WHY?
#06

お客はちゃんとお金を払い、
お店はちゃんと商品を渡す。
これ、不思議じゃないですか?

QUESTION

食い逃げしたことのある人? …って、そんな人はいないですよね。でも、どうして? カウンターの中、店主一人きりのラーメン屋さんなら、追いかけてくる店主を振り切って簡単に逃げられそうです。それなのにあなたは、食べ終わった後ちゃんと代金を払うんですよね。食い逃げすればタダなのに、わざわざ損することをしています。変じゃないですか?

ラーメン屋さんだって変です。見ず知らずの他人の、食い逃げするかもしれないあなたにラーメンを出すんですから。ラーメン屋さんは商売です。お金のためにやってるのに、お金をもらう前にラーメンを出すなんて、わざわざ損するかもしれないことをしています。変じゃないですか?

これはもちろん、あなたとラーメン屋さんだけの話ではありません。どんな売買にも言えることです。お店が商品を渡してくれたら、お客はお金を払わないほうが得です。お客がお金を払ってくれないなら、お店は商品を渡したくありません。こう考えると、ふだんの売買で、お客はちゃんとお金を払い、お店はちゃんと商品を渡すことができているのが不思議に思えてきます。 私たちはいったいどうやって売買を成立させているのでしょうか?

HINTS 売買=「信頼」+「協力」。
「信頼」に基づく「協力」が、売買の原動力です。

売買には信頼と協力がともないます。お店はラーメンを出し、あなたはお金を払う。両方揃ってはじめて売買になるのですから、売買とはお互いの協力です。そしてその協力は、相手はちゃんとお金を払ってくれるはず、相手はちゃんとラーメンを出してくれるはず、という信頼があればこそです。このような信頼と協力は、次の3つの理由の、少なくともどれか1つによってもたらされています。それは、(1)警察に捕まるのがいやだから、(2)また行きたい店だから、(3)良心が痛むから、の3つです。

(1)警察に捕まるのがいやだから。そう、店主からは逃げ切れても、警察に通報されるかもしれません。警察はラーメン屋さんの店主よりもはるかに食い逃げ犯を捕まえるのは上手でしょうからね。食い逃げして警察に捕まるのは嫌だとあなたが思っていることをわかっているからこそ、ラーメン屋さんは、あなたがちゃんとお金を払うと信じることができて、先にラーメンを出すことができているわけです。
警察というのは、国の機関です。国は、人が信頼と協力を達成するのを助ける役割を持ちます。売買において、協力せずに相手を裏切りお金を払わない人や商品を渡さない人を罰する力を国は持っていて、その力のおかげで私たちは売買ができています。そうすると、相手を裏切るお客やお店を罰する力を持った人というのは、別に国でなくてもかまわないわけです。たとえばそれは、やくざとかマフィアの人たちでもOKです。実際、やくざやマフィアは、国の力が弱いところで、国の代わりに、約束を守らない人を罰する役割を果たしています。

(2)また行きたい店だから。たとえ警察に捕まる心配がまったくなかったとしても、そのラーメン屋さんにまた来たいと思うのなら、あなたは食い逃げをせずちゃんとお金を払うでしょう。食い逃げした店にもう一度行くなんてできませんからね。それはお店にしても同じです。お客さんにまた来てほしいなら、おいしいラーメンを出し、ちゃんとしたサービスを提供します。このように、将来にわたって続く付き合いも、信頼と協力をもたらします。言いかえれば、国に罰してもらわなくても、お客とお店が、当事者どうしで、裏切ったら今後はお前との付き合いをやめるぞ、という形で相手に罰を与えられるのなら、売買は成り立ちます。

(3)良心が痛むから。食い逃げしても警察に捕まる心配はまったくなく、ラーメンはとてもまずくてもう二度と来る気はないお店でも、お金を払わないのは申し訳ない、だからお金を払う、というのもあるでしょう。お店も同じです。ちゃんとしたラーメンを出さないなんて申し訳ないと考える店主は、ちゃんとしたラーメンを出すでしょう。相手に対する良心がお客にもお店にもあれば、売買が成り立つわけですね。

KEYWORD経済学的キーワード

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