心理プラスな人(修了生メッセージ)

2023

これからを生きる人に必須の力、「非認知能力」を伸ばす教育のあり方とは?

東 知佐子 さん
人間科学研究科 博士課程前期課程1回生

大阪府立吹田東高等学校 勤務(校長)

東さんが人間科学研究科に入った経緯を教えてください。

大学卒業後、教育業界の企業で高校生の学力評価や大学生のキャリア開発など「学校」を身近に感じる仕事に取り組んできました。そこで管理職を経験したとき、チーム力を高める環境づくりに大きなやりがいを感じたことがひとつの転換点に。人の成長に直接関わる場所で働きたい思いから学校の管理職に応募し、現在は高校の校長を務めています。

よりよい教育の実現に向け、学校では毎日のように会議や打ち合わせが開かれさまざまな意思決定を行います。ともに働く先生方のご経験など前例を中心に話し合われることが多く、教育・心理に関わる学問の最新の知見を判断基準のひとつに取り入れたいと考え、立命館大学大学院の人間科学研究科に進学しました。


どんなことを研究しているのですか?

教育・心理をテーマに、社会生活を営む上で大切な「非認知能力」を伸ばす教育のあり方を研究したいと考えています。非認知能力はコミュニケーション力やレジリエンス(耐久力・精神的回復力)、GRIT(やり抜く力)、自尊心などと言われ、近年、教育の分野で特に注目されていますが、今のところ定義が定まっていません。先行研究で非認知能力がどのように捉えられているかを調べ、視野を広げるところから始めています。

私が所属するゼミナールの先生は、絵本と音楽が持つストレス緩和の効果を心理療法に活かす研究に取り組み、また、東日本大震災の被災地へ赴いて復興支援にも尽力されています。大学院の先生は「研究者」の側面が強いと考えていましたが、人間科学研究科には街に飛び込んで「人を元気に」「社会を豊かに」することをめざす「実践者」の先生がたくさんおられます。そうした先生方の授業でお聞きする心理的サポートの現場のお話は心が揺さぶられる内容で、「生きること」や「成長」について改めて見つめ直す機会になっています。


今後の目標を教えてください。

社会人も多く、多様な背景を持つ大学院生仲間との交流には時に思わぬ発見があり、物事を多面的に見る意識がより高まりました。他にも大学院では、学校でも家庭でもない「第3の空間」として若者の居場所を提供するユースセンターでの実習に参加。小学生以上の子どもたちが集う環境で会話を楽しみながらゲームをする居場所としてのユースセンターの機能だけではなく、社会活動に参画する若者の取り組みも見せていただくなど、学校以外で若者の成長を支える学びの場を経験しました。

入学当初は予想もしていなかったさまざまな学びとの出会いを経て、教育・心理に関わる学外での実践にも関心を持つようになってきました。知的好奇心が引き出される学びを心地よく思うとともに、高校の校長として、この刺激的な環境から学ぶことも非常に多いと感じています。


(Profile)

大阪大学人間科学部卒業。通信教育や出版に携わる教育系企業に入社し、3つの課を束ねる副部長を務めるなど22年にわたり勤務。学校現場で働きたい思いから大阪府教育委員会が公募していた府立学校の校長に応募。

BACK