教員紹介

HATTORI Masasi

服部 雅史

服部 雅史
所属領域
心理学領域(博士前期・後期担当)
職位
教授
専門
認知心理学、思考心理学
主な担当科目
認知心理学特論、演習、人間科学プロジェクト演習
おすすめの書籍
喪失と獲得:進化心理学から見た心と体N. ハンフリー 紀伊國屋書店2002年

現在の研究テーマ(または専門分野)について教えてください。

人間の思考(推論・判断・意思決定・問題解決)について研究しています。日常生活の中で、自分が完璧に合理的であると信じて疑わない人はおそらくいないと思います。私たちの思考には一定の癖(バイアス)があり、また環境や文脈、感情、他者の存在など、さまざまな要因によって影響を受けます。人はなぜ合理的に考えることができないのか、なぜよいアイデアが思い浮かばないのか、なぜよい選択ができないのかといったことを研究テーマとしています。

こうした研究を志したきっかけは、高校生のときに人間の創造性とは何かと疑問に思ったことです。人の知を知によって解明することの可能性と限界は未だに見極められませんが、考えることの科学にはずっと魅せられています。研究アプローチとしては必ずしも心理学にこだわるつもりもないのですが、今のところやればやるほど心理学の幅広さに驚き、面白さは深まるばかりなので当分はこのまま進むと思われます。

研究の社会的意義について、教えてください。

このテーマの研究は、究極的には人々をより幸せにするとそう信じています。思考心理学、特に意思決定の分野で主観的なうれしさを表す概念に「効用」というものがあります。「効用を最大化する選択」それが意思決定の「あるべき姿」でしょう。しかし、ものごとは単純ではありません。個人個人にとっての効用、すなわち人間が求めるもの(幸福感)は非常に複雑なのです。それを解明して適切に追求するためには、科学的アプローチが不可欠であろうと思います。

たとえば「占い」は非科学的ですが、楽しめればそれでいいんだという人もいます。もちろん精神の安寧は大切であり、それも主観的効用の一側面です。しかし同じ心のしくみが差別やいじめ、憎しみを生み出しているとしたら無為に楽しむだけでよいでしょうか。怠惰な現状肯定に流されるのではなく、立ち止まって考えることから始まる社会貢献もあるのです。科学はそうした行動を助ける強力な手段になりえます。

この研究科でめざしたいこと、院生へメッセージをお願いします。

大学院では大学のとき以上に自律と協調が大切になると思います。大学院では自分自身の設定した目標に向かって、自分を信じて突き進んでください。大学院に棲息する人間は、言ってみれば「変人」ばかりです。皆さんも自分なりの「変人性」を大切にしてください。遠慮は要りません。それが自分の独自性、そして自律性を育む土壌になると思います。

そのときに、逆説的に聞こえるかもしれませんが、他者とのインタラクションが大切になります。他者の意見を聞いて理解し、それに反駁したり、それに触発されたり、それをいっしょに発展させたりといったことが研究には極めて重要です。その点、人間科学研究科では人間に対する多様なアプローチが展開されており、観点のまったく異なる人にも接触しやすい環境が整っているので、予想外の化学反応が起こることが期待できます。この類まれな恵まれた研究環境で、ぜひいっしょに研究を進めていきましょう。

著書等

  • 基礎から学ぶ認知心理学 (有斐閣、2015年)

  • 思考と推論: 理性・判断・意思決定の心理学 (北大路書房、2015年)

  • 最新認知心理学への招待 (サイエンス社、2016年)

経歴・業績について