心理プラスな人(修了生メッセージ)

2023

罪を犯した人の話を聴き、自分を変えるための支援に取り組む。

川福 さん
応用人間科学研究科 博士課程前期課程修了

島根あさひ社会復帰促進センター 勤務(社会復帰支援員)

川福さんが人間科学研究科に入った経緯を教えてください。

心理学に興味があったので立命館大学文学部心理学科に入学し、幅広い心理学の分野に触れました。主に少年犯罪や犯罪心理学に関心を持って学び、ゼミで少年院を訪問したり、出所した人の話を聞いたり、実践的に学びました。

対象を少年だけではなく、大人にも広げて加害者臨床についてより深く学びたいと考え、大学院応用人間科学研究科に進学しました。


どんなことを研究したのですか?

心理学の理論を学ぶ一方で、施設実習などでさまざまな現場を訪れ、理論と実践の両面から学んでいました。施設実習では過去に犯罪をした方と面談したり、発達障害の子どもと接したり、課外では薬物依存症に悩む人たちをサポートする施設でボランティアをしたこともあります。とにかく現場に出て、いろいろな人の話を聞きながら学んでいました。

印象深いのは先生から「想像力を持ちなさい」と言われたことです。犯罪や薬物依存など、自分が知らない世界について、恐怖を感じる方が多いと思います。しかし、加害者にも犯罪を選択した背景があります。表面的な情報だけで判断するのではなく、一人ひとりと向き合い、話を聴くことの大切さを教えていただきました。


現在のお仕事について教えてください。

島根あさひ社会復帰促進センターには大学院生の頃に4回ほど見学に訪れましたが、再犯防止に重点を置くだけではなく、人として成長することも大切にしていたところに大変感銘を受けました。犯した罪だけにフォーカスするのではなく、今までの生き方、考え方、感情、家族など、その人を構成するさまざまな要素も見て、再犯防止を支援しています。そこに魅力を感じて就職しようと考えました。

就職後はTC(回復共同体)という罪種に関係なくユニットで生活を共にしながら教育を受けるプログラムと、薬物などの罪種別のプログラムに携わってきました。今後は生命犯のグループを担当する予定です。

誰しも自分を変えるのは難しいことで、さらに犯罪や薬物依存の問題は根が深いと感じています。しかし、私は人との関わりこそが生き方を変える原動力になると信じています。実際に少しずつ変わっていく人たちを目の前で見てきたので、そこにやりがいと使命感を持って仕事に取り組んでいます。


(Profile)

立命館大学文学部で心理学を学び、大学院応用人間科学研究科に進学。犯罪心理学などについて研究し、修了後は刑務所である島根あさひ社会復帰促進センターに就職。社会復帰や再犯防止などの支援を行なっている。

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