心理プラスな人(修了生メッセージ)

2023

ベテラン看護師ならではの視点から、現場の課題を解決したい。

森川 佳恵 さん
人間科学研究科 博士課程前期課程1回生

単科精神科病院 勤務

森川さんが人間科学研究科に入った経緯を教えてください。

看護師として26年勤務してきた中で、対人援助職には看護学だけではなく、さまざまな学問が必要であると実感してきました。その中でも、心理学を学んでエビデンスに基づいた支援ができるようになりたいと思ったのが、大学院に進学しようと考えたきっかけです。

立命館大学大学院人間科学研究科を選んだのは、社会人を歓迎している大学院なので、職域を越えた人たちと共に学ぶことで新しい発見があると考えたからです。先輩や友人が人間科学研究科の修了生であったことも刺激になりました。


どんなことを研究しているのですか?

指導教員である川野 健治教授のもと、医療観察法という司法精神医療に関する法律に関わる問題で、犯罪当事者(以下、対象者)の家族支援のあり方を検討する研究しています。私が勤務する病院が医療観察法指定通院医療機関でもあるため、司法精神や犯罪心理などに関心を持ったことが研究のきっかけです。精神疾患によって重大な罪を犯してしまった人に対しては、適切な医療を提供したり、社会復帰や再犯防止であったり、さまざまな支援があります。しかし、その家族に対する支援は乏しい実情があります。犯罪行為(以下、対象行為)の被害者は、家族・親戚が最も多く対象行為を行った対象者の3人に1人が被害を受けた家族と同居している現実があります。家族が対象者の病状悪化の要因になる場合もあり、ストレスの多い生活環境が支援する家族にとって大きな負担につながるなど複雑な問題が起こっています。医療現場で実例を見てきた私からすると、犯罪当事者だけではなく、その家族も含めもっと包括的な支援が必要ではないかと考えています。

先行研究の事例は少ないのですが、調べている中で札幌の社会復帰調整官による家族支援がうまく機能しているという事例を見つけました。どのような取り組みを行なっているのか、なぜ全国的に広がっていないのかなどについて、詳しく調査したいと考えています。


今後の目標を教えてください。

研究成果を現場にフィードバックすることを意識しています。勤務先の病院に入院病棟ができる予定なので、犯罪当事者だけでなく、その家族の支援の新しいモデルとして、社会実装につながるような論文を書き上げたいと考えています。具体的な方法はまだ探っている段階ですが、医療現場に携わってきた経験からリエゾン(医療現場における連携や橋渡しの意)というキーワードに注目しているので、関連の家族会や地域と連携して、その橋渡しができるような仕組みを検討しています。


(Profile)

看護師歴26年。大学病院で終末期病棟での業務に携わり、単科精神科病院に移って3人の子育てをしながら22年間勤務している。外来勤務で地域連携や訪問看護も経験。精神鑑定、犯罪心理などにも関心を持っている。

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