語だと思ったから、戻ってきた」ということだった。お子さんの習い事を待っている時間帯だったそうだ。
また、最終日、パネルを片付けている際、その方と友人、お子さんたちが、漫画展の近くにあるテーブルで何かされていた。私は、友人の方に冊子を持って行った。「漫画がすごくよかったから、あとで見ようと思っていた」「常設ではないのか」などと話して下さった。そして、その友人の方たち「他の方にお渡ししたいということはないか」と尋ねると、渡したいとのことで、追加でお渡しさせて頂いた。
このように、何だろうかと思い目を止めたものに「よかった」と思え、ご自身の思いを誰かに伝えていることが予測されるかかわりであった。これを通し、漫画展をヒューマン・サービスの場だと考えると捉えるのならば、サービスから離れて自身の力を発揮することができているのではないかとも考えられる。
目的が明確であり、技法や手法がある場ではないのだが、その人の存在がこの漫画展ではしっかりと残っているように感じた。
最後に、昨年も設営に携わっていた、きょうとNPOセンターのアルバイトのスタッフがいた。その方を通し、共に別の場であるが活動をしており、1年に1度ここでお会いできることも嬉しく思った。
この5日間を通し、プロジェクトの開催、パネル・冊子の作成、場の作成などに携わる方、参加者の方がいて、『木陰の物語』の漫画展はつくられているように思った。
再会できる喜びもあった。しかし、お声掛けして驚かれた方もいらっしゃった。世話人としては、少々申し訳ない思いにもなる。だが、また急にお声掛けをすることもあるだろう…。
来年もまた、よかったら足をお運び下さい。ありがとうございました。
「東日本・家族応援プロジェクト in きょうと 2013」に参加して (応用人間科学研究科 対人援助学領域 M1 奥野景子)
私は、本プロジェクトの「団士郎の漫画トーク」、『プロから学ぶ「気持ちの整え方」』、『これからの自分をつくるための「キャリアの棚卸し」セミナー』に参加させていただいた。
「団士郎の漫画トーク」は、本研究科の教授であり漫画家でもある団士郎先生が描いた家族をテーマにした漫画を通して家族について考えるセミナーであった。このセミナーの参加者の中には、たまたま会場に足を運び、たまたまセミナーのことを知り、たまたま参加したという方もいた。そのような参加者の方は、たまたま足を運んだ会場で、たまたま何か気になることがあり、たまたま時間があったためにセミナーへの参加を決めたのだと思う。偶然が偶然のまま終わることもあると思うが、偶然が必然に変わることもあり、何かをしようと思って行動をしていなくても、その行動が誰かの何かに働きかけていることもあるのだと思った。震災復興支援プロジェクトは、直接的な支援や援助とは違う。10年かけて行う長期的かつ直接的な支援や援助とは違う角度から東日本大震災を見つめるプロジェクトだ。目には見えにくいかたちでのアプローチになると思うが、このプロジェクトによって生まれた偶然から何らかの必然が生まれればと思った。
『プロから学ぶ「気持ちの整え方」』は、東日本大震災の被災地や避難者のサポート活動に取り組む方が対象で、サポートを続ける中で生じる葛藤や悩みについて話し合うセミナーであった。参加者の方からは、「被災者の気持ちを想像することは出来るが、完全に分かることは出来ないもどかしさ」、「支援者間における支援に対する姿勢や意識の相違」などに関するお話があった。様々なお話が交わされる中で、私は参加者の方が抱えている苦悩や悩みは、東日本大震災に対して支援を行っているが故に生じたものではなく、支援者であれば誰もが抱くものではないかと思った。私自身、理学療法士として働いており、患者さんと接するときに今回挙がったような課題にぶつかることもあるからだ。東日本大震災は特別な出来事であったが、ある意味特別でない部分もあり、そこで生じた課題は様々な角度からとらえることができ、意外なところから解決策を見出すこともできるのではないかと思った。
『これからの自分をつくるための「キャリアの棚卸し」セミナー』は、東日本大震災によって被災した方を対象にしたもので、自身の今までのキャリアとこれからのキャリアについて考えるセミナーだった。被災者の方の参加は一名で、その他に五名の参加者がいた。今回のセミナーでは、被災者の方と震災や避難のことについて話した訳ではない。しかし、自身のキャリアについて考えるワークを通して、被災者の方も東日本大震災という大きな課題を抱えながらも生きているという事実を実感することができた。本プロジェクト参加に向けた事前学習として、京都府災害支援対策本部が東日本大震災に係る京都府内への避難者に対して行ったアンケートを読んでいた。京都への被災者の中には仕事に関して「先が見通せず気持ちの上で就労に踏み切れない」と述べている方もおり、仕事や今後の生活に気持ちを向けられない人が多いのだと思っていたが、実際に被災者の方と接してみて、違う感情を抱いている人もいるのだと思った。アンケート結果を見たときには、主としてアンケートにどのように答える人が多いかに注目し、被災者の傾向を捉えたいと思っていたが、実際には一人ひとりの考え方や受け止め方は違うため、その方に応じた対応が必要だと思った。
私は、今後、岩手県宮古市で開催されるプロジェクトにも参加する予定となっている。被災地や被災者の傾向や特徴を捉えることは大切だと思うが、データや文献、記事からはわからないことを自分の目で見て、自分の耳で聞いて、色々なことを感じ、学んでいきたいと改めて思った。
プロジェクトに参加して (応用人間科学研究科 臨床心理学領域 M1 久本真由美)
東日本・家族応援プロジェクトin きょうと 2013」に初めて参加させてもらい、いろいろと貴重な出会いがあった。まず団先生の家族漫画展と合わせて行われた漫画トーク講演会に参加させていただいた。先生の漫画に描かれているお話しは、先生が見聞きして触れてきたたくさんの「家族の物語」。その中から先生の感じられた「多様性」の素晴らしさ、私たちが依存で家族や他人とつながる危険性、とはいえ「孤立」する事は危うく、むしろいかに「ネットワーク」の中で生きるべきかを模索して行くべきであるという示唆を受けた。「人は記憶(物語)の塊」であるという先生の漫画やカウンセリングを通してのお言葉は、聴衆者の心の中にあるそれぞれの物語を尊重してくれているようで、皆先生のお話しに身が入った。先生は聞かれた実際にあった物語を紹介して下さり、その後に初めてお会いした隣に座っている方と感想を話し合った。家族を持たない人はこの世にはいないので、皆何かしらの感想を持ち共有することができた。先生は、漫画を通して私たちに過去のたくさんの「家族の物語」に触れるような機会を提供してくれているのだと実感した。皆それぞれに多様な物語があることを心に刻みながら、先生のおっしゃる通り「未来はまだ始まってない多くの物語の時間」なのだろうから未来を見る事の大切さを感じさせられた。
続いて東日本大震災の被災地や避難者のサポート活動に取り組む方対象の<プロから学ぶ「気持ちの整え方」>をテーマに村本邦子先生が開かれた講座に参加した。参加者は、行政や民間のそれぞれに場所は少々違えど、実際サポート活動に取り組んでいらっしゃる方々であった。この講座に参加して、ここ震災後2年半のそれぞれのサポート活動とそれに伴う痛みを実際に伺えたのは貴重な経験であった。皆さん何度かサポートをする際に問題にぶちあたり、突破し、またフラストレーションを感じたりとの経験をお持ちで、それぞれの体験からアイデアを交換していただき、考えさせられる事も多かった。一番話された事は当事者との距離感(当時者性と専門性)を取る難しさとそこから生まれる罪悪感・虚無感であった。いかに「あなたには、私の気持ちは分からないわよ!」のように代表される「当事者の怒り」と向き合うか、それをいかに個人のレベルで受け取らないようにするかが話された。サポート活動をしている方々が皆多かれ少なかれ似たような経験をされていて、その経験を共有できた事は、個人に留めず「誰にでもある事なのだ」という認識が互いに出来たので良かったと思う。その認識はサポートをするにあたって私たちは残念ながら当事者の身内にはなれなく、いかに「お互い息の長く続けられる関係」を作っていけるかが本当の課題であるという事を新ためて確認をする事ができた講座であった。震災から2年半、避難者はもちろんのことサポート側にも今までの事を省みて、心を新たに整える時期に来ているのかもしれないが、今回のようにこれからも今までの経験を共有しそこから学んだ事をステップとして避難者のサポートを続けて行けたらどんなに良い事だろうと思わざるえなかった。
会場ウィングス京都
パネル展
漫画トーク
支援者支援セミナー
漫画トーク