心理プラスな人(修了生メッセージ)

2023

支援者を支援するプログラムを開発し、社会福祉の現場を消耗させないために。

濱本 良枝 さん
人間科学研究科 博士課程前期課程1回生

濱本さんが人間科学研究科に入った経緯を教えてください。

私は学生時代に小学校の先生になるための勉強をしていて、そこで障害児教育のことを知る機会がありました。保護者の方から「この子を置いて死ねない」というお話しを聞いたことが印象に残っています。そんな世の中は間違っているのではないかと考えたことから、社会的に弱い立場にある方を支援できるような仕事に携わりたいと考え、市役所に就職しました。以来、24年間にわたって生活保護や社会福祉に関わる業務に携わってきました。

市役所ではスーパーバイザー(査察指導員)などとして、ソーシャルワーカーをサポートするマネジメント業務なども経験しました。そこで感じたのは、支援者を支援する仕組みを作らないといけないということです。福祉の世界では支援者の精神的な負荷が大きく、消耗したり、燃え尽き症候群に陥っていったりして、大切な人材が離職してしまうことも少なくありませんでした。心理学の専門知識を身につけて、支援者支援について考えたいと思ったのが大学院進学を考えたきっかけです。立命館大学大学院人間科学研究科を選んだのは、ナラティヴアプローチなどで、支援者育成の第一線で活躍する森岡 正芳先生がいらっしゃったからです。


どんなことを研究しているのですか?

指導教員である森岡先生のもと、ナラティブ・メディスンの「パラレルチャート」というドクター教育プログラムを、我が国の福祉現場の対人援助職に応用する方法について研究しています。ナラティブ・メディスンというのは、アメリカのコロンビア大学などで研究・実践されている臨床人間科学の立場で、患者の話すナラティヴ(物語)を重視し、傾聴と共感する能力等を通じて実践される医療のことを言います。ナラティブ・メディスンで行われる教育プログラムは、トレーニングでありながら副次的にメンタルヘルスの効果も認められることから、私はケースワーカーなどの「感情労働」に携わっている人に是非応用したいと考えています。将来的には支援者支援のメソッドを社会福祉の現場にフィードバックすることを目標にしています。


これから入学する人にメッセージをお願いします。

私は退職して現在は研究に専念していますが、人間科学研究科は社会人の大学院生も多く、仕事をしながらでも学べる環境が整っています。社会人の方で、自分の関わる現場を少しでも良くしたいと考えている方には、ぜひ大学院進学に挑戦して、産学連携を活性化させてほしいと考えています。


(Profile)

武庫川女子大学文学部を卒業後、関西の福祉事務所等で24年間勤務。主に生活保護業務に携わる。障害者福祉の施策立案、社会福祉協議会に出向して地域福祉に関わった経験もある。

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