教員紹介

ONOE Akeyo

尾上 明代

尾上 明代
所属領域
実践人間科学領域(博士前期担当)
職位
教授
専門
ドラマセラピー
主な担当科目
グループアプローチ、対人援助技術研究、演習
おすすめの書籍
ドラマセラピーのプロセス・技法・上演~演じることから現実へR.エムナー 北大路書房2007年

現在の研究テーマ(または専門分野)について教えてください。

ドラマセラピーは、ドラマや演劇のプロセスを用いる表現芸術療法です。私は1998年にアメリカで出会いました。重大事件のサバイバーの方が、目の前で感情を豊かに表現し回復してゆく姿を見て、日本に導入しようと一瞬で心が決まったのです。その後、日本で最初のドラマセラピスト、そしてトレーナーとなり、実践・教育・研究を続けています。ドラマセラピーは、自己の視点、行動や社会関係の変化を促すアプローチなので、誰にも役立ちますが、私は現在、特に依存症からの回復や認知症高齢者のQOLを高める方法としてドラマがどのように働くかということを明らかにしようと取り組んでいます。

もちろん、狭い「セラピー」手法の使用のみに注目するのではなく、豊かな「社会の力」を働かせることが大切なのですが、一方で、「今ここ」でドラマを創り演じることで初めて発見できることがあるのも事実です。今後はより多くの援助者が実施できるよう、人材の育成にも力を注ぎたいと思っています。

研究の社会的意義について、教えてください。

ドラマセラピーには、「個人やグループの心理療法」という枠を超えて、教育や社会の多くの場面で応用できる方法があります。特に「自己開示劇」「ソシオドラマ」「被抑圧者の演劇」は、社会臨床的なアプローチとして社会変化を働きかけるものですが、こうした手法の実践や研究発表は、上記の対象者群等に対する社会の思い込みや既存イメージを脱構築・再構築させるという点でも意義があると考えます。

また、参加者の多側面の表現を通して相互交流を発展させていくので、他者を全人的に理解することが可能になります。そのため、回復が難しいとされる対象者群とのセッションには、日常的に関わる援助者たち(医師や看護師、施設の職員など)にも参加してもらい、援助・被援助という関係を超えた「ドラマ」という同じ土俵での関わりを勧めています。こうした実践によって、被援助者の変容・回復だけでなく、援助者自身が被援助者に関する新しい視点と理解を得て、援助の選択肢を増やすことにも貢献しています。

この研究科でめざしたいこと、院生へメッセージをお願いします。

授業では、皆さんの人生にも大いに役立ててもらうことを目指しています。自己覚知を促進させ、日常生活での「役のレパートリー」も広げます。自らの身体を通してさまざまな人物を演じることで、他者の人生や考え方などについて深く理解でき、より柔軟で創造的に関わることが可能になります。また、常にプレイフルに楽しく実習できる工夫もしています。ウィニコットも言うように、「遊ぶことにおいて、おそらく遊ぶことにおいてのみ、子どもも大人も自由に創造的になれる」からです。

論文作成においては、対話・討論や自己省察を循環させながら、研究・記述を進めていきます。そのプロセスの中で、研究者自身が変容を遂げ、修了後の次のステップへ飛躍してゆく姿をこれまでたくさん拝見してきました。この研究科で、皆さんが「新しい自分」と出会うことを期待します!

経歴・業績について