教員紹介

Akiyoshi KITAOKA

北岡 明佳

北岡 明佳
所属領域
心理学領域(博士前期・後期担当)
職位
教授
専門
知覚心理学
主な担当科目
心理学演習、人間科学プロジェクト演習
おすすめの書籍
錯視入門北岡 明佳 (著) 朝倉書店

現在の研究テーマ(または専門分野)について教えてください。

錯視を研究しています。歴史的には、近代的な錯視研究は心理学の成立よりも数十年早く興り、21世紀初頭の現在再び盛んになっております。私の理解しているところでは、「錯視を研究することで視覚のメカニズムがわかる」という信念というかタテマエが脈々とありまして、これを信奉(?)する研究者とそうでない研究者に分かれていたと思いますが、私は後者でした。しかし、研究を進めるにつれ、だんだん私は前者に移行しつつあります。たとえば、色の恒常性のデモを作ると、そのまま色の錯視のデモとなってしまいます。静止画が動いて見える錯視も、運動検出器としてのニューロンの受容野の構造を推定する重要な手掛かりとなっています。錯視は人間特有である、ということにも気づきました。錯視と同様の知覚的な歪みは人間以外の動物にもあることが、多くの研究で証明されています。しかし、錯視をおもしろがるのは人間だけなのです。この人間行動学的錯視研究も将来の有力なテーマとなるかもしれません。

研究の社会的意義について、教えてください。

錯視を研究することで、視覚のメカニズムの理解に貢献できます。これだけでも十分で、それが実現するなら、学問の進歩への貢献として、申し分のない社会的意義があります。しかし、欲張るなら、以下のようなご利益も考えられます。(1)化粧研究・毛髪科学への貢献:当たり障りのある表現ですが、化粧は錯視の一種です。ハゲ隠しの応用知覚心理学も世の中の役に立つでしょう。心理学の研究者には絵を描ける人が少ないこともあり、この応用分野に強いとは言えないのですが、このような有望な分野が隣接しているという認識は、そろそろ共有されてもよいと思います。(2)錯視・だまし絵のエンターテインメントへの貢献:(株)エス・デー(トリックアート美術館)をはじめ、だまし絵をエンターテインメントする企業・団体あるいは個人は存在しますが、その活動に心理学はほとんど貢献していません。この分野では、意外と産学間の距離が大きいです。この距離を詰めることができるならば、社会的なインパクトは大きいものになるでしょう。(3)暗号としての錯視の技術:現時点の本学においては活動に制約がありますが、消失錯視や隠し絵(カムフラージュ)の諸技術には、軍事的応用に少なくない可能性があると思います。

この研究科でめざしたいこと、院生へメッセージをお願いします。

錯視研究一つですら、これまで述べてきたように広い可能性があります。学問には、どこに未知の可能性が潜んでいるかわかりません。それらを明らかにし、社会に役立てたいなどと大言壮語する人(あなたのことです。身のほどを知れよ)は、まずは基礎学力を磨く必要があります。人生は皆さんが思うほど長くないです。世の中にあるすべての知識を身につけるだけの時間はありません。何を勉強するべきかは常に自分で選択し続けなければなりません。未知の可能性との遭遇の時になってから必要な知識を身につけようとしても遅いです。日頃からの不断の情報の摂取が必要です。大学院の授業はお仕着せにすぎません。そんなもので満足していてはいけません。口に出すかどうかは別にして、先生の言っていることはすべて疑いましょう。自分自身の信念も疑いましょう。真理は美しいゲシュタルトとして知覚されますから、美しくない仮説や通説を信用してはいけません。このような世迷言を言っている筆者の頭も疑いましょう。

著書等

  • 錯視の科学 (日刊工業新聞社、2017年)

  • 錯視入門 (朝倉書店、2010年)

  • 世界一美しい錯視アート (カンゼン、2014)

論文

経歴・業績について