教員紹介

MIYAGUCHI Koji

宮口 幸治

宮口 幸治
所属領域
臨床心理学領域(博士前期・後期担当)
職位
教授
専門
非行臨床、発達障害、児童思春期精神医学、神経学的認知トレーニング、性加害防止プログラム、学校コンサルテーション
主な担当科目
精神医学特論、演習
おすすめの書籍
それでも人生にイエスと言うV.E. フランクル 春秋社1993年 獄窓記山本譲司 新潮社2008年

現在の研究テーマ(または専門分野)について教えてください。

精神科医として特に児童青年期精神医学を専門としてきました。その中で、非行臨床、性加害の問題、学校コンサルテーション、発達障害・知的障害児への認知的支援などを研究テーマとしています。

もともと精神科病院の臨床現場で幼児から高齢者までの患者層とほぼ全ての疾患に携わってきました。しかし発達障害をもった非行少年に出会ってから医療でできることの限界を感じ、医療分野から司法分野(矯正教育分野)に移りました。その後は医療少年院や女子少年院で法務技官として非行少年たちと関わってきました。そこで出会った少年たちから学んだことが私の原点です。彼らの様々な境遇や背景を知り、再非行をさせないために必要な社会面・認知面・身体面からの包括的支援法の開発を進めてきました。それらは学校教育等にも十分に応用できることから、学科指導以外の学校教育の充実にも役立てればと思っています。

研究の社会的意義について、教えてください。

本来保護しなければならない障害をもった子どもたちが、その支援がうまくいかず非行や犯罪をして加害者となり、被害者を作るような実態があることを知りました。学校教育において、家庭において、地域社会において何が問題だったのか、どうすれば非行を防げたのか、非行化した少年たちにどのような教育が効果的なのか、そして今、同じようなリスクをもっている子どもたちにこれからどのような教育ができるのか、これらを学校や福祉施設などの教育現場にフィードバックすることが研究の一つの使命だと思っています。現在、刑務所にいる受刑者を1人養うのに約300万円かかるという試算があります(施設運営費や人件費を含む)。しかも彼らは被害者を作っているケースが多いです。もしその受刑者の中の1人でも健全な納税者に変えたならすごい経済効果があります。もちろんお金だけの問題ではありませんが、それができるのは教育の力だけなのです。

この研究科でめざしたいこと、院生へメッセージをお願いします。

現在、不適応行動のある子どもに対して、専門家はどうしてもアセスメント重視となりがちです。本人の課題や家庭の問題などはよく分かるが、では具体的にどう支援するか、となると概念的なことしか出てこないことが多いです。あるとしても問題の外在化をはかる言葉かけや本人の負担を減らすような環境調整などの対症療法的アプローチが多く、根本的に子どもが変わるための力をつけさせるといった視点が少ないのが現状です。しかし、本当に子ども自身に力をつけてあげることができないのでしょうか? 支援者がその可能性を確かめず一方的に無理だと決めつけているのならそれは支援者が作り出す新たな二次障害にもなりかねません。人の心理や精神はまだまだ分からないことばかりです。既存の常識や療法だけにとらわれず、「本当にこれでいいのだろうか?」「他に方法がないのだろうか?」「なければ自分で新たに作らなければいけないのでは?」といった視点を大切にしていきたいと思います。

著書等

  • 子どものやる気をなくす30の過ち (小学館集英社プロダクション、2017年)

  • 1日5分! 教室で使えるコグトレ (東洋館出版社、2016年)

  • 教室の困っている発達障害をもつ子どもの理解と認知的アプローチ (明石書店、2017年)

論文

経歴・業績について