教員紹介

TAKAHASHI Kiyoshi

髙橋 潔

髙橋 潔
所属領域
実践人間科学領域(博士前期・後期担当)
職位
教授
専門
産業・組織心理学、組織行動論
主な担当科目
産業・組織心理学特論、演習、人間科学プロジェクト演習
おすすめの書籍
ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?ダニエル・カーネマン 早川書房2012年

現在の研究テーマ(または専門分野)について教えてください。

学部から一貫して、「産業・組織心理学」を研究テーマの中心にすえてきました。そして、国内の大学院を経て、米国のミネソタ大学に留学したことがきっかけとなり、学問の途を選びました。B・F・スキナーも教鞭を取っていたミネソタ大学は、応用心理学、とりわけ産業への応用では有名であり、ミシガン大学やカリフォルニア大学などと並んで、産業・組織心理学が初期に根づいた大学のひとつです。ミネソタ大学で研究への方向性と価値観をしっかりと身につけたために、人材の採用、人材の評価、人事の公平性など、企業組織での人材活用や人事面での実践活動を視野に入れた応用研究を行っています。具体的には、面接に代わる採用方法や、人事考課に代わる人材評価方法などについて検討しています。また、企業での管理職研修を引き受ける機会が多いため、リーダーシップの育成も実践的にアプローチしています。変り種として、プロサッカー選手のキャリアトランジション(キャリアの移行)について、調査したこともあります。

研究の社会的意義について、教えてください。

「産業・組織心理学」は、心理学の発見や知見を産業場面で活用する応用心理学です。企業の人事、マーケティング、オペレーション、安全などの面で直接に役立つ知見を提供するのが、この応用心理学です。わが国の場合、心理学の実践を求める場は、臨床と教育に偏りがちです。しかし、わが国以外であれば、心理学の応用の場は、職場や産業場面であることを意味しています。

現代にあって、社会に貢献する個人の強みや長所を研究する「ポジティブ心理学」の台頭には目を見張るものがあります。そのムーブメントが起こるはるか以前から、産業心理学者のビジネス界での活躍にはめざましいものがありました。その影響が大きすぎて、現代の経営学の半分くらいは、心理学からの貢献で満たされていると言っても過言ではありません。産業・組織心理学を学ぶということは、すなわち、産業と労働を通して社会に貢献する人々の能力や行動について、深い洞察を得ることなのです。

この研究科でめざしたいこと、院生へメッセージをお願いします。

心理学を志望していながら、個人の弱さやネガティブな(負の)側面にばかり、光があたってしまうことに飽き足りない人であれば、ビジネスや産業への応用をめざす心理学についても知識を得ることが大切です。少子高齢化を迎えたわが国では、老後の不安にばかり目がいきがちです。また、正社員雇用が先細りし、所得格差も拡大するなかで、経済の先行きも不安定です。一方、グローバル化やウェブ化が進展しつくした現代社会では、あらゆる産業はサービス化する運命となっています。そのなかで、新たなビジネスを創出し発展させる芽があるとすれば、それは心理的アプローチでしょう。経営学研究や経済学研究においても、学問領域の垣根を越えて、心理的アプローチが注目されています。心理的意思決定を理論化した「行動経済学」では、それがはっきりと意識されています。

経歴・業績について