Reportレポート・参加者の声

大船渡で「復興」の最前線を学ぶ(報告)


2017年3月25日、岩手県大船渡市で「これまでとこれからの5年間をみつめるワークショップin大船渡」を開催しました。

これは、岩手県大船渡市と立命館大学との「包括連携協力協定」(2016年4月に締結)に基づき開催したもので、「復旧」から「復興」へと観点が移行する時期にある大船渡で、立命館大学の学生16名が、市民や市役所の方々とともに「これからのまちづくり」を考えるワークショップに参加しました。学生達は大船渡の人々と出会い、復旧・復興とは何かを学ぶと共に、大船渡の方々と共に今後のまちづくりの展望を語り合うプロジェクトでした。

 まず、2月9日にキャンパスプラザ京都にて事前学習が行われました。事前学習では、大船渡市災害復興局の佐藤大基(さとう・だいき)さんから「復興に向けた“これまで”とその先にある“これから”」が示されました。佐藤さんは、死者340名、そして今なお、行方不明者が79名(いずれも2016年9月30日時点)に上る被災を受けた大船渡での復興事業の今を、その原動力となっている人々、特に大船渡市民とともに復興事業に取り組んでいる「ソトからきた仲間」にスポットをあてて、報告されました。授業後、学生達は、佐藤さんのお話を受けて、今回のプロジェクトで学びたいことや佐藤さんに聞きたいことなどについて語り合い、意見交換、発表をしました。

 その後、参加学生達とスタッフらはグループLINEで情報共有や意見交換を重ねて、出発日を迎えました。3月23日、京都駅から夜行バスで岩手県に向った一行は、翌24日、まず大船渡市に隣接する陸前高田市に立ち寄りました。陸前高田市役所では、戸羽太(とば・ふとし)市長を表敬訪問しました。これは、今回のプロジェクトの担当教員の一人の久保田崇公務研究科教授が、2015年7月まで陸前高田市の副市長を務められていたご縁によるものです。

一昨年の5月にオープンした陸前高田市コミュニティホールで、戸羽市長、市職員の方から陸前高田市の復興の「今」について特別授業をしていただきました。戸羽市長からは、東日本大震災発生以降、大きな喪失や混乱の中で、市長をはじめ市職員がどのような状況にあり、そして何をされてきたのか、お話を伺いました。また、戸羽市長からは、「復旧・復興」にあたっては、甚大な津波被害によって以前の町並みを元に戻すのではなく、老若男女みんなが住みやすくなる「新しい町を創る」という判断を下した思いや経緯について伺いました。

 

市役所訪問後、「奇跡の一本松」や「旧道の駅TAPIC」といった「震災遺構」を見学する復興最前線ツアーに学生と教職員が参加しました。ツアー主催者の伊藤雅人(いとう・まさと)さん(マルゴト陸前高田)から、2011年3月11日以降にあった出来事をつぶさに伺いました。また実際に「水」(現地の方は「津波」とは言わず「水」と言います)がどの高さまで到達したわかる建物跡や、「水」の圧力でひしゃげてしまった太さ1mほどの鉄柱の残骸、「奇跡の一本松」などを見学しました。

 その後、大船渡市入りをした一行は、リニューアルオープンしたばかりの「ホテル福富」(大船渡市大船渡町)にチェックインしました。「ホテル福富」は、東日本大震災の被災後いち早く全国のボランティアスタッフ受け入れなどを行い、災害復旧活動をされているホテルです。今回、泊まった場所は、以前の場所から500メートルほど離れた「かさ上げ地」になります。(大船渡市をはじめとする津波被害を受けた沿岸地域では、大規模な「かさ上げ」工事を伴う区画整備によって津波被害の軽減を図っています)

その夜は、大船渡プレハブ横丁(通称、屋台村)で、大船渡市の方々と立命館大学メンバー全員の約40名で交流会を開催しました。交流会では、サプライズゲストとして大船渡市の戸田公明(とだ・きみあき)市長も参加され、大いに賑わいました。


 3月24日は朝から盛りだくさんのプログラムを実施しました。ホテル福富の朝食会場では、大船渡や陸前高田市などの支援活動を継続されている松井伸行(まつい・のぶゆき)さんに、復興支援で大切なことについてお話いただきました。静岡県浜松市のNPO法人「えにしのざ」の幹事として、これまで50回以上(正確には数え切れないほど)岩手県での活動を継続している松井さんならではの視点や思いが語られました。


 次に、「メディア」「商店街」「観光」「住まい」の4つのテーマでグループに分かれ、大船渡の「今」を学びました。

「メディア」グループは、大船渡市、陸前高田市、そして住田町をカバーする地域紙「東海新報」を訪問し、社長の鈴木英彦(すずき・ひでひこ)さんから、メディアの役割や取り組みについてお話を伺いました。「商店街」では、災害復興支援室の山口洋典(やまぐち・ひろのり)副室長(2017年3月現在)とともに、JR大船渡駅周辺の整備事業に取り組んでいるまちづくり会社「キャッセン大船渡」の山崎素子(やまざき・もとこ)さんと大船渡市役所の佐藤大基さんから、まちづくりの未来図のお話を伺いました。3つ目の「観光」では「ホテル福富」の佐々木博子(ささき・ひろこ)さんから、チリ地震の被害を乗り越えてホテルの再建をされた先代社長の「教え」を大切にしていたお陰で、東日本大震災後の再建が進んでいることを教えていただきました。最後に、「住まい」では大船渡市役所の平野桃子さん(立命館大学産業社会学部卒業)、塩崎賢明(しおざき・よしみつ)災害復興支援室副室長とともに、かさ上げ地や仮設住宅、高台移転地など見学しました。(なお、塩崎先生は、大船渡市の復興計画推進委員長も務められています。)


 午後からはJR大船渡線BRT「大船渡魚市場駅前」から徒歩5分のところにある大船渡市魚市場で、「これまでとこれからの5年間をみつめるワークショップin大船渡」に参加しました。

  ワークショップでは、冒頭、戸田公明大船渡市長が「立命館大学の学生、教職員の方々をお迎えできて大変嬉しく思っている。本日のワークショップが立命館と大船渡の縁を更に深めることを期待しています。」とご挨拶され、各プログラムを展開しました。

はじめに、「近年の災害復興と今後の備え」というテーマで、塩崎賢明副室長による講義が行われました。大船渡をはじめとする被災地の現状と課題について、さらに次なる巨大災害への備えについて復旧・復興での被害を最小限防ぐための手立てとして、災害の経験を国の内外を問わず系統的に集める必要性が解説されました。

 次に、前大船渡副市長の角田陽介(つのだ・ようすけ)さんと久保田崇教授による前副市長対談「副市長の務めと実践」と題した対談を行いました。お二人とも中央官庁で働く身から大震災後、市長を補佐する副市長になった経緯と心がけていたことなど、ざっくばらんにお話されました。復興について角田さんは「復興でかたちづくられたものは今後何十年もまちに残っていくものであり、そこで生活する人々の営みを意識しながら取り組み続けなければならない」と示しました。

ワークショップでは、4グループに分かれ、大船渡で復興事業に携わる4名の方々からお話を伺いました。がれきや津波堆積物を再資源化する事業を行っている「リマテック東北株式会社」の野村朋員(のむら・ともかず)さん、「大船渡市市民活動支援センター」で、市民活動団体のお手伝いの仕事をされている、下津浦朱里(しもつうら・しゅり)さん、「空間タイムカプセル」などで被災地の記憶をアートに変える取り組みをしている、「みんなのしるし合同会社」の前川十之朗(まえがわ・じゅうじろう)さん、そして佐藤大基さんの4名が、それぞれの「いま」を語り、また参加者全員がみんなの思いを共有しました。

ワークショップには、大船渡高校の生徒を含む地域の方々約40名と立命館大学学生および教職員約20名の合計60名が参加しました。お一人の話を30分ずつ伺ったため、4名の話題提供者の方には2時間で同じ話を4回いただくこととなりました。しかし、それぞれのグループの特徴や関心事のもとに、今後のまちづくりへの展望が語り合われることになりました。その結果、ワークショップは賑やかにそして和やかなうちに終了しました。


 

最終日の3月26日、一行は、前日のワークショップなどで教えていただいた大船渡の魅力ある地域を散策しました。恋し浜、碁石海岸、そして、当日大船渡市民体育館で開催されていた「三陸復興大同窓会・さんりくるっと」 にも伺いました。


 

本プロジェクトでは大船渡市の方々、市役所の皆様に大変お世話になりました。4月8日にキャンパスプラザ京都での事後学習会では、参加学生と教職員が集まり、現地での経験を改めて言葉にして整理すると共に、大船渡・陸前高田での学びや出会いを糧に、新学期、新生活での成長と大船渡への再訪を誓いました。