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応用人間科学研究科 震災復興支援プロジェクト

2013年8月31日~9月8日「東日本・家族応援プロジェクト2013 in むつ」




「東日本・家族応援プロジェクト2013 in むつ」を開催しました 

(応用人間科学研究科教授・村本邦子)

 毎年、このプロジェクトはむつからスタートします。はや3年目を迎える2013年度は、むつ市、むつ市連合PTA、下北地域県民局地域健康福祉部(青森県むつ児童相談所)との共催という形で、8月31日(土)~9月8日(日)、 むつ市立図書館にて家族漫画展を、9月6・7日、むつ市中央公民館とむつ市立図書館にて、家族支援プログラムを実施しました。

    公的機関との協働ということで、予測していたことではありましたが、今年は窓口担当者が移動となり、最初は少し不安もありましたが、念入りに引き継ぎをやって頂き、また事前打ち合わせを重ねたことで、滞りなく運ぶことができました。たとえ人が変わっても、毎年、同じようにプロジェクトが実施できるというのはシステムの力だとあらためて思いました。

    私は中村正先生と定例の支援者支援セミナーを担当し、ワークショップ形式で事例検討を行いました。今年は時間編成と対象者層が少し変わりましたが、60名ほどの参加者を小さなグループに分け、前半は団士郎先生の冊子のなかの事例を、後半は児相から提供頂いた事例をもとに、家族の力を引き出す支援を考えるためのグループワークを行いました。今年は過半数が民生委員さんだったので、児相がどのような仕事をしているのか知ってもらうこと、さまざまなバックグランドを持つ地域の人々が力を合わせて困難を抱える家族を支えるための視点を共有してもらうことを目指しました。

    「私たちはどうしても公的支援を考えがちですが、ケースによるものの、地域の力に頼ることも相談への層を厚くすること、拡大できることを学んだ」「児童相談所の方々がプロとしてどんなに大変な仕事をしているか具体的にわかり、自分にできることは何かを考えることが大事であることを知った」「地域・近所の力も大きな力になる。応援することの大切さがよくわかった」など肯定的フィードバックを頂き、それなりに目標は達成できたかなと思われました。

    「来年もまた来ます!」というお声を多く頂き、団先生の漫画展のアンケートでも、2回目、3回目という方が「毎年、楽しみにしています」と書いてくださっていました。地元の方々に喜んで頂けることに感謝するとともに、継続することの力と意味をかみしめています。

    最後に、団先生の漫画展に偶然立ち寄ったという20代の方のアンケートを紹介したいと思います。

    「2011年3月11日、私は大学4年生で、卒業式を控えていました。この震災で卒業式は中止、私はすぐに災害ボランティアの一員として8月まで活動しました。初めて現地に入ったとき、いつものまったりとした景色は消え失せ、この世の地獄のような惨状でした。このなかには、夫を亡くした人、逆に旦那さん以外、全員亡くなった人、子どもを亡くした人、さまざまな話を耳にし、毎日現場に入って話を聞くたびに涙していたのを思い出します。震災から2年、今も心を病み、悲しみに暮れる家族がたくさんいます。どうかこれからも活動を続けてください。きっと救われる人たちがいるはずです」(注:プライバシー保護のため固有名詞を省略しています)

    この漫画展が、私たちに見えないところでも人々に何かを伝えることができていることを嬉しく思うとともに、私たちの見えないところで、こんなふうに支援活動をしていた若者がいることを思いました。これは氷山の一角でしょう。見えないところに想像力を働かせることを忘れずにいたいものです。みなさまへの感謝とともに、また来年の出会いを楽しみにしたいと思います。


 むつレポート (応用人間科学研究科教授 中村 正)

   ○支援者支援セミナー

    今年は民生委員の研修の場という位置づけがあり、地元の民生委員がたくさん参加してくださった。むつ市の民生委員の半数は男性だというので、地域の高齢男性の参加が目立った。児童相談所の方々が参加者を集める努力をしてくれたらしい。それはお父さんセミナーもそうだったようだ。自発的な参加というよりは勧められてという形態になるので、実施する側からは動機づけに工夫が求められた。

     例年、地元の児童相談所から虐待や不登校など問題を抱える家族の事例を出してもらい支援をとおして問題解決にむけて変化していく過程を検証しながらワークショップ形式の研修をおこなうことにしている。こちらのねらいは、その家族のもつ問題点ばかりに目がいくようなアプローチではなく、強みに焦点をあてて事例をマネジメントするというアプローチが学べる研修とすることである。

     4人程度の小グループに分かれてまずはウォーミングアップをおこなう。団さんがこのプロジェクトの一環として配布している小冊子のなかから事例研修となるように多少のアレンジをしてみた。次のような物語である

   ある45歳の夫の物語。子どもが小学生の頃、妻が病気で亡くなった。ずいぶんと深刻な事態になってから病院にいったようだが手遅れということで急速に病状が悪化したという。子育てや家事を妻にまかせ、働きづくめで家族を顧みることのない生活だった。妻の病気の進行に十分な配慮ができなったようである。子どもたちはお母さんをかえして欲しいといいだす。妻の両親からも責められた。とうとう子どもたちの母への思いが昂じて父親への暴力となっていったようだ。父は耐えるしかないと思っていた。うな垂れながらその暴力を甘受していたと相談にきた事例である。

     中学になった二人の息子を救ったのは近所のお世話おばさんだ。「ご飯、食べてるか」と働きながら家事をする夫の助けをしたそうだ。徐々に二人の暴力も止み始めたという。

     この事例を元にジェノグラムを描き、その家族が地域で生きる関係性を図にしたエコマップを描きながら家族の強みを話しあう。そして支援者の存在をスープラシステム(それらを囲む支援の図)として描く。自らの立ち位置が問われることになる。民生委員はボランティアの地域住民なのでエコマップにも入るし、半ば公的な役割もあるのでスープラシステムにも入る微妙な位置取りとなる。

    問題解決にむけて動く児相の職員、保育士、看護師、各種の相談員などはこのスープラシステムに入る。この三層の関係図を念頭に置いて支援が始まり、家族の変化が促されていく。その家族のもつ強さをひきだすようにして効果的な支援が実践される。その動態が分かるようにして事例研修をすすめた。

    特段に難しい家族システム論の話をするわけではない。地域のお世話おばさんの前後にもっといろんな関係性があるはずだし、男三人の暮らしにはやはり母性や女性性がなくなりがちなので愛着にかかわる家族の色取りをお父さんがもっと工夫できなかったのか、罪の意識だけで暴力を甘受せずに他に援助を求めることはできなかったのか、親戚などの拡大家族は活用できなかったのかなどと小グループでの話が弾む。私自身の関心もあり、男性や父親そして息子にかかわる主題をもつ家族の事例はジェンダーの視点も不可欠なことをアドバイスする。自分のもつ支援のバイアス(好みや傾向)も見えてくることも指摘した。

   こうした点検がスープラシステムとして関与する者には求められること、さらに民生委員という立場のもつ両義性(準公的な位置取りとなること)を利点としてどう活用するべきなのかも話をした。

    支援者支援は「地域の問題解決力」を高めていくためには不可欠の仕組みだと考えている。しかもむつ市の事例をもとにしているので話がしやすい。今年の取り組みから感じた課題がいくつかある。

   第1は、この10年プロジェクトの中盤にさしかかる来年度からは事例提供者を全面にだして協働するような研修にしたいと思っている。外からうかがった者が事例にコメントするような形式はなんだか僭越な感じがするからだ。一緒に事例を考えるという方向にもっていければと思っている。

   第2に、地域の実情にあった家族の支援についてこの研修の情報発信をすることである。地域の家族事例とその土地にあった臨床の知に学ぶシステムができていければと考える。

    第3に、事例提供については自らも含めたスープラシステムにかかわる複数の関係者自身が提供できるようにすることである。そうすることで相互の力量アップにつながると思う。

    第4に、エコマップとスープラシステムのあいだにあって支援と相談にかかわる人々をいろんな場面で用いている日本社会の特徴を考慮することである。つまり、民生委員だけではなく、裁判員、保護司、家裁の調停委員などである。それぞれは研修をしているだろうけれどもケースシミュレーションについての質の高度化や分野を超えた研修を対人支援のスープラシステムとして位置づけ、統合的な研修となるような機会は少ないと思えるので、これらの市民参加が当該の事例を動かしていくときに常識という名の判断や意識を持ち込むこともあり、場合によってはそれが否定的な作用を果たすこともある。そうした意味ではたとえボランタリーな市民参加の仕組みだとはいえ、業務についての研修が必要だと思う。

    こうしたいくつかの課題をも感じとることができたのは3年続けた成果である。10年続けるという意味では中盤にかかる次年度以降の流れをつくることができた2013年の企画だった。

   ○お父さんセミナー

   20人の父親が参加してくださった。昨年と同じ中央公民館。2回の部屋からはむつ湾が一望できる。地元の学校のPTAが宣伝をしてくれた。昨年は就学前から小学生くらいの子どもの父親が多かった。今年は中学生の親が多い。年齢は少々上がったので、仕事では管理職となり、部下を使う身となっているようだ。校長先生も参加していただいた。

   このセミナーは心地よいコミュニケーションの場となるように工夫している。縁故つながりで動員されてきた父親たちが今回は多く、そもそも漠然とした参加具合となるが、それはそれで来てくれたのだからよしとする。そうした方々にも満足してもらう取り組みとするのがプロの仕事だ。私にとってもチャレンジとなるセミナーなのである。

    あいつにいわれたから参加してみたという義理のつきあいをもとにするという動機の構図はいたるところにある。もちろん自発的に関心を持ってこられた父親もいるが、こうした縁故参加の方々の自発性を高め、意図した目的へともっていくファシリテーターの役割が大きい。むしろ社会のなかにはこうした動機で意識高揚をはかる必要のある機会は多いので進行には工夫が要る。

    参加者相互のコミュニケーションをおこなうワークショップ形式のもつ楽しさを感じとり、その一期一会的な集団の意識の変容をめざすことにしている。シャイネスの文化をもつ日本社会では参加を強いるように思われたらワークショップは実現しない。こうした意味では、楽しかったと書いてくれるアンケートがほとんどなのでとても嬉しく思っている。むつ市の男たちののりはいい。

    実施していることはコミュニケーションワークであるが、ひとつひとつのアクティビティに必ず理屈っぽく定義を与えることにしている。男性のシステム的な思考に定着するようにと思ってのことである。

     対人関係において大切なこととして、感情をきちんと伝えることの練習をした。まず最初は、黙って肩を揉む。ここがいいとか痛いとかまったく話をせずにひたすら揉む。そうすると自分が揉んで欲しいように力を入れることとなる。これでは相手が気持ちいいわけではない。次は楽しそうにおしゃべりをしながら揉む。そこを揉んで欲しいといいながら、男たちの話が弾む。気持ちを語ることがこれほど人を快活にさせるのかと見ていて実に楽しそうだ。

    脚本家の渡辺あやさんと対談したことがある。腕の良い指圧師はクライアントが自ら揉んで欲しいところを自然に差し出してくるように指圧をするのだという。阿吽の呼吸のようなものがそこにはあり、応答するように圧をかけることができるのだという。それに近いものを感じることできましたねと念を押す。気持ちを話す会話を「ラポートトーク」と名付けて身体の快感とともに覚えておいてもらう。事実を伝えるコミュニケーションを「レポートトーク」と言いますと定義をしてコミュニケーションのスタイルを理解してもらう。

   次に最近の嬉しいことを思い出し相手に伝える練習をした。嬉しいことなのでとてもプライベートなことが素材となる。伝える相手も面前にいるので親しみがこもる。この時の会話の主語は「わたし」となるはずだ。すると述語は肯定的に終わることとなる。これを「わたしメッセージ」や「アサーションコミュニケーション」と題して覚えてもらう。相手に指示したり、命令したり、叱りつけたりする場合は「お前は」という形態の「あなたメッセージ」になることを体験する。こうしたコミュニケーションワークをいくつか実施した。

   そして男性のみとしているが最後のシェアリングの際に女性に加わってもらった。男性たちの変化の具合をみてもらい、お父さんがんばれとエールを送ってもらいたかったからである。男性たちは動員されてきたけれどとても楽しく、会社の人間関係でも役に立ちそうですと語った。受付として協力していただいた女性が感想を述べてくれた。何のセミナーかわからずに怪訝そうな顔つきをしてきたお父さんたちが最後には感謝の笑顔で握手をして別れを惜しむ姿が印象的だと。今年も心地よいむつの夏の夜だった。


 むつレポート(応用人間科学研究科教授 団 士郎)

   むつ市図書館で三年目を迎えた家族応援漫画展。ギャラリー壁面の状態も、こちらから発送するパネル形状も、承知したところで設営されているから、現地スタッフだけの展示対応も不安がない。

    実際、開催から約一週間経ったところで私は初めてパネル展を見ることになったのだが、お任せにしてあった陳列順序も合格点だった。スタッフも会場周辺の関係者も、だんだん要領が分かってきているので、想定外対応などはない。

   会場に用意された小ぶりのノートに、少数だが来場者が記しているコトバを目にすると、このパネル展を続けている意味を感じる。そしてまた、集められたアンケートに書かれていた一文に、改めてこの事業の役割を確信することがあった。

    子ども達の病、配偶者や親の死など、不運と不幸の連続のような日々を送る人が、まったく偶然、この図書館ギャラリーに足を踏み入れた。作品を読み進めながら救われていく気がしたという。

   こちらこそ、こんな偶然(ひょっとすると、必然なのかも知れないのだが)があったことに感謝である。何もしなければ、何の救いも起きず、誰かの身の上に悲劇が覆い被さる。しかし、こんな一時の出会いで、少し回復の力が生まれているのだとしたら、私の知らないところでは、もっと沢山のそんな物語が生まれているのだろう。

    誰が何に支えられているのかなど、言い当てることは出来ない。こんな事があるのだという事実を積み重ねることが、対人援助サービスのヴァリエーションであり可能性でもある。

   翌日、土曜日のマンガトークでは、「こころか、からだか」と題して、今回の展示作品「身体記憶」と「仮病」の2作品を、過去に関わったケースの家族面接をブリッジにして語った。自己信頼感や安定感、自尊心などが心の持ち方ではなく、具体的で身体的な体験の持ち方で形成されているのではないかと考える経験を語った。

   まだ被災後二年半しかたっていない。東日本大震災、津波被害と原発事故がどのようなものであったのかが日本の歴史として記されていくには時間が足りない。これから表面化することもまだまだあるに違いない。  汚染水問題はフクシマの今だけに関わるのではない。オリンピック招致の舞台でも語らざるを得なかった事からも、今私達が直面しているのは局地的な災害事象ではない。だからFUKUSHIMAは福島県ではなく、下北半島にもFUKUSHIMAはあり得る。そんな日本史の目撃者として、又来年もむつ市に行く。


「東日本・家族支援者セミナー2013 in むつ」に参加して(臨床心理学領域 修士課程1回生 洪 潤和)

   今回このプロジェクトに参加し実際に現地へ行ってみることで、普段メディアを通してでしか触れることのなかった東北地域について、自身の五感を通して感じ、まだまだ表層的ではあるが知ることができたと思った。特に今回行った青森県むつ市は自然災害による被害はあまり受けていないため、メディアにおいては被災地として取り上げられることは少ないような気がする。その代わり、原発関連施設が集中しているためにそれらのイメージが強く押し出されがちであると思う。しかし今回、青森独自の文化や青森の街並み、自然の風景などを通して、人々がその土地でどのように生きているのか/生きてきたのかということも合わせて実際に自分の目で見ることができたと思う。

   また、今回プロジェクトに参加してみて感じたのが、「連携」、「協働」の難しさである。研究科に入学してから幾度となく聞いてきたことばではあるが、プロジェクトを通して改めてその難しさを感じた。お互いが対等な関係の中でともに連携、協働しようと思っても、やはり私たちは「外から来る者」だと認識されている感がぬぐえなかったり、こちらの思いや意図がなかなか伝わらなかったり、反対に相手の思いや意図がわからなかったり、さまざまな困難がつきまとう。そんな中で先生方や先輩たちはこの3年間試行錯誤しながらなんとか関係を構築していこう、つなげていこう、現場のニーズに応えようとしてきたということを実感した。そしてそれは現地の方々も同じであったろうと想像する。

   支援者支援セミナーでは「地域の力」というものに焦点をあてていたが、人々の「つながり」をいかにつくっていくか、根付かせていくかが対人援助において重要なのではないかということをこのプロジェクトを通して思った。

   私自身にできることなどほとんどないが、せめてこのプロジェクトを10年間継続させていく上で、つながる、そしてつなぐための一つの力になることができたら、と思っている。たくさんのことを学ばせていただいた3日間であった。


「東日本・家族支援者セミナー2013 in むつ」に参加して(臨床心理学領域 修士課程1回生 木下大輔)

   東日本大震災は東北地方の人々の心にはもちろん、日本のすべての人々の心に深い悲しみを与えた。震災から3年が経った現在でも、仮設住宅での生活を余儀なくされる人々が多くいる。人々は地震や津波による直接的な被害だけでなく、次いつまた地震や津波がくるかわからないという不安による間接的な被害を受けて、大きなトラウマを抱えていることだろう。したがって、震災のトラウマは一部の人々が抱えるものではなく、日本全体が抱えるものであると言える。

   今回このプロジェクトに参加するにあたって、私の中でひとつ心に決めたことがあった。それは、自分が何か支援しようという上から目線ではなく、自分にできることはないかもしれないが、せめて今のむつの現状を見て・聞いて・感じて学ぼうということである。なぜなら、このプロジェクトは東日本の人々だけでなく復興支援に関わる支援者の方への支援も目指したものではあるが、自分にそんな大それたことはできないし、相手もそんなことは望んでいないと思ったからである。

   実際に、児童相談所の方々とお話しをしたり、支援者支援セミナーに参加したりして現状を自分なりに観察すると、現地の方々は色々な問題に対して積極的に手を取り合って解決しようとご尽力されていた。私はこの姿を見て、人間はどんな状況にあっても他者と繋がることによって問題に立ち向かえる強さを持っていると感じた。また、その強さを持っているからこそ、今回の支援者支援セミナーで「地域の資源を活かして家族の持つ力を引き出す」というテーマのもとで伝えられたシステム論的な視点がよりよい支援に役立つのだと思った。

   最後に、今回のプロジェクトを通して、専門的な知識も経験も未熟な私にとってひとつだけできると思ったことについて記したい。それは、このプロジェクトに継続的に参加することである。そうすることによって、人と人とが繋がって活動に広がりや厚みが出てくるとともに、自分の感じたことを新たに参加する人に伝えることができると考える。このプロジェクトを通じてお世話になったすべての人に感謝し、この学びを活かしてこれからも努力したい。


東日本・家族支援者セミナー2013 in むつ(臨床心理学領域 修士課程2回生 永田智弥)

   今年度の活動に参加したことで分かったのは、いかに自分の目が曇っていたか、ということだと思います。というのも、昨年に引き続き二年続けて参加させてもらったことで、昨年は「原発」や「基地」といった概念に意識を引っ張られ過ぎていた、と気づけたからです。言い換えるならば、今年はよりミクロなことに意識を向けることができ、むつの人達の「生活」という点について考えることができたということです。そしてそれは雪などに対応する工夫のようなものだけでなく、考え方であったり、あるいは家族のパターンであったりしました。

   昨年持った印象として、豪雪地帯で寒さが長く厳しい土地にいる人々は我慢できる力がある、言い換えれば少々のことでも黙っている、というものでした。端的に言うならば、寡黙という言葉が最も当てはまるのかも知れません。しかしながら、今年の各セミナーに入らせていただくと、そういったことはないということに気づきました。支援者セミナーにおいては、民生委員の皆さんをはじめ多くの参加者の方々が活発に議論されていましたし、お父さんセミナーにおいても昨年より盛り上がったように思いました。

   その一方で、むつの人たちの家族生活においても知ることが出来たように思います。青森空港からむつに向かう際、車窓から見えた風景の中には、自然とともに生活しておられる場面が見てとれました。また、支援者セミナーで出された事例やグループディスカッションにおいて話されていた内容から、日本の他の地域とも同じようにDVや離婚家庭、生活保護の受給という事実もお聞きすることができました。そういった事柄を見聞きできたとき、院生の側が構えていた、メガネが曇っていて見えるはずの部分が見えていなかったのだと思いました。

    また、昨年より現地スタッフとして尽力下さった、私と同い年の児相の職員さんとのお話においても、そういった「生活」が見えてきたように思いました。それは、セミナーにて出された事例についてだけでなく、その職員さんが職員として、日々接するむつという町やそこに住む人々の「生活」を、どういう風に捉えどういう風に考えているのか、そういった点からも見ることができた、ということだと思います。この職員さんがセミナーに向けてだけでなく、日々接する目の前の「生活」に全力で向かっているところ、またセミナーに出席してくださった支援者の皆さんが、自分達の「生活」に対して真剣に思いをぶつけられていたところから、非常に力のある土地なのだなと改めて考えました。それも、二年続けて来られたということが大きいのではないでしょうか。「継続はつながり」と去年書かせていただきましたが、まさに「関わる」ことのできた、それによって知ることのできた二年目だったと思います。


むつ市の方との出会いを通して〜漫画展アテンド〜(対人援助学領域 修士課程2回生 清武愛流)

   いよいよ、スタートした家族応援プロジェクト2013。プロジェクトは、3年目。私が参加するのは、2年目だ。

   漫画展アテンドではあるが、漫画展内だけでなく、活動の準備段階から携わっている現地の方と、再会できることを楽しみにしていた。昨年、活動を共にした方々数名と、再会することができた。年に一度かもしれないが、同じ時期にお会いできる方がいることはありがたい。

   こちらの希望で、市の職員さんに「六ケ所原燃PRセンター」に連れて行って頂いた。実際に、行かなければ、分からないことが多い。そこまでの道中の風景を見、そこで働いている人や次の世代となる子どもが居ることを実感した。その土地には、報道だけでは知りえない思いと暮らしがあるのではないだろうか。

   白黒つけることのできない物事の渦中にいる場合、人はどのような思いで暮らして行くのだろうか。表に出にくい思いが、その渦に紛れ、忘れられているのではないだろうか。

    むつでの漫画展会場は、市立図書館である。図書館は、ピカピカの床にレンガをイメージさせる壁だ。美術館などのイメージに近いかもしれない。漫画展のパネルがとても落ち着いた、温かな空間に飾られている。

    むつでの漫画展のアテンドの活動は、飾られている漫画を、心地よく読んでいただけるよう心がけ、ご自由にお持ち帰りできる冊子(漫画が書かれている)を手渡しすることである。

    昨年よりも、図書館の利用者が少なかった。昨年は、学生が複数で集う姿やお年寄りがゆっくりしている姿があったが、私が居た時間では、その光景はなかった。漫画展にふらっと立ち寄る方も少なかった。

   「団士郎の漫画トーク〜『木陰の物語』の物語」の日は、これに来た方が、漫画展にも訪れていた。あまり、多くの会話をする機会はなかったが、漫画展の小さな感想ノートに漫画を読み、ご自身のご家族のことが書かれていた。立ち寄り、何か思いを伝えたくなる方がいた、という出会いが漫画展の片隅にあった。また、「冊子をもう一冊いただけますか?」と聞かれることがあった。家族の物語を読み、何かを感じ誰かに伝えたいと思う方が居たように思う。自分たちで、何か動いていこうとする現地の方がいた、と思うとむつの方が持っている力を感じることができたように思う。冊子を渡すことは、ちょっとしたことかもしれないが、お渡ししたいと思う方に、ぜひ、お渡しして欲しいと思う。

    私たちも大きなことはできないかもしれない。しかし、今できることを探し、こなしていくことはできるのではないだろうか。できることを探そうと思えるのは、この活動の場を用意してくださっている、さまざまな方々がいるからだろう。ネットワークが引き起こす力を私は体験したように思う。

   離れた場所に住む者同士であるが、この一年、来年に向けて共に取り組んでいけたらと思う。また、来年もお会いできることを楽しみにし、できることを探し続けたいと思う。

   次の再会への思いを込めて。ありがとうございました。



海の見えるむつ市中央公民館



支援者支援セミナー



支援者支援セミナー



支援者支援セミナー



支援者支援セミナー



支援者支援セミナー



支援者支援セミナー



お父さんセミナー



女たちもエールを送りに



一日の反省会



家族漫画展@むつ市立図書館



漫画展アテンド



漫画トーク



漫画トーク



異動になったスタッフも駆けつけ



来年に向けて反省会



スタッフ記念撮影




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