立命館大学人文科学研究所は、グローバリズムが、政治や経済、文化や社会の諸領域に生み出している諸問題を理論的に解明し続けています。

立命館大学人文科学研究所

人文科学研究所について

トップ > プロジェクト研究2009年度 > グローバル化とアジアの観光 > 第3回

2009年度研究会報告

第3回(2009.12.26)

テーマ 「日本におけるホームステイの誕生とその発展経過及びアジアの国々への展開」
報告者 山口 隆子(神戸大学大学院総合人間科学研究科)
報告の要旨

「ホームステイ」という語は英語のhomestayの訳で、今日では普通に使われるものの、日本では1980年代より一般化し、英語圏では2004年にThe Oxford English Dictionaryで新出単語としてはじめて採択されたという。山口さんはこの「ホームステイ」に関する文化人類学的研究では一人者であり、報告では、異なった文化を背景にする人たちの間で家庭生活を体験し、地域の人びとと交流する「ホームステイ」がどのような人物と組織によって開始され、それがどのように日本で展開されてきたのか、その過程を詳細に報告された。創始者はアメリカ人のDonald B.Watt(1893-1977)で、1932年にThe Experiement in International Living(EIL)という組織を設立した。この組織の目的は、「同年代の学生がいる家庭で暮らしていく中で、彼らの言語、その暮らし方や考え方を学び、戸外での活動を通じて彼らと個人的な友情を築くこと」「文化的、歴史的に重要な場所を訪れること」である。EILの掲げる目的を掲げ、1933年にアメリカ人男女学生31名とリーダーが、ドイツとオーストラリアへはじめて出かけ、「ホームステイ」を体験している。日本へは、1956年4月に金沢で最初のホームステイが実施された。ワットが妻と共に、4人の年長女性を伴い,1ヶ月間家庭に滞在している。山口さんは、その後の日本におけるホームステイの展開過程をいくつかの角度から詳細に説明され、最後に、観光とホームステイの関係についても言及された。報告に対して、EILのホームステイをサービス対ホスピタリティの対比からどのように位置づけることができるのか;日本ではゲストは日本語ではなく英語を使用しており、ホストは英語ができるエリートであって、「学ぶ」という観点が弱いのではないか;ホームステイを体験したゲストは日本で何を、どのように理解したか分かっているのか、など多様な質問やコメント発せられ、活発な意見交換がなされた。

 

アジア諸国では、コミュニティ全体に利益をもたらすホームステイ・プログラムが浸透し始めているが、ホームステイの歴史やその文化人類学的考察はほとんどない状態にあり、山口さんの報告はその意味でもたいへん興味深いものであった。

 

江口 信清

所在地・お問い合わせ

〒603-8577
京都市北区等持院北町56-1
TEL 075-465-8225(直通)
MAIL jinbun@st.ritsumei.ac.jp

お問い合わせ

Copyright © Ritsumeikan univ. All rights reserved.