WHY?
#08

もし、100歳までは生きられるよと言われたら、
あなたは自分の一生をどのように想像しますか?

QUESTION

100歳までは生きられるよと言われたら、あなたは自分の一生をどのように想像しますか? 日本は戦後に大きな発展を遂げ、世界でも有数の豊かな国になりました。そして、最も寿命の長い国のひとつになりました。
健康で長生きすることは、人々の望みでもあり、おめでたいことでもあります。最近では、人生100年時代とも言われています。それ自体、とても幸せなことに違いありません。

それにもかかわらず、多くの人は、長生きすることを「幸せ」の一言で片づけていなさそうです。長生きができるこの時代に、人々がむしろ不安を感じるのはどうしてなのでしょうか?

HINTS あなたはどういう生き方をしたいですか?
正解はありませんが、経済学を学ぶことで、
考えるためのヒントを得ることができるでしょう。

日本では少子化に加え、長寿化が進んでおり、その結果、総人口に占める老年人口(65歳以上の人)の割合(高齢化率)が上昇しています。そのスピードは他の先進国に比べても突出しており、2050年には、わが国の高齢化率はおよそ40%に達する見込みです。「超高齢化社会の到来」と言われるゆえんです。高齢化社会と聞いたとき、若者が少なく活気がない、地方の衰退、年金や医療などの社会保障制度が大変になるなど、どちらかというと明るいイメージを持ちにくいかもしれません。

確かに少子高齢化がすすむ我が国において、社会保障制度は、大きな問題を持っています。国から支給される公的年金は高齢者にとっての大切な生活資金で、健康に暮らすためには医療の充実は欠かせません。しかし、我が国の公的年金や医療は現在、国全体で若い世代が高齢者世代を支える構造となっています。そういった状況で、若い現役世代が減る一方で、高齢者の割合が増えていくと、どうなるでしょうか。まず、高齢者を支える若者の負担がどんどん大きくなります。また、高齢者の側からみると、若者からの支えがどんどん細っていく、つまり年金の受け取り額などは減っていくことになります。

長生きをするには、いうまでもなく、その分、生活資金が必要になります。社会保障制度に対する不安は、そのまま、長生きする不安をかきたてる要素となります。

高齢化社会をイメージするとき、そういったマイナス側面が強調されることが多いですが、明るい面はないのでしょうか。
日本人の平均寿命が長くなるとともに、長く元気に過ごせる時間が増えることを見落としてはいけません。実際、今日の60歳の人は30年前の60歳の人に比べると、同じ60歳とは思えないほど、元気で若々しい人が多いですね。同様に、50年後の80歳の人の姿を、現在の平均的な80歳の人の姿にもとづいて想像するのは正しくないでしょう。現在にも80歳をすぎても若々しくパワフルに活動する人はいます。ポイントは、受験生であるあなたが80歳になった時には、今の「パワフル高齢者並の元気さ」が、「平均的な80歳の」姿となっていることは十分あり得るということです。

そうなると人生の過ごし方は、今の高齢者世代とは大きく変わってくるかもしれません。20世紀には「子どものうちは学校で学び、その後(会社勤めをする場合には)定年(現在は大体60~65歳くらい)まで働き、その後、引退」といった、「教育を受ける→働く→引退する」というパターンが先進国では一般的でした。しかし、80歳をこえてなお元気に過ごせるならば、人生の図式はこれほど単純なものではなくなるでしょう(今の延長線上で「大学を卒業したあと、80歳過ぎまで一つの会社で勤め続け、その後に引退」とはならないでしょう)。では、どのように変わっていくのでしょうか。また、どのような形に変わるのが、わたしたちにとって、また社会にとっても望ましいでしょうか。実はこういったテーマも、経済学の問題として扱うことができます。

さて、あなたはどういう生き方をしたいですか? この問は、あらかじめ正解があるものではありません。ですから、経済学を学んだからといって、その問の答えは出てきません。ただ、経済学を主体的に学んでいくことで、考えるためのヒントを色々得ることはできるでしょう。

KEYWORD経済学的キーワード

この分析は、経済学の#財政 #社会保障 #経済成長 などの考え方で組み立てられており、そのエッセンスは「労働・社会保障ユニット」の「社会保障論」や、「経済政策ユニット」の「経済政策論」「公共経済学」といった科目で学ぶことができます。

「労働・社会保障ユニット」の科目では、人口減少と少子化・高齢化が日本社会にもたらす影響を踏まえながら、労働政策や医療政策、介護政策、年金政策などの社会政策に関わる諸課題を分析し、その解決手法について考察します。

「経済政策ユニット」の科目では、経済政策に関わる理論、制度を学ぶとともに、データ分析や事例研究を通じ日本経済が抱える様々な問題の本質を洞察する力を養い、俯瞰的かつ理論的な視点から政策課題の解決策を提案できる力を養います。

このホームページでは、諸説ある中でひとつの考え方を紹介しています。みなさんはどのように考えますか?この問いの「答え」に納得がいかなかった方は、別の角度からも考えてみて、新たな「答え」を見出してみてください。

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