松村さんが人間科学研究科に入った経緯を教えてください。

就職、結婚、出産と一般的なライフステージを経験してきた私でしたが、子どもの頃から夢だった看護師の仕事に就きたいと考え、一念発起して免許を取得しました。臨床現場を経験するうちに、心理的なケアと「予防看護」に関心を持つようになり、保健師免許、公認心理師資格を取得して、現在は企業に就職して、産業保健師として社員の心と体のケアに携わっています。

それぞれの場面で、私なりに勉強をして現場対応に取り組んできましたが、それが本当に正しかったのか、確証を得ることができませんでした。大学院に進学しようと考えたのは、エビデンスに基づいた心身のケアができるようになりたいと考えたからです。立命館大学大学院人間科学研究科を選んだのは、社会人に開かれた大学で、フルタイムで勤務しながら学べる環境に魅力を感じたからです。

どんなことを研究しているのですか？

指導教員である川野 健治先生のもと、コミュニティ心理学という分野について学んでいます。コミュニティ心理学とは、人が抱える課題を「個」で捉えるだけではなく、その人を取り巻く社会環境にも注目してアプローチする学問です。産業の現場で一人ひとりの社員に寄り添うアプローチをしてきた私にとって、コミュニティにまで踏み込む手法は斬新で、研究を通じて集団を見つめる視点を養っています。

また、副指導教員である森 知晴先生のもと、行動経済学について学んでおり、いかに対象者が自発的に望ましい選択肢を選択できるように導けるかといった課題にもアプローチしています。例えば、私が保健指導の一環で社員に健康診断の受診を促しても、業務の多忙さを理由にしたり、目先の利益や満足をつい優先してしまう等の理由でなかなか実現しないことがあります。そこで行動経済学の視点から社員の傾向を読み取って、リスクを説明する、先延ばしを予防するなど、現場で実践しながら研究に取り組んでいます。

今後の目標を教えてください。

産業看護職の難しいところは、社員一人ひとりの健康増進も大切ですが、企業としての生産性も無視することができないところです。そこが病院との大きな違いで、今はそのジレンマを克服する方法を探っています。社員が生き生きと健康的に仕事をすることができ、さらに生産性の向上にもつながるような健康経営が理想で、それに貢献できる研究成果を生み出したいと考えています。

また、対人援助職の援助についても興味を持っているので、現在研究している内容をそちらに活用する方法についても探っています。人間科学研究科では私たち大学院生の挑戦を応援してくれる先生方がいるので、興味をもったことにはどんどん積極的にチャレンジしていきたいと考えています。

（Profile）

社会人を経験後に看護師免許を取得し、看護師として10年間勤務する傍ら、保健師免許、公認心理師資格を取得。現在は企業において、心身のケアをする産業保健師として勤務している。