WHY?
#10

資源になるゴミとならないゴミ、
その違いは何にあるのでしょうか?

QUESTION

私たちが不要になったものは経済的価値のないゴミとみなされ、お金をかけて焼却や埋め立て処分されます。しかし、それらのゴミの中には資源としてリサイクルされて再び価値のあるものに生まれ変わったり、きれいにしてそのままリユースされたりするものもあります。資源になるゴミとならないゴミ、この違いは何にあるのでしょうか?

「混ぜればゴミ、分ければ資源」の有名な標語があるように、日本では長年ゴミ分別の大切さが訴えられてきました。皆さんの住む街(市町村)でも分別のルールが決められ、今では多くの人がそのルールに従って、ゴミを分別して排出していることと思います。もしすべてのゴミが適切に分別されれば、それらはすべて資源として有効活用できるのでしょうか?

HINTS リサイクルも市場メカニズムで動く!
ゴミが資源になるかどうかは需要と供給で決まる。

一例を挙げると、今や分別するのが当たり前となったPETボトル。国内のPETボトルリサイクル率は約85%(2010〜19年度平均)と世界最高水準です。PETボトルの多くは、他のプラスチックや繊維製品に再資源化されたり、細かく裁断して輸出され、プラスチック原料として再利用されたりしています。最近では、PETボトルから再びPETボトルを作る「ボトル to ボトル」も注目されています。

PETボトルを含む容器包装廃棄物ではまず国が法律をつくり、市町村や事業者が協働して、いわば強制的にリサイクルする仕組みを作りました。法制定時(1990年代半ば)はPETボトルがまだ資源として認識されずに、分別のルールがなかったのです。しかしその後は、法の施行に加えて、経済成長著しい中国等が日本で排出されたPETボトルを資源として積極的に買うようになったこともあり、分別さえすれば基本的に資源としてリサイクルされてきました。

このようにリサイクルにおいても重要なのが需要と供給の関係です。私たちはゴミを分別しただけで環境に良いことをしたように考えがちですが、再生された資源を利用することで初めて循環の輪が閉じます。もう1つポイントとなるのが、モノは安い所から高い所に動くという経済原則です。リサイクル促進のためには、より安い費用で再資源化し、より高い付加価値を付けて再商品化することが重要です。

一方、同じプラスチックでもPETボトル以外を含めると、熱回収を除くリサイクル率は約28%(2018年度)にまで低下します。プラスチックは様々な複合素材で作られていることも多いため、再びプラスチック原料に戻すには元の素材別に分ける必要があります。しかし、これには手間とコストがかかるため、技術的に可能なリサイクルでも経済的に成り立たないケースが出てきます。実際、国内のプラスチック処理で最も多いのは、細かな分別が不要な熱回収であり、PETボトル同様、輸出されるものもあります。

2018年以降、それまで世界最大のゴミの輸入国だった中国が、国内の環境保護等を目的にゴミの輸入を原則禁止する方針に転換しました。これを受けて、中国に依存していたリサイクルの一部は東南アジア諸国などへ行き先の変更を迫られました。しかし、これらの国でも輸入規制の動きが強まっており、輸出(=海外の需要)に頼れるのも時間の問題かもしれません。そうなると国内での再生資源の利用促進が一層求められます。

ゴミの発生抑制や分別マナーの向上は言うまでもなく大切ですが、一人ひとりの心がけだけでは解決できない経済的な課題もあります。こうした課題に経済学ではどのように対処するか、一緒に考えてみませんか?

KEYWORD経済学的キーワード

この分析は、経済学の #環境経済学 #ミクロ経済学 #国際経済学 などの考え方で組み立てられており、そのエッセンスは「環境政策評価ユニット」の「環境経済学」「環境政策」、また「グローバル経済ユニット」の「国際貿易論」といった科目で学ぶことができます。

「環境政策評価ユニット」の科目では、環境・公害問題の科学的な理解に加え、環境の経済社会的価値や環境政策の効果を評価するための分析手法の修得など、政府の環境・資源政策や企業の環境マネジメントに活用できる文理総合的な学びを行います。

「グローバル経済ユニット」の科目では、国際間の経済関係と各国経済の多様性を理解し、グローバルな視野に立って国際的諸課題を考察し、解決提案できる力を養います。

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