授業イメージ写真

応用人間科学研究科 震災復興支援プロジェクト

震災復興支援プロジェクト第1回報告会を行いました。(チラシ)
  日時:10月17日(月)10時~12時
 場所:創思館303・304


9月19~24日 青森県むつ市「家族応援プロジェクト~団士郎の家族マンガ展と家族応援セミナー」




 9月19~24日 青森県むつ市で「家族応援プロジェクト~団士郎の家族マンガ展と家族応援セミナー」を実施しました (村本邦子)
  家族マンガ展のアイディアは、もともと、むつ市立図書館で生まれました。そこで、プロジェクトを下北のむつからスタートさせました。下北は、直接的な被害は少なかったものの、原子力船むつや六ヶ所村に代表されるように、原発との関係が深く、日本原燃が本社を置くところです。さらに、陸海空の自衛隊基地が配備され、アメリカ空軍の三沢基地もあります。むつには、災害復興のために被災地に赴く自衛隊や原発関連の仕事に従事する人が多く、その子どもや家族もさまざまな影響を受けています。
  むつでは、下北地域県民局との共催で、児童相談所の方々を中心に大きなお力添えを頂き、本プロジェクトを無事に終了することができました。今後も長期的に協働していきたいと考えています。来年も9月第1週での開催を予定しています。ただでさえ忙しい日常業務のなかで、さらに仕事を増やすことになるのは心苦しいのですが、一緒に力を合わせて仕事をする絆から力が生まれていけばいいなと願っています。

 むつ市のプロジェクトのチラシ

家族応援プロジェクトinむつ~作者として (団士郎)
  「木陰の物語」はもう十年以上雑誌に連載している私のライフワークの一つ。家族心理臨床を中核とする自分の活動の中で、「描画表現」分野を担当するものである。 これまで雑誌、新聞などでマンガを発表し、読者の感想もたくさんいただいてきた。また、多くの漫画家と合同の展覧会も経験してきた。しかし個展のギャラリーでお客さんを迎えるのは初めてだった。 「木陰の物語」は印刷媒体で、手に取れるサイズのマンガとして見てもらうのが通常だが、このパネル展では大きく拡大した、まるで絵巻物の屏風のようにカラー化した作品を展示している。
  「木陰の物語」を見てもらうといつも、人それぞれ好みの作品が異なるなぁと思う。今回もある人は「故郷」と題した作品を見て、自分の母との思い出を語った。又ある人は、「さぁ、もういっぺん」を見て、これが一番良いと述べた。 突然、「作家の先生ですか」と話しかけてきたご婦人は、どの作品にか触発されたのだろう。自分の末娘が病気で亡くなった時、夫から言われた言葉が悔しくて忘れられないという話をされた。展示されたどの物語が、見た人の心の中のなにを動かすのかは分からないが、人はそれぞれ、記憶の中に家族の物語を秘めている。あらためて、年代、性別、自身の境遇によって、思いを重ねる作品が異なることを知ることになった。
  いずれにしても、見てくれた人たちがそれぞれ、そんな一篇を見つけ出してくださると作者冥利だ。対人援助の枠組みを、出来るだけ広く捉えたいと思っているからだろうが、このそれぞれが内面に抱えた物語が、その人が生き続けるエネルギーになるように思う。なにかを見て、投影できるなにかを抱えつつ生きている自分を実感できることが、他者と自分の繋がりを感じ取れる一方法ではないかと思う。似た思いの人がいたんだ・・・と思えるだけで、その人はこの後どうしただろうかとか、自分だけではなかったんだと感じられたりする。これこそが見知らぬ他者との繋がりと呼んでいいものだろう。そんな発見のあるギャラリーでのパネル漫画との遭遇であればいいと思う。
  地域の公共施設のギャラリーで開催する漫画展。それほど多くの方が足をはこんでくださるわけもないが、たまたま目にした人に、何かの発見や気づきが生まれたら、それは幸運と呼んで良いものではないか。大げさでなく、大量でなく、一人ひとりの心のひだに添う小声のエールが届いたら、大成功ではないかと思った。


父と子の絵本ワークショップを担当して(中村正)
  青森県むつ市立図書館で「父と子の絵本の読み聞かせワークショップ」を実施しました。担当は、中村正です。
  日差しはきつかったのですが、秋の気配を感じた9月24日の土曜の朝、10時30分から12時までの楽しい時間でした。
  「パパも子育てすべきだ」という無粋なことは考えていません。楽しい子育てをする小さなアイディアを伝えたいという今回の主旨を話しました。こんなことをしている私の自己紹介もしました。こうした活動をするようになった経過や関心についてです。日頃は犯罪、虐待、暴力にかかわる社会病理学・臨床社会学の話ではなく、それ以前の話です。たとえば、IQと EQの話をしました。intelligence quotient/emotional quotientのことです。感情を言葉にしていくことの大切さを伝えるための「感情の知性」の話です。男性向けのいろんな取り組みをしていることも紹介しました。放送大学では「世界の結婚と家族」という科目の「父親問題と父親政策」の担当をしているので、どこでも見られるよという話もしました。
  まずは気分ほぐしです。いくつかのゲーム風のワークをしました。ことば、からだ、かかわりの関係を深めるためのものです。はじめてのパパたちの出会いをうまくすすめるためのウォーミングアップです。
  まず、からだほぐしと気持ちトークです。二人一組になり肩もみをしました。一分間、黙って揉む、次にはおしゃべりしながら揉むという作業をおこないました。
  次に、「あとだし負けジャンケン」の練習です。文字通り、後に出して負けるというゲームです。後に出しても勝ってしまうのです。最後に、「あいこ」になった時に握手をします。勝ち負けのない平和な握手になり、ホッとします。家族同士でやると面白いともアドバイスします。
  最後に、言葉イメージ練習です。一つ目のお題は「あめがふる」です。私が「あめがふる」といいます。次々とパパがいいます。「しとしと」。回していきます。「ジャージャー」、「ごうごう」、「ぽとぽと」と。「わんさわんさ」というのもありました。「ばしゃー」、「さらさら」、「ぴちぴち」、「どんどん」、「ごーごー」と。たんなるイメージですが、体験と重ねて気持ちがこもる音です。
  二つ目のお題は「ひとが歩く」です。同じように続けていきます。「てくてく」、「ぶらぶら」、「さくさく」、「ぽとぽと」、「のしのし」と歩く様子を音でつないでいきます。「ああいそがしいそがし」、「おそるおそる」、「どんどん」とでてきます。もっと情景を含めて、「てをつなぎ」、「足をとられ」、「柵を越え」、「海をこえ」とも広がっていきます。
  こうしたことを練習するのは絵本の世界に入るためです。こうしたことばはよくでてきます。楽しく子どもとシンクロするための「のり」が大切だと思うからです。自分の体験と重ねてのイメージ練習ともいえます。気持ちを込めてという意味はこういうことだとも話します。滑舌もよくなります。

  時間がなくてできなかったこともあります。「かっぱ」という谷川俊太郎さん詩があります。

    かっぱかっぱらった
    かっぱらっぱかっぱらった
    とってちってた

    かっぱなっぱかった
    かっぱなっぱいっぱかった
    かってきってくった

  これはどう読んだらいいのかな?というゲームです。いちおう正しい読み方は、次のようです。でも楽しめればいいので、正解を探すことが目的ではありません。念のため。

    かっぱ/かっぱらった/かっぱ/らっぱ/かっぱらった/とって/ちってた
    かっぱ/なっぱかった/かっぱ/なっぱ/いっぱかった/かって/きってくった

  これらは「レポートトークとラポートトーク」の練習です。男性問題についての取り組みから大事だと思った事柄です。とにかく初めて出会うパパたちです。ワークをしながらうちとけあいが一気にすすみました。
  就学前の子どもとパパが5組、参加してくれました。早速、パパが読みきかせた方がいいとセレクトした絵本の紹介です。まず、エリック・カールの仕掛け絵本、『パパ、お月様とって』を紹介しました。パパの気持ちが雄大になるのです。頼もしく思われているので、そう子どもに言われたら、「よっしゃ!」となります。他には、佐野洋子さんの『100万回生きたねこ』(講談社)、田島征彦さんの『じごくのそうべい』(童心社)もおすすめしました。そして今回、一押しとしてとりあげたのは宮西達也さんの「ティラノサウルス」シリーズです(ポプラ社)。『おまえうまそうだな』、『おれはティラノサウルスだ』、『きみはほんとうにステキだね』、『あなたをずっとあいしてる』など多数でている人気絵本です。『おまえうまそうだな』という絵本のタイトルを大きな声で読むだけでも子どもたちは大騒ぎです。
  私が『パパ、お月様とって』と『100万回生きたねこ』を、ゆっくりと、感情を込めて読みました。ここまではパパだけの会です。子どもたちを招いて今度はパパたちの番です。すきなところに陣取ってパパと子どもたちの絵本タイムです。おとなしくパパにだかれている子ども、絵本を指さししながら別の話へとひろがっていく子ども、神妙な顔つきで話に食い入る子ども、いろんな輝きがありました。
  最後に今日の気づきの時間です。パパたちがいい絵本に出会えたことだと異口同音に語ってくれました。パパが読んで元気になる絵本、それをもとに子どもに読み聞かせることの楽しさを感じてくれたようです。

プロジェクトをお手伝いして (応用人間科学研究科対人援助領域M1 上岡由季)
  同じ日本という場所であっても日常会話に耳を傾けると、私たちにとっては非日常なものが侵襲し、普通の生活に巣食っているという印象を受けた。具体的にその事例を挙げると、一つは軍の話である。むつ市周辺には自衛隊や米軍の基地が広範囲に存在し、市民はそれに制約されることもあるため日常の関心事の一つであるようだった。二つ目は原発である。原発関連の施設が周辺の町村に点在しており、すぐ見えるということもあるが、やはり一番は経済的な利益の話である。人口に見合わない巨大な公共施設や舗装された道路などが異様な雰囲気を創り上げていた。
  しかし、それでも自然が豊かな土地で、人々は暖かく優しい。預かった子どもたちもいい子ばかりだった。とても良い場所である。この先10年、100年、ずっとこの場所を大事にしていくにはどうしたらいいだろう。そういったことを外から見た人間が考えることに意味があるのだと、このプロジェクトを通して思うようになった。この体験を糧に、外から内部の問題を見、そして気づくことに焦点を当てながら、他の様々な問題についても考えていこうと思った。


会場となったむつ市立図書館はとても素敵な建物です。










共催した下北地域県民局地域健康福祉部の関谷道夫部長


団士郎による「漫画トーク」


村本邦子による「子育て支援者応援ワークショップ」


東京おもちゃ美術館のご協力で遊びスペースを設置しました










中村正による「父と子の絵本ワークショップ」






たくさんのみなさんの力で、プロジェクトが実現しました。
むつのみなさま、ありがとうございました。


下北には、なぜかたくさんの風力発電がある。


acc